« 第444回「キミへの手紙」 | TOP | 第446回「便利と不便の相関関係」 »

2011年04月24日

第445回「NN2100〜僕たちの未来に原発はいらない〜」

 僕たちは、戦後の経済成長の恩恵を受けるがままに生活してきました。復興の大変さを知らずに甘い蜜ばかり吸ってきました。そして僕たちは、未来にどんな世界を残すのでしょう。悲劇は比べるものではないですが、敗戦の空気はこんなものではなかったかもしれません。そこから這い上がって死に物狂いで作り上げたもらった世界でのうのうと生きてきたのだから、僕たちも未来の子供たちに素晴らしい世界をつくってあげるべきではないでしょうか。

 
一日二日に万機ありというように、未来はいま作られています。いまこの国で何が起きているのか。僕たちはなにを失って、なにを得ようとしているのか。いままで見えなかったものが、見えるようになってきました。これから越えなければならない問題は無数にありますが、間違いなく新しい時代がはじまろうとしています。それは、人々の暮らしが変わること。価値観が変わること。大切にするものが変わること。僕たちはあの瞬間、とても大事なものを手に入れたのです。    

 豊かさの基準は時代によって変わり、いま足りないものを求めて人は動き、世界はまわるもの。しかし、薄々感じていました。便利さを謳歌しながらも、そこに溺れていく感覚、「豊かさ」に対する違和感。そしていま、ようやく目が覚めたのです。新しいものや便利なものに囲まれる生活だけでは本当の豊かさは得られないこと。もちろんそれも大切だけど、物質だけでは心が満たされず、むしろ物質に満たされすぎたり便利すぎると空虚感が残り、心が満たされなくなってしまうこと。失ったものが大きかった分、得るものもきっと大きいはず。この気持ちを礎にして、新しい国、新しい世界を構築するべきなのです。歪みや矛盾が生じはじめた社会のシステムがいま、あたらしいシステムにとって代わろうとしているのです。

 そのために、まず決めなければなりません。未来の完成予想図として、新しい世界の大黒柱として、「使用しない」ことを。未来が「ない国」であることを。

 
必要かどうかではありません。どれくらいの電力が必要だから原発が必要かどうかを考えるのではなく、この世界に、未来に、物質としてあるべきものなのかどうかを決めて、そこから未来をデザインするのです。もちろん、代替エネルギーをどうするかという問題は軽視できません。でも、時間をかけて取り組めば絶対に無理なことではないはず。現状、原発の依存度は決して高いわけではなく、人口こそ違いますが、アイスランドでは原子力に頼っていません。火山を利用した地熱発電。このシステム、技術は同じ火山国である日本が提供したものです。だから、できないことではないのです。太陽光や風力発電も、国土が狭いから難しいと言われていますが、それだけにすることは非現実的としても、割合を変えることはできるはずです。「作らない」そして「依存しない」というプロセスを経て、最終的に「使用しない」にたどり着けばいいのです。

 
おそらくいまでも、あるべきだと思う人もいるでしょう。なにも感じない人もいるでしょう。でも、もしも放射能が緑色だったらどうでしょうか。色がついていたり、目に見えるものだったら意識は変わるかもしれません。人は、見えないものを意識することが得意ではないのです。

 
原発自体を否定しているわけではありません。それは必要な通過点だったのです。人々の暮らしは時代によって変化し、価値観も変わるもの。やがて教科書に載る頃、「この時代には原発なんていう危険なものがあったんだなぁ」と、僕たちが昔の人々の暮らしに対する感覚を、未来の人たちが抱くのです。

 最初のNNO、ふたつ目はNUCLEAR。それは、ふるさとをなくした人々のためだけでも、安全に対する不信感のためだけでもありません。また、世界が動き出したからでも、美談をつくりたいからでもありません。この世に生まれたひとりの人間として、この世界にあってはいけないものだと思うから。2100年、未来の世界にそれがないように。それが過去のものになっているように。これが僕たちからの未来へのプレゼント。そしてこの国が、世界のスタンダードになるのです。







2011年04月24日 00:25

コメント

小さなアクションを 起こそう。メモ書きにして・・・。

節電をさらに心掛けよう。 TVよりラジオを聴こう。 ルールを疑ってみよう。 人生を逆算して暮らそう。 見えないものを見ようとしよう。 御座なりにすることをやめよう・・・ 

2200年を意識しよう・・・。

今から始まるのだから、今は逃げてはいかないし、考え方しだいだからできるはず。システムが代わること、これは最後のチャンスだと思います。 自分を、根気強く育てていきたい。

世界を見据えたメッセージに いつも感謝しています〜!

