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2011年03月06日

第439回「シリーズ人生に必要な力その48抑圧力」

「英雄ポロネーズ」「軍隊ポロネーズ」

 タイトルこそ知らなくても、ひとたびその音を耳にすれば、きっと誰もが馴染みのある曲だとわかるでしょう。これらは、かの有名なフレデリック・ショパンの曲。彼はこれら以外にも「革命のエチュード」や「幻想即興曲」、「別れの曲」など、日本はもちろん、世界中で愛される美しい楽曲を生みました。冒頭の「ポロネーズ」とは「ポーランドの」という意味。ポーランド出身の彼にとってそれは、楽曲を作るにあたって非常に重要な要素となりました。クラシック音楽のタイトルは後につけられることが多いのですが、彼が祖国を愛して作ったことは間違いありません。それらは祖国に捧げる曲だったのです。

 世の中にはそういった祖国に捧げる楽曲は少なくないですが、彼からこんなにも広く、時代を越えて愛される楽曲を生んだ理由のひとつに、とても重要な真実があります。それは彼が、祖国を失ったということです。

1810年に生まれたショパンは、社会情勢の悪化によって祖国ポーランドを追われ、やがてウィーンやパリへと活動の拠点を移すことになります。その後、ポーランドはロシアなどの支配下に置かれ、実質国としての機能を失いました。民衆は何度か蜂起を試みますが、その度に鎮圧され、結局ショパンは祖国に帰ることなく、息を引き取ることになります。「心臓をポーランドに持って帰ってくれ」それが彼の遺言でした。

 祖国を失う、このことが彼のポーランドに対する愛情を爆発させました。祖国への想いは鍵盤に向けられ、音になって現実世界に現れたのです。もはや、ショパンの楽曲はポーランドの一部。ショパンの奏でる音こそ、ポーランドそのもの。抑圧が彼に名曲を生ませたのです。ショパンだけではありません。ロシア軍の鎮圧がのしかかればのしかかるほど、ポーランド人の民族意識は高まりました。ポーランドの国家の原曲が作られたのはこの頃です。

 抑圧はときに世紀の芸術を生む。世の中のほとんどの芸術は抑圧によって生まれたといっても過言ではないでしょう。もちろん誰もがショパンになれるわけではありません。そもそものテクニックや感性などもあります。しかし、抑圧があったからこそ名曲が生まれたように、抑圧がエネルギーの源であることは、だれに対しても当てはまることでしょう。そしてその持久力を考えれば、場合によっては抑圧こそ、感謝に値するものなのかもしれないのです。

 海水浴で浮き輪を片付けるとき、なかの空気を出すために体重をかけます。これによって穴から勢いよく中の空気が飛び出す。これと同様に、抑圧は結果として力となるのです。いちばんいけないのは、抑圧に対してただ愚痴をこぼしたり、それに対して反発したりすること。そのエネルギーを憎しみや復讐に燃やすこと。抑圧でパンパンに膨らんだエネルギーをどこで爆発させるかが重要なのです。

 それは、戦争だけではありません。社会情勢だけでもありません。人間だれしも、なんらかの抑圧を受けています。校則の厳しい学校を卒業したときに、それまで溜まったエネルギーが爆発するでしょう。ベートーベンだって、耳が不自由だからこそ、音に対する情熱は止まなかったのでしょう。やがて訪れる自由の瞬間のために、抑圧で溜まったエネルギーはとっておくのです。

 もちろん、抑圧自体は心地のいいものではないかもしれません。だからこそうまく利用する。抑圧で生まれたエネルギーをどこで活用するか。この意識を持っているだけで、人生は違ってきます。ただ反発したり愚痴をこぼすのではなく、抑圧をエネルギーに変える、そんな力が人生には必要なのです。

2011年03月06日 12:24

コメント

先日、映画「ポンヌフの恋人」を劇場で観ました。純愛物語ですが、うまく心理を描写していました。 抑圧された男の子の感情は、口から火を放つことで炸裂! 美しいポンヌフ橋の上で、花火も、パン!パン!パン!・・・。くり返し、くり返し夜空に炸裂!! 二人は狂ったように踊ります。

