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2012年10月10日

第504回「colors of iceland〜アイスランド一人旅2012〜」




第三話 マシュマロを集めて 





「それじゃぁ、気を付けて!」





おそらくそんなことを言ったであろうレンタカーのスタッフからキーを受け取った僕は、まるで普段乗っているかのような無駄のない動きで荷物を載せると、運転席に体を預けました。何度経験しても、この地で車が動きだす瞬間は気持ちが高揚するもの。はやく大自然へと飛び出したい、でもその前に行かなければならないところがあります。





「さぁ、出番だ…」





ハーフサイズの太巻きが最初に向けられたのは、そう、この街のシンボル、ハトルグリムスキルキャ教会。今回も旅の安全を祈願してから出発です。





「さて、どこに行こう!」





予定にとらわれたくないので、例年通り、初日と最終日以外は宿をおさえていません。どこに向かうかは気分次第。心にハンドルを委ねます。右回りでいこうか、左回りで行こうか、リングロードまでのシンキングタイム。ラジオが流れています。





「あの場所にしよう」





いろいろ行きたい場所がある中で、特に欠かせない場所が頭に浮かびました。それはこれまで二度訪れた場所。アイスランドの西端。昨年はオーロラにも遭遇しました。でも撮影したいのはオーロラではありません。





「夢を見ているようだ…」





海に沈む夕日が、牧草地帯の羊たちをオレンジ色に染めています。幻想的なあの色を忘れることはできません。夕日に染まるマシュマロたち。あの色を切り取ろう。車は、西部イーサフィヨルズルへ向かいました。





「さぁ長旅だ…」





ここから目的地までは500キロ。きっと夕方くらいには着くでしょう。建物がなくなり、周囲が自然に覆われると、「アイスランド2012」と書かれたCDが回転しはじめました。今回は、これまでの総集編。ベスト盤のような構成になっています。





「いた!」





牧草地帯のマシュマロたち。それらは雨のように、ポツリポツリと見えたかと思うと、突然、大量のマシュマロたちが現れます。





「ここらへんでいってみるか…」





車を降りてレンズを向けました。ファインダーこそないものの、やはり、レンズを動かすしぐさに臨場感があります。徐々に慣れてくると、標準のレンズでは物足りなく感じ始めました。





「ついに登場か」





禁断の太巻き、望遠レンズを取り出しました。手術前に手袋をはめるようなレンズの付け替え作業。カチっという音が身を引き締めてくれます。そして僕は長い太巻きのようなレンズを牧草地帯に向けました。





「す、すごい…」





さすがは望遠レンズ。標準レンズとは比べ物になりません。画面いっぱいのマシュマロ。遠くの羊たちの表情までわかります。マシュマロたちが吸い込まれていくようです。





「アサノさん、ありがとう!」





やはり買ってよかった。このレンズがあってよかった。





「フレンチフライひとつと…」





ブーザルダールルでポテト休憩。スープとパンと、カメラのなかにはたくさんのマシュマロたち。小さな画面で上映されています。





「もうすぐだ!」





そして、どれくらいたったでしょう。マシュマロを集めながらだったので、結構時間もかかりました。まだ日は沈んではいません。やがて教会が見えてきました。車は海に突っ込むように坂を下りていきます。





「覚えてるわ!あなた、あそこで食べてたわよね、夕日を眺めながら」





昨年泊まった海辺のホテル。通称サンセットママは、オーロラがでたら起こすわといいながら起こしてくれなかったけれど、僕のことはしっかりと覚えていてくれました。しかしその数秒後、彼女の口から衝撃的な事実が伝えられました。





 





 



2012年10月10日 08:20

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