« 第677回「パブリックまでの距離2」 | TOP | 第679回「やっぱり冬を、嫌いになれない」 »
2016年10月23日
第678回「日常を支えるもの ベルギー・ワッフル」
僕がそれと出会ったのは、まさにベルギーを訪れたときだから、もう10年以上前のこと。もちろんその前からワッフルのことは認識していたし、その存在は日本でも何度も確認していたけれど、コンビニの一角で見かける程度で、どちらかというとビスケットの延長のような位置付け。よくてカステラの仲間。だから、ワッフルらしきものがお茶菓子としてできたところで感情が動くことはなく、いざベルギーを訪れることになっても、ワッフル食べるぞ!みたいな、旅の目的にさえなっていませんでした。
「なんだ、この甘い香り…」
冬のグランプラスに漂う甘い香り。細い路地を抜けるとそこには、まるでクレープ屋さんのような店構えのワッフル屋さんがありました。
「せっかくだし、本場のワッフルでもたべるか…」
そうして手渡されたワッフルが、かじかんだ指先を温めてくれると、湯気が顔を覆います。トーストほどの大きさで、製氷機のような凹凸には白いパウダーがかけられています。
「な、なんだこれは!!」
それが、僕とワッフルの出会いでした。衝撃的なおいしさ。いままで誤解していました。いや、いままで目にしていたものは、もはやワッフルではなかったようです。それからというもの、一日のはじまりに。一日の締めに。ワッフル屋さんを見かけては立ち寄って、あたたかい、できたてのふわふわをほおばるベルギーの旅。なんにせよ、出来立てというのはおいしさを倍増させるものですが、ことにワッフルに関しては、いままでふかすまえの肉まんを食べさせられていた人がはじめてふかした肉まんを食べたときくらい、その出来立ての破壊力は凄まじいものがありました。
「あれ?あのお店は…」
どこかで見たロゴ。小便小僧のマーク。まさに、ベルギーで見たお店が東京にありました。あのときのふわふわが味わえる。できたての、ほかほかのわっふる。差し入れで持って行ったり、ちょっと立ち寄って2、3個、はいと手渡されて、仕事に向かったり。
コーヒーを片手に、できたてのワッフルの香りが充満した車に戻ったときの幸福感。コーヒーの香りと音楽がブレンドされてゆく時間。極上のひととき。
「これ、よかったらどうぞ」
通い詰めた甲斐がありました。ついに、社員割のカードを授与されました。ベルギー・ワッフル好きの称号を与えられたようでした。
都内に佇む小さなワッフルのお店。この食感と、香りのおかげで、コーヒーもより一層おいしくなる午後。冬になれば、香りも湯気となって見えてくるでしょう。日常は、指でなぞるワッフルの凹凸。日常レコード。
2016年10月23日 13:40
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.happynote.jp/blog_sys/mt-tb.cgi/136