抑圧を表に出しきると、理性は正しく働きます。待つこともできるし、思いやることもできる。抑圧と、うまくつき合えるかで人生は、180度違う気がします。 私は、自分のテンションが、いったい今どの辺なのかを、よーく考えるくせをつけました。

妄想しているって口に出すこともいいようです。 憎しみは、育ててはいけないそうですよ。

昨日の「ロケショー」、なんだかふかわさんの声、懐かしかった! 「イーグルス」のコンサートから帰り、そのままずっと起きて聞きいていましたよ。いろいろ、お話されていましたね。

印象悪くてもいい。失うことを恐れなければ・・・。きっと強くなれる。自分によーく言い聞かせたいなぁ〜!「ソーシャルネットワーク」も、同感でした。 高校生の「フニオチ」も楽しかった!

こういうアクションが、世の中を動かすことの認識、もっともっと広めたいですよね。 ふかわさんが優しいから、みんなが優しくなれる〜♪

投稿者: アトリエのピンクッション | 2011年03月06日 15:29

抑圧力、重要です!!!

自然とエネルギー変換できなくても、

まずは、気持ちの持ちよう次第で、
変換可能な気がします♪

そんなとき、
日々の努力や自信も
関係してくるかも!?

私の場合、
根拠のない自信も多いですけどね〜☆

投稿者: わくわくが重要 | 2011年03月06日 22:56

抑圧に耐えながら、だが自分には今この状況でなにが出来るかと考える事、大切だと思います。特に耐え忍ぶ時間に抑圧を打破できるチャンスのためにエネルギーを蓄積(体力でも情報など)できる気持も持続したいです。ロケショー2ヶ月ぶりにジャパスタのメール読んで頂き、春を少し感じました。気持の中では「エコバックいいな…」と思いつつも、市原の学生さんが貰う事のほうがロケ兄の番組には絶対プラスになると感じます。今後も出張フニオチ頑張ってください!リスナーは確実に増えると思います!

投稿者: 下町の根強いふかわファン | 2011年03月07日 08:52

今日鎌倉に観光に行ったら、ふかわさんとつぶやきシローさんを見ました!

遠くからしか見ることができませんでしたが、二人ともかっこ良くてきゅんとしました♡

これからもお仕事頑張って下さい(*^^*)
応援してます。

投稿者: ギャル曽根 | 2011年03月07日 21:31

音大大学院でピアノを勉強しているのですが、ここ1年くらい、また底から上がれず苦しんでいます(もちろん何度も経験してきたことですが今回は長い)。
音楽のみならず人格まで否定されることの繰り返し…

でも先日ふかわさん登場回の内さまを見ていたとき、ふかわさんが「自分がいかにダメだったかを知る10年」と言っていたのにすごく救われました。
ほんとどれだけ救われただろう、という感じです。

ショパンは大ピアニストでもありましたが、演奏会の数日前から緊張でどうしようもなくなっていたそうです。
これも私を励ましてくれるエピソードです:)))

投稿者: みつは | 2011年03月07日 21:42

『抑圧』についてなんて、今まで生きてきて考えたことがなかったので、今日このブログを読んでいなかったらこれから先も考えることもなかったでしょう。

先日、新聞で「今の若者は考えるより検索」という内容の記事を読みました。これに少し心当たりのある私はドキッとしてしまいました。

「人間は考える葦である」とある偉人は言いました。(なぜ葦なのかがとても疑問なのですが…)考えないとただの葦になってしまいそうなので、『抑圧』について考えてみることにしました。

今回の文章の中で、「抑圧はときに世紀の芸術を生む。」という一文が好きです。抑圧がエネルギーの源であるというのにはとても頷けます。

祖国をを奪われたショパンが、名曲を残したように。アフリカから奴隷としてアメリカ大陸に連れてこられた人々が言語や宗教を奪われ、そしてゴスペルという音楽を作り出したように。王制や独裁政治の下にいた民衆が革命により既存制度を壊し、民主政治を作りあげたように。
歴史を振り返ると( 今現在も)抑圧がエネルギー源だったことが多々あります。

