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2017年01月14日
第688回「それでも、紅白は続く」
いまさらですが、紅白を見ての感想です。ほかのチャンネルも見ながらではありましたが、いままでで一番ではないかというくらい見ることができました。
「2016年」がたくさんありました。旬なアーティストはもちろん、PPAPやシンゴジラから平野ノラまで、「2016年」を彩った顔がたくさん集まっていました。とても豪華で、盛りだくさん。あそこまで集めるのは相当尽力されただろうなと、感心してしまいます。もはやバラエティー番組になってしまったかと思うほど、内容の濃かった今回の紅白。これだけたくさん詰まっているのに、欠如しているものがあった気がしました。
やはり一番大切なのは、歌を届けることです。「そのうえで、笑いが載せられたり、盛り付けられたりするもの。歌を届けたい」「音楽を届けたい」しかし、先日の紅白には、それが希薄に感じてしまいました。たとえあったとしても、ほかの要素がありすぎて、相対的に薄まってしまった気がします。紅白歌合戦と謳っている以上、本線からずれすぎてしまうと、一番伝えるべきものが隠れてしまいます。
もちろん、歌に興味のない人のも見てもらう、テレビにとってそれは確かに必要なことですが、いまやテレビは見たくて見にくる人がほとんど。映画館と同じなのです。だから、リモコンこそ脅威ですが、見に来てくれているお客さんに対してどう向き合うかが重要です。歌を届けたいあまり、歌を届けることがおろそかになっては本末転倒。そのさじ加減は難しいかもしれません。
タモリさんとマツコさんのくだりも、とても面白いのですが、あれも、本線の歌がしっかりしているからこそ際立つもの。すべてにおいてバラエティー的要素が強いと、あの二人のやりとりのスパイスが効いてきません。音楽をしっかりやっているから、あの「笑い」が効いてくる。緊張と緩和。そういう意味では、「笑い」というものも甘く見られている気がしました。
ただ、あのコーナーに関して、「無駄遣い」と揶揄する人がいましたが、それはとても悲しいことです。なぜなら、「無駄遣い」だからこそいいのですから。「無駄遣い」ではなく、「贅沢」だというのならまだわかるのですが。「あのふたりに司会やってもらえばいいのに」という意見は、テレビをあまりわかっていない素人的発想といえるでしょう。いまやそういう「テレビの見方」を知らない人たちが増えて、ミスリードしてしまうのも現実として受け止めるべきなのですが。
笑いにしても、こういう風にすれば笑うでしょうという狙いや、仕掛けが見えてしまうと、感動できるものもできなくなってしまいます。見ている方が冷めてしまう。笑いとは違いますが、昨年、長渕剛さんが、生放送の歌番組で、イントロ部分にアドリブなのかわからない、いわゆる長渕節を炸裂させたことがありました。非常にもったいなかったのは、あそこに字幕がでていたこと。収録ならまだしも、生放送で字幕をだしてしまっては、「長渕節」の魔法の効きが弱くなってしまいます。しっかりと魔法をかけたいのであれば、あそこに字幕を出さない方が適切で、字幕を出した段階で、打ち合わせ的なものが見えてしまいます。なにをいっているのか伝えたいというやさしさかもしれませんが、なにを言っているかよりも、「打ち合わせにないことを言い出したのでは!」、という緊迫感が優先させるのがテレビではないでしょうか。大事なのは、「字幕をだすべきなのかどうか」という議論が行われたか、なのです。
DJ的な見地からすると、こんなに盛りだくさんのコンテンツも組み立て方次第で大きく印象は異なります。緩急。流れ。そういった抑揚をつけないと、お茶の間というダンスフロアと温度差が生じてしまう。どこで爆発させたいのか。毎回爆発していたら爆発になれてしまいます。
本当にその歌を愛していたら、その歌手を尊重していたら、過剰な演出に抵抗を感じてしまうもの。歌を届けるためとはいえ、踊りを付け加える演出などは、まるで、応援演説に依存している候補者のようにも見えてしまいます。
では、なにを尊重していたのか。それは、数字かもしれません。「紅白」というコンテンツかもしれません。はたまた「NHK」かもしれません。
テレビは音楽をどのように伝えるべきか。Eテレでのクラシックコンサートを拝見しましたが、そこはまさしくクラシック一色。クラシック愛に満ちていました。もう、それでいいのです。笑いたいのであれば、笑いを提供しているチャンネルにする。歌を楽しみにしている人たちには、やはり、良質な歌、音楽を提供するべきでしょう。お寿司やさんで、パスタを出す必要はないのです。視聴者を信用して、歌を届けて欲しいと思いました。
以前、紅白は富士山であって欲しいと言いました。やはり、今回はイルミネーションのされた富士山だった気がします。そんな年もあってもいいのでしょう。次回はぜひ、美しい富士山を眺めたいと思います。
2017年01月14日 12:38
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