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2011年07月10日
第453回「だから音楽が必要なんだ」
永遠と一日、それでも僕たちは生きてゆく、LOVE DISCO。多少なりとも僕に関心のある人なら耳にしたことのある言葉かもしれませんが、これらはどれも3月11日以降に作成された曲。もちろん、あらかじめ作る予定だったわけではなく、結果的に生まれたものですが、いまあらためて聴いてみると、震災後の心境の変化が手に取るように伝わってきます。震災直後の音から、暗闇から抜け出そうとする音、そして数ヶ月経ったときのそれとでは、言葉からも察することができるように、まるで別の人が作ったかと思われるほど雰囲気が異なります。僕は普段、感じるまま、日記をつけるように曲を作るので、そのときの気持ちが音に強く反映されるのですが、それだけ創作活動というものは、時代に、そして環境に大きく左右されます。だから、たいていの作品はそういうものだと思いますが、冒頭の3曲はまさに時代が生んだもので、3月11日が何事もなく通り過ぎていたら、きっとどれもこの世に存在しなかったもの。作品の生みの親はいつも時代なのです。
世の中には様々な音楽があり、聴かれ方も様々であるべきでしょう。僕自身も、ひとえに音楽といっても、聴く場合のそれと、作るときのそれでは役割が異なります。聞く音楽は、どこか温泉につかるような、体にしみこむような、心の安定剤的な役割。一方、作る音楽ないし発信する音楽は、自分自身を具現化したもの。心のなかにあるものが音に変換される。ただ、冷蔵庫のなかにある材料で料理をするように、これまで体にはいってきた音が素材になるので、聴く音楽と作る音楽は、完全に切り離せるものではないのですが。
「どうかしていた…」
作り終えて、一段落して、感じること。いつも頭に浮かぶのはこの言葉。作っている最中はまるでなにかに取りつかれたように夢中になっていて、あとで冷静になってみると、「よくこんな曲作ったな」「こんな風に感じていたのか」と他人事のようにさえ感じます。夢の中にいたかのように、あとから目覚めて我に返る瞬間。自分で作ったとは思えないほど、身に覚えがない。作るというよりは、作らされている。それは、理屈を超越した世界かもしれません。
言葉だけでは表現できないこと、言葉だけでは届かないところ。音楽は、言葉にはできないことを可能にしてくれます。言葉はとても便利な道具ですが、言葉だけではどうにもならないこともあります。理屈だけでは絶対に、世界は丸くならないのです。だから、音楽と言葉と、ふたつの力があったらそれほど頼もしいものはないでしょう。今回生まれた「LOVE DISCO」は、一見、恋する乙女の気持ちを歌ったダンスナンバーですが、これは東北の人だけでなく、日本中の人々に向けたもの、僕なりの応援ソングです。いろんな楽曲があっていいと思うのですが、「がんばろう」とか「ひとつになろう」だけが人を励ますとは限らず、そういった言葉はときに重荷になることさえあります。受験生に向って、「がんばってね」という言葉がプレッシャーになってしまうように。だから、東北の人だけでなく、すべての人の生きるエネルギーになるように作りました。歌詞の中に「生きる」という言葉がはいっているのはそのためです。
クラブDJを始めて十余年。僕にとって作る曲はまさに、いまの日本に届けたい曲、日本中がダンスフロアなのです。だから、クラブでも時間帯によってかける曲が異なるように、震災直後と、数ヵ月後とでは、かける曲は異なるもの。ダンスフロアの空気にあわせた音を届けたいのです。
自分の人生と、時代の流れが交わったとき、そこになにかが生まれます。それが音楽であっても、文章であっても、そのとき、自分の心の中にあるものをカタチにして残していきたいと思います。自分の気持ちと世界が折り合いをつける場所。2011年、LOVE DISCOは確実に、このタイミングでしか生まれなかったもの、このタイミングだから生まれたもの。この曲が、多くの人々の生きる力になると信じています。
2011年07月10日 00:05
コメント
3/11以降のテレビ番組にBGMが無かった影響を伝えたふかわさんの一言は鋭いと感じていました。よく「歌あり踊りありと楽しいひと時」というフレーズがあるように、嫌な事を忘れさせてくれる音楽の癒し効果は凄いです。THANK YOU FOR THE MUSIC!
