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2012年10月01日
第503回「colors of iceland〜アイスランド一人旅2012〜」
第二話 すでに旅ははじまっていて
首から提げているといってもおそらくみなさんが想像しているような提げ方ではありません。ぶら下がっているのは剥き出しになったカメラではなく、カバン。というのも、望遠レンズは通常のレンズと付け替えて使用するから、この巨大な太巻きを持っていかないといけません。カメラ本体にしても、レンズにしても、初心者の僕にとっては精密機械すぎて、デジカメのように扱うことはできず、わざわざ専属のカバンをつけるという、警戒態勢。結果、カバンがひとつ増えることになりました。オレンジ色のスーツケース、水色のリュック、それに加えてショルダーバッグ。目的がひとつ増えただけで、まるで子供を連れて行くような、肉体的・精神的負担がのしかかりました。
「やっと着いた…」
アイスランドではありません。ようやく機内で一息。すでに北緯66°に合わせた服装のなかはすでにシャワーでも浴びさせたいほど。そんな感じで、6回目のアイスランドへと旅立ちました。
毎年休むことなく6回目。それは恒例行事にしているわけでもなく、簡単に決まったわけではありません。例によって結構ぎりぎりまで葛藤していました。
「夏休みをとるべきだろうか」
最初の葛藤。4月から新しくはじまった番組は平日の帯番組。しかも立場上、簡単に休めるものでもありません。アイスランド云々のまえにまず休みをとるべきだろうか、そして果たしてとれるものだろうか。それが、僕とアイスランドの間に立ちはだかった最初の壁でした。
「続けるために、休むべきだろう」
単に休みたいのではない。続けるためにリフレッシュする。背中を押してくれる共演者たちの声もあり、9月上旬の一週間、休みをいただくことになりました。
「どこにいこうか」
2番目の葛藤。もう散々訪れたし、旅行記も出版しました。もちろんアイスランドは好きだし行きたいけれど、ほかに気になる場所がないわけでもありません。ファミレスでメニューを選ぶように、自分がいま一番行きたい場所を探しはじめました。かつて訪れたポルトガルも捨てがたく、いつかは南米やインドも行ってみたい。きっと次のお正月は行けないだろうから、それだけ慎重に審議が進められます。休みだけいただいて、9月上旬の自分の居場所が決まらない状態が続いていました。
「やっぱり、いきたい…」
あらゆる国をなぎ倒したのはやはりこの国でした。何回訪れていようがかまわない。どうしても行きたい。そうして僕の心は、アイスランドへと旅立っていきました。
「ついた…」
コペンハーゲン経由でレイキャヴィクに到着。ケプラヴィーク空港をでるとあの冷たい風が待っていました。この風に触れると北緯66°を実感します。ここからいつもの大きなバスで市内に向かいます。時計は24時をまわっています。すっかり睡魔に襲われた僕の膝の上で、厳重に保護された太巻きが揺れていました。
2012年10月01日 09:48