エネルギー源になる一方で、逆にその抑圧に押しつぶされてしまうこともあると思います。

抑圧には社会的なものや精神的なものなどとありますが、エネルギーを爆発させる(革命などの)段階で犠牲になった人はたくさん出ただろうし、精神的抑圧に耐えられなくて押し潰されてしまう人もいるでしょう。

同じ状況下でも人によって抑圧の感じ方はちがいます。ある人にはもの凄く重いものに感じるかもしれないし、ある人には全く抑圧には感じないかもしれない。


極端な話になりますが、抑圧を感じればそれと同時にエネルギーの源を得られるかもしれません。でも抑圧を感じずに済めば、エネルギー源は得られないが心の平穏が保てます。

どちらかがいいのか、どちらもバランスが取れた状態がいいのでしょうか。


もしも、「これからあなたは重大な抑圧下に置かれます。でもそれに伴って、その分のエネルギーを得て何か重大なものが生み出せるかもしれません。」
という状況なった時、この世界に飛び込みますか?

投稿者: lady beetle | 2011年03月08日 22:27

こんにちは。
毎週欠かさず読ませて頂いてます。
何度この週刊ふかわで、心を揺さぶられたか分かりません。先日やっと自分のPCを購入したので今までの何年間か分のお礼もふくめてコメントさせて頂きます。

抑圧力。
わたしも初めての就職先ではたくさんの抑圧と戦いました。「辛くてもすぐ辞めたりしない」と決め一生懸命働きましたが、一年程したある日心の糸がぷつんと切れました。退職をして「今の自分にしかできないことをしよう」とそれまで溜まっていた気持ちが一気に吹き出し、就活でいい返事がもらえない時でも「まだまだこれから」とそれまでの抑圧力がわたしのモチベーションを下げない力のひとつにもなっていました。

抑えられれば抑えられるほど、自由になった時の反動は大きいですね。
ちょっと違うかもしれませんが、大好きなチョコレートを我慢したあとに食べるチョコレートは「やっぱりおいしいなぁ」と改めて実感させてくれることもいい抑圧力なのかなと・・・

岡本太郎さんも「芸術は爆発だ」とおっしゃっていました。その中にはショパンと同じように、この「抑圧力」も含まれているのでしょうね。

投稿者: フィンランドの雨 | 2011年03月09日 17:25

はい。風がなければ飛行機も空飛べませんから。

投稿者: レグルス | 2011年03月11日 05:58

マイナスのエネルギーも確かに「エネルギー」という呼び方になっていますよね。

上手く使えるようになるには、時間もかかるし何度も経験しなければそれこそ意識しながら生きていかないと、本当に理解することも難しいと思います。

「抑圧力」を、しかるべき時にじっくり噛みしめ、しかるべき方法で発散する。

あなたのくよくよ時間はもう終わってるので進むだけ、自分にとってそんなタイミングでの必要な力シリーズでした。
ありがとうございます。

投稿者: ひょう | 2011年03月11日 09:26

ふかわさん、時々(毎週ではなくすみません。)読ませていただいています。

ここ数日、今回の地震についてふかわさんからの元気が出るメッセージを読みたいと思い、このページを訪ねています。

私は今、海外に住んでいます。今回のテーマは「抑圧力」なので、ふかわさんの意図することとは違ってしまうかと思いますが、このような状況に際し「祖国への想い」が募るばかりです。
祖国が危機に瀕しているのに遠い国にいる自分への歯がゆさ。ある種これも抑圧です。
しかし被災地の皆さんはもちろん、関東・東北地方の比較的被害の少なかった方々も輪番停電や食料不足で抑圧され、他の地域の方々もニュースを見て心を痛めていることでしょう。

この抑圧の中でも皆が団結し、乗り越えていける国力を日本は持っていると信じたいです。

まだ余震が続き、原発施設爆発の可能性も消えていません。
どうか日本のみなさん、頑張ってください。
一人でも多くの命が助かりますように。
私も遠くからではありますが、自分に出来ることをしていきます。

投稿者: AU | 2011年03月16日 09:00

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