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2016年01月10日
第641回「シリーズWhat’s DJ? 第7話 パフォーマンス」
「選ぶ、並べる、つなぐ」
これがDJを構成する「3本の柱」。音にエフェクト(シュワシュワさせたりすること)をかけたり、ミキサーのツマミをいじったり、細かなことをあげれば、ほかにもたくさんあるのですが、それらは枝葉であって、必ずしも必要な要素ではありません。また、何度も言いますが、順番はあらかじめ決める場合もあれば、行き当たりばったりの場合もあります。
この3つの要素が揃ったら、あとはそれらをどのように届けるか。いわゆる、パフォーマンスです。
最近では、みんなで盛り上がりましょう的なノリのイベントも多く、サイドMCと呼ばれる相方がマイクでラップしたり、煽ったりと、二人でDJするユニットも増えています。同じ二人組でも、サイドMCという形でなく、二人で淡々とDJをするユニットもいます。ブースに二人いると心強さもあるでしょうし、シンメトリー効果で見栄えもよくなるケースが多いです。さらに、ダフトパンクのように、コスチュームに凝る人たちも珍しくありません。ケーキをフロアに投げて盛り上げるDJもいます。もちろん、煽るだけがパフォーマンスではありません。なにもしゃべらず、ストイックにつなぎ続けるのもひとつのスタイル。DJそれぞれのパフォーマンスの形があるのですが、着目すべき点があります。それは、注目される存在になったということです。
それまでは、「どこにいるのかわからないけどいい感じに踊らせてくれる人」それがDJでした。あくまでお客さんが主役で、あとはミラーボールがまわっている。しかし、DJ人口が増え、DJの存在価値があがり、いまでは大きなステージで、バンドのボーカルのように目立つ存在になりました。たとえ人の褌であろうと、まるで自分の曲かのように脚光をあびる立ち位置になったのです。まさしく、先輩たちのおかげでもありますが、その光景は、DJがアーティストとして受け入れられていることを実感します。
大きなステージとはいかないまでも、クラブでDJデビューするまでの道のりはそんなに長くはありません。地方のクラブなどにいくと、普通のお兄ちゃんがまるで有名アーティストかのように紹介されるフライヤーなどをよく見かけますが、良くも悪くも、だれでもアーティスト面できる時代。なかでも、DJというジャンルは、コスパもよく、効率よくすぐにアーティスト面できるのです。
とはいえ、いざ、ブースにたって曲をかけようとすると、やはり最初は緊張するもの。なにをかけるのかを多くの人に注目される機会なんて、そうそうありません。カラオケで選曲するのとはわけがちがいます。また、ブースでの立ち居振る舞いにキャリアが香るものですが、そこらへんはお客さんも敏感です。だから、どんなに見慣れない機材が並んでいても、白鳥のようにすまして泳がなければなりません。
メリハリのない平坦な60分でもよし。2回大きな山場のある60分でもよし。とにかくあげっぱなしもよし。場所にあったプレイをするのが基本ですが、そんなことを気にせずやるのもいいでしょう。最終的には、自分の好きな曲、聴いてほしい曲をかけるというところに帰ってきます。好きな女の子に自作のテープを作ったように。
また、DJを続けていると出会うものがあります。それは、「ゆるぎない流れ」。もう引き離すことはできないというくらい美しいつなぎ。お客さんがどう思っていようが、自分の中の美意識が満足する流れ。そういったものがいくつかできると、DJプレイも安定してくるものです。言ってしまえば、自己満足。つなぐだけでも気持ちいいのに、そこにお客さんの盛り上がりが加わったら、それは病みつきになってしまうのも仕方ないでしょう。苦味もあるけれど、その味を覚えて、DJは続けられるものだと思います。続けるうちに、スタイルが確立されていくのでしょう。そのときはじめて、アーティスト面の「面」がとれるのかもしれません。
ダンスミュージックが世界を席巻している昨今、日本は鎖国状態とは言いませんが、一部のポジティブなユーザー以外にあまり浸透していません。そのため、DJというと、まだネガティヴなイメージがつきまといます。小学生のなりたい職業の上位に来るような時代はさすがに拒絶反応が起きますが、もう少しDJに対する誤解が減ればと思い、実験的に解説してみました。
2016年01月10日 18:52
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