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2012年04月22日
第484回「ビルの赤いランプの点滅がまるでリズムに乗って手をたたいているように見えたんだ」
自分でイベントをはじめたい、そう思ったのは僕が頭にきのこをのせていた25のとき。20歳で芸能界の門を叩き、ロン毛に無印で購入した白いヘアターバンをかぶせて左右に揺れながらあっという間にテレビに吸い込まれると、体のなかに潜んでいた音楽に対する想いが溢れ出しました。クラブになんて行ったことなかったし、DJというものにそれほど関心はなかったけれど、昼間の仕事と共存させるうえでは都合のよい場所。クラブやDJという響きはいまでこそ市民権を得たものの、当時はまだまだアンダーグラウンドでダークで、実際ドラッグが蔓延しているところもありました。芸人なのにと白い目で見る人もいました。DJブースにお酒やライターが飛んでくることもありました。お客さんがたくさん来ることもあれば、ぜんぜんいないこともありました。いつでもやめることはできました。でも、やめることはできませんでした。
そうして、12年の月日が流れました。どうしてこんなにと、自分でも不思議なほどですが、干支も一周するほど続けてこられたのは、好き以外のなにものでもないでしょう。自分を表現したい、曲を作りたい、好きの内訳をあげればきりがありませんが、数々の要素をあげたところできっとそれは「好き」の一言に集約されるでしょう。継続は力なりというけれど、好きすぎてやめられなかっただけ。音楽が好き、ただそれだけ。
はっきりいって、バカなんだと思います。いつでもやめられるのに、こんなに真面目に継続するなんて、バカ以外の何者でもありません。バカになれるって幸せなことだけど、必ずしもそれは、ふざけることではないと思います。真のバカはなにもしない人ではなく、周囲を気にせず、没頭して、まわりが見えなくなるほど夢中になる、これが本当のバカだと思います。バカほど強いものはありません。バカは無敵です。
ある朝、ビルの赤いランプの点滅がまるでリズムに乗って手をたたいているように見えました。それは、僕がバカになった瞬間。そうして、世界がすべてリズムにのりはじめました。僕はこうやって、本当のバカになったのです。音楽なしでは生きていけない人間。それは聴く人間としても、作る人間としても。バカは何をいわれても平気です。好きなことをやっているだけだから。なにをいわれようが、この好きな気持ちにはかなわない。だれも止められないのです。
あれから12年。いまでは深夜のラジオで好きな曲や自分の曲を流し、クラシックの番組もやらせていただくことになりました。好きという気持ちが電波にのって、全国に届いているでしょうか。そして今日は三宿の日。12年前と同じメンバー。それにしても、みんな、オヤジになったなぁ。
2012年04月22日 00:16