投稿者: 下町の根強いふかわファン | 2011年07月10日 07:46
音楽活動されていたんですね。
トリンドルさんも正直あまり存じ上げておりませんでしたが、とても彼女の魅力も引き出されているいい曲でした。
音楽活動がんばってください!!
投稿者: アサノ・タケフミ | 2011年07月12日 10:37
こんばんは。
今週からお仕事の環境が変わり、精神的にも落ち着かず緊張状態が続いています。「がんばれ」という言葉も嬉しい反面、プレッシャーに感じたり焦ったり、なんだか毎日が今ちょっと不安定です。
でもそういう時に音楽を聞くとすっきりと気持ちがリセットされることを感じると、音楽の持つパワーは本当にすごいなぁと思います。
LOVE DISCO まだきちんと歌詞がわからないのですが20日のリリース楽しみにしています
自分がこういう環境になった今、このLOVE DISCOという曲が目の前に現れてくれたことにとても感謝しています!ROCKETMAN いつもありがとうございます
投稿者: フィンランドの雨 | 2011年07月14日 22:49
世界に生まれるすべての音と言葉に感謝を。
地球全体で聴ける音響システム…
いつか本当に、実現して欲しいです
投稿者: ひょう | 2011年07月15日 07:46
音楽はオアシス。音楽は心の支え。音楽は時間の芸術・・・。昨日、「パウル・クレー展」に行ってきました。パウル・クレーは、絵を歌わせるように絵筆を持った画家だそうです。絵に音楽が流れている・・!感受性が一致した・・!こういう幸福感に、ときどき出会うことがあります。ふかわさんなら、一致することも、一致しないことも、どっちも大事!っておっしゃるかも知れません。どっちも大事なことって、世の中には、すくいきれないほどありますよね。
「恋する乙女チック全開パワー」は、メロディと合わさり、生きてゆくちからになりますよね。上の3曲のタイトルから、時間の移りゆく気配が読み取れます。この気配をゆっくりと意識しながら、音が作られていったのでしょうか。自分の人生と時代の流れが交錯するところで、情熱を傾けている音楽がカタチになるなんて素敵です。才能ですね。(ひょっとして、やっぱり、神かしら?)
おわらない言葉や旋律、これからもたくさん届けてください。「LOVE DISCO」の詞が、多くの人々の心をふんわり掻き立てますように〜!躓きそうになったときに、もぐり込める場所「週刊ふかわ」、今週もありがとうございました。
投稿者: アトリエのピンクッション | 2011年07月15日 13:08
アーティストや芸術家は心のなかにあるものを直に言葉で表すのでなく、音楽や絵画、映画や小説などの作品として表現しています。
そういった作品として表現されたものに、私たちは心揺さぶられたり、考えさせられたり、happyになれたり、元気づけられたりします。
心のうちにあるものが作品としてカタチになると、人に影響を与えるパワーを持つのですね。
作品を生み出すには心のなかにあるものを伝えたいという強い気持ちが根底にあり、同時に勇気のいることでもあると思います。
言葉以外で表す術を持つ人を羨ましく思いながらも、その前に私は素直に自分の心にあることを言葉で伝えられるようになりたいと思いました。
LOVE DISCO、とても素敵な曲ですね。初めて聴いた日から頭の中でずっと流れてます。
昨日久しぶりのロケデラで音楽をたくさん浴びました。やっぱり音楽っていいなぁと思いました。
投稿者: lady beetle | 2011年07月17日 00:14