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2014年12月29日

第585回「ハクビシンの憂鬱 第二話 屋根裏のチャレンジ」

「よいしょ、よいしょ…」

「なにしてるの、そんなに氷用意して?!」

「え?知らないの?チャリティーだよ、チャリティー!」

「チャリティー?」

「そう、アイス・バケツ・チャレンジ!」

ハクビーたちは、屋根裏にいました。

「アイス・バケツ・チャレンジ?!」

「そう、いま流行ってるんだよ」

「流行ってるって、それをどうするわけ?」

お調子者のペッピーは、どういう趣旨のものかハクビーたちに説明しました。

「そんなことだれもやってなかったよね?」

「ほら、ネットの普及もあってさ、今年急激に広まったわけ。アメリカのセレブでは常識だよ?」

ペッピーは得意気に話しました。

「ペッピーは指名されたの?」

「え?あぁ、もちろん!!じゃぁ、いまからチャレンジするから見ててよ」

ペッピーは、バケツを両手で持ちあげました。

「え?ここでかぶるの?」

「いけない?」

「だって、寝床がびしょびしょになるし、下に水がもれちゃう?」

「そうだよ、やるなら外でやりなよ!」

「大丈夫、そう思って氷しか入れてないし、下にシート敷いてあるから!」

周囲の制止をよそに、ペッピーは頭から氷をかぶりました。

「ひゃ〜!冷たい!!」

氷が床に散乱しています。

「でも、いいことするって気持ちいなぁ!」

ハクビーたちは、ペッピーのチャレンジを冷めた目で見ています。

「チャリティーって、そんな遊びみたいなやり方でいいの?普通に寄付すればよくない?」

「それじゃぁ広まらないんだって!たとえば、電柱地中化反対って普通に訴えて、どれだけ広がる?そこに遊び心がなかったらいつまでたっても負け犬の遠吠えさ!」

ペッピーは続けました。

「っていうかさ、やらない奴にかぎってそういう屁理屈ばっかりこねてなにもしないんだよねぇ。やらない善より、やる偽善!流行だろうがお遊びだろうが、なにもしないよりは、よっぽどいい!」

ハクビーたちはどうもしっくりきませんでした。

「それにしても、ほんと日本人って、欧米のカルチャーに弱いよね」

ジャコーネがいいました。

「欧米のカルチャー?」

「だってさ、これがもしほかの国の風習だったら、どう?日本でこんなに広まっていたかな」

ジャコーネは床に散乱した氷を拾い、バケツに戻しました。

「ハロウィンとかにしてもそうだけど、日本人は、欧米の風習ばかり取り入れる。英語が話せないコンプレックスからなのかわからないけど、欧米に憧れすぎじゃないかな」

「え?日本人って、英語はなせないの?」

ハクビーは目を丸くしました。

「うん、話せる人なんてほとんどいないよ」

「あんなに勉強してるのに?」

すると、ペッピーは、次にチャレンジする人として、ハクビーを指名しました。

「え?僕?いやだよ!」

「かぶりたくなかったら寄付でもいいよ?」

「お金なんて持ってない!」

「お金がないなら、おいしい木の実になるかな」

ペッピーの目つきが変わりました。

「嘘だ!そんなのおかしい!チャリティーでもなんでもない!」

そう言って、ハクビーはペッピーに向かって氷を投げつけました。

「イタ!なにすんだよ!!」

「こら、やめさなさい!下に響くでしょ!!」

そうして、氷の投げ合いがはじまると、いつもの兄弟げんかがはじまってしまいました。

 

2014年12月29日 18:28

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