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2016年11月13日

第681回「それは、恋のように」

 お気づきではないと思いますが、こう見えて僕は、日々、闘っています。目覚めから、寝る直前まで、場合によっては、寝ている間もかもしれません。対戦相手、それは、物欲。物欲という大きな怪物相手に、日々、格闘しているのです。

 最近はスマホでもパソコンでも、どういうシステムなのか、個人の趣味嗜好に合った広告がでてくるのは皆さんも経験済みだと思います。これらの広告が最近さらに力を増してきて、そこに引き込まれないようにするのが大変なのです。ターゲティング広告、リスティング広告、リターゲティング広告など、いくつか種類があるようですが、一度クリックしたからなのか、身に覚えのないものまで、まるでストーカーのようにつきまとい、物欲を刺激してきます。この、なかなか抜け出せない状態は、もはや沼。この底なし沼が現れると、ずるずると引き込まれて、購入するまで離しません。広告という沼に潜む、物欲という怪物と、闘わないといけないのです。

 とくに最近はまってしまったのが、「ジープ」の沼。そう、あの「Jeep」。これが、一度なにかをクリックしてしまったのか、あるとき現れたのです。それまで、僕の人生にはまったく関係のないもので、一生乗ることはないだろう、そういう意識すら生まれないほどでした。しかし、数回目にするうちに、踏み込んでしまったのです。軽い気持ちで一度クリックしてしまったが最後、それこそまさに、沼に足元を取られた瞬間でした。

 僕とジープとは不釣り合いに感じるでしょう。ジープといってもいろいろあって、ラングラーというタイプ。もともとは軍用車として作られたものですが、時代を経て洗練され、都会にマッチしたフォルムに仕上がっているのです。だから、オフロードをガンガン走りたいというのではなく、むしろ日常の移動車として。あの車でコンビニの前にとまりたい。あの中で、コーヒーを飲みたい。僕にあっているかどうかはわかりませんが、とにかく、もう数週間ほど沼に体が埋まり、肩まで浸かっています。

 ガラス越しにおもちゃを眺めた子供の頃と同じ感覚。ガラスがスマホの液晶にかわっただけ。あの頃は、「買っちゃだめよ!」とブレーキがかかりましたが、そんな年齢をとうに過ぎ、だからといって、衝動的に購入するべきものではないのはわかっています。燃費も悪いし、場所もとるし、故障もしやすい。なんなら雨漏りもするらしい。しかし、そんな抜け出すために悪条件攻撃をしかけてみても、通じないのです。車好きのだれかも言っていました。「最悪なんだけど、大好きなんだ」と。一度惚れてしまったら、買うしかない、たとえ後悔が押し寄せても。もはや、これは恋なのです。

 車選びというのは、一度惚れてしまうと、盲目的になってしまいます。100人中99人に不評でも、自分の気持ちを尊重してしまう。

 もうお気づきでしょう。僕の体は沼にはまっているどころか、怪物に抱きかかえられています。もはや、ディーラーの思うつぼ。全国に配置した沼にはどんどん人がはまっていきます。あとは溺れるのを待つだけ。車との出会いは、恋のようなもの。溺れてゆくものなのです。

 僕がこの沼から抜け出す日が訪れるのか、この沼に溺れてしまうのか。この恋の行方は、だれも知りません。

2016年11月13日 13:48

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