投稿者: アトリエのピンクッション | 2011年04月24日 15:04

4/23のロケショーそして上記のロケ兄の文書。僕は子や孫のための未来を考えることは素晴らしいと感じてます。普段どうしても年上の方との会話が多いのですが、残りの人生に投げやりな発言を聞くと(年上が全てそうではないですが)僕自身は寂しく感じており、僕は自分の子供のためにも残りの人生で上手くバトンを渡したいと思っております。

投稿者: 下町の根強いふかわファン | 2011年04月25日 08:51

こんにちは

いま直面している問題が
なぜ日本で? なぜ日本人に?
それはきっと「乗り越えられる」という
大きな意味を持っているから

そして、日本は世界のスタンダードになる国という使命を持っているのだと読んでいて思いました

投稿者: フィンランドの雨 | 2011年04月25日 12:10

 ご無沙汰しております。

 さて…原子力の問題が、単にエネルギーにまつわる問題であれば、まだその廃絶への道のりは楽だったかもしれません(無論、それでも、ひいては産業構造やライフスタイルにまつわる問題へと発展しますので、なかなか大変だと思います)。

 しかしながら、この問題はどうやら「抑止力」とも密接な関係があるようなのです。
 どういう事かといいますと……いざというときには国産の核兵器を生産することができるだけの原子力技術を維持できるように、原子力発電をいわば「技術蓄積の場」としている、という趣旨の意見を新聞で目にしました。
 真偽のほどはわかりませんが、十分ありえることだと思います。なぜなら…核兵器を持つことはもちろんですが、それ以外にも、「すぐ国産できる状態にある」という技術レベルを有することも、「抑止力」になると言われているからです。

 ……こうなってきますと、日本の国防・安全保障問題と密接に関わってきますから、話が非常にややこしくなります。

投稿者: 明けの明星 | 2011年04月28日 23:46

美しい朝焼けや、子供達のはしゃぐ姿を見かけるたびに、現実に対峙していくタイミングであることを強く、思います。

夢物語ではない。NNをいつも心に。
未来の親は自分達である。

…同じ景色を見せたいもの。

投稿者: ひょう | 2011年04月29日 06:12

私は原発問題を考えようと思ったとき、いつも「じゃあ代わりはどうするのか?」という問いからスタートしていた気がします。

なので先に"この世界に、未来に、物質としてあるべきものなのかどうかを決めて"しまうという考えは私の今までの考え方を変えるものでした。

代替エネルギーをどうするのかというのは、実現させるためには重要な問題であるけど、やはり最初に考えるのは、あるべきかどうか。

これまで原発ありきのエネルギー政策に埋もれてきた自然エネルギーを使った発電方法があります。日本には優れた技術もある。新たな方法も生み出せるかもしれません。

最初にゴールを決めて、それにむかって走る。

そんな考え方が私の中でストンと落ちていきました。

投稿者: lady beetle | 2011年05月02日 00:10

昨今の地震、原発、最近のニュースを見ると、

人間はもっと謙虚にならないといけないな、と心底思います。

特に原発についてはここ2ヶ月弱の動向を見る限り、日本は、人間は持て余している。

地震大国である日本の、狭い国土の割に多くの原発があるのは、きっと人的、経済的、効率的などの面で費用対効果が大きかったからなのかと推測します。

でも、ここでおっしゃっているように、NNは残された私達が後世に残すことができる仕事のひとつなんだと思います。

幼い子どもを見ていると、自分にとって心地良い、都合の良い事や物を与えれば与えるほど「もっともっと」と欲しがるようになる。それを諫めつつ「きっと大人も同じだな、人間だし」とふと思うときがあります。

電力に関しても、無くてもいいものは抑制の方向で。今後の発展などに必要なものは使っていく方向で。

使い途にメリハリをつけて、丁度いいラインを探していくことも、私達のこれからの課題だと思います。

メッセージの発信、これからも応援しています☆

投稿者: がちゃぴん | 2011年05月05日 01:16

ふかわさんの言うとおり。
今回の災害は、東北地方の被害にあった方々には何の罪もありませんが、人間が自然に対して今まで行ったことに対しての意識改革をさせるべく必須のことだったと思います。
ふかわさんの言うとおり、自然界に無いものを作った人類の暴挙ですから。。
昨日、NHKラジオの再放送でふかわさんのインタビューを聴きました。前から知ってましたが、あらためてアイスランドに興味を持ったしだいです。
ありがとうございました。

投稿者: おっりょー | 2011年05月07日 13:21

コメントしてください

名前・メールアドレス・コメントの入力は必須です。




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)