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2008年06月22日
第320回「シリーズ人生に必要な力その5袋とじ開封力」
最近の写真週刊誌は毎回のように袋とじがあるどころか、ひとつの雑誌の中に何度も登場し、どこか本末転倒な感があります。というのも、そもそも袋とじは通常のページ以上に危険度が高く、買った人のみが味わえる禁断の扉であるべきなのに、それが何回も登場してしまっては禁断度合いが薄れ、読者の期待値も減少してしまいます。しかも、実際開封してみると、とじられていないページとさほど大差はなく、なんのためにとじたのかと疑問に思うことも少なくありません。これでは、めくる作業に加えて、破るという手間をひとつ増やしているにすぎません。こんなに袋とじが当たり前になってしまったら、やがて雑誌全体をとじてしまうんじゃないでしょうか。もしそうなったら、単に立ち読みさせないために紐で縛ってある雑誌と同じです。そうならないためにも、今後はひとつの雑誌につき袋とじは1箇所、という具合に雑誌協会で取り決めをおこなわないと、自らの首をしめる結果になります。古来より、「一誌一袋」と言われるように、変に欲張らず、ひとつの袋にとどめておくことが、最も読者を興奮させることができるのです。
そんなことを心の中で思いながら、いま、袋とじを開けようとしています。新幹線の中で、禁断の扉に手をかけようとしています。普段あまりそういった類のものは読まないのですが、長い移動のときには時間つぶしのひとつとしてお菓子と一緒に週刊誌を購入するのです。飛行機などの場合、離着陸の際はオーディオプレイヤーを使用できないので、こういった週刊誌があると助かるのです。だからといって、いつでも開封していいわけではありません。この袋とじを開けるという行為、一歩間違えると大変なことになりかねないのです。
袋とじは、一般的にアダルトなイメージが強いため、うかつに開封していると、「こいつ、エロいのを読もうとしているな」と勘繰られてしまいます。言うなれば、レンタルビデオ屋のAVコーナーの暖簾をくぐろうとしているのをん目撃されるのと同じです。だから、周囲に気づかれないように開封しなければならないのです。その力こそが、今回の「袋とじ開封力」なのです。
そんなこと簡単じゃないか、ある人はそう言うかもしれません。しかし、簡単に見えてこれがかなりの技術が必要なのです。あまり音を立てないようにゆっくりと開封するのだけど、この音が驚くほど目立つのです。特に新幹線の中では、周囲の音にかき消されるかと思いきや、あのミシン目に沿って離れていく紙の音が、なぜだか異様に響くのです。それは、静かにやろうとすればするほど。「禁断の扉」は静かに開いてはくれないのです。
袋とじを開封している最中に「切符を拝見します」とか「お飲み物はなにになさいますか?」なんてこられたら実も蓋もありません。彼女の顔にはでていなくとも、「この人、いやらしいページを見ようとしてる!」と心の中で思われることは避けられないでしょう。また、新幹線ともなると、これから大事な契約を控えている会社員たちが大勢乗っています。そういった人たちにきこえないようにするのが大人のマナーといえるでしょう。周囲に気づかれないと同時に、周囲に迷惑をかけずに、禁断の扉を開けなければならないのです。
また、初心者によくあるのが、音はでていないものの、顔にでてしまうケースがよくあります。顔にいやらしさが露呈してしまうのです。これではまったく意味がありません。むしろ音のほうがいいくらいです。いかなるときも、涼しい顔で、まるで小説のページをめくるように、重要な書類の封を切るように、水着ギャルであふれたページを開封するのです。
では、実際にどういう開封法があるのでしょう。袋とじ開封協会の方に伺ってみたので、いくつかご紹介しましょう。
一般的に広く活用されているのが「フィンガー開封」です。いわゆる指で行う開封法ですが、これはミシン目がある場合はいいのですが、ミシン目がないと音はでるどころか、ページもめちゃくちゃになる可能性があるのであまりおすすめできません。ミシン目のない場合に有効なのは、切符をカッターのようにスライドさせる「チケット開封」です。これは音も少なく切り口もきれいなのですが、ある程度の訓練が必要となります。いずれにしても大事なのは、ミシン目があるからといって油断するのではなく、どちらも慎重に決行しなくてはなりません。
ほかには、伸びをしながら両手で開封する「伸び開封」や、音楽を聴きながらノリノリで開ける「ipod開封」、トイレで開ける「ラボラトリー開封」。ビールを飲んでアルコールに依存する「麦芽開封」、鞄の中で開封する「バッゲージ開封」や、イスを倒しながら行う「リクライニング開封」などがあります。中でも周囲に気づかれないことを一番の目的とするなら、家に帰ってから開ける「おみやげ開封」(お持ち帰り開封とも言う)が有効かもしれません。慣れないうちは、誰もいない空き地や砂浜などで練習し、テクニックがついてきたらいろいろな開け方にチャレンジしてみたらいいでしょう。
周囲に気づかれず、迷惑をかけないように袋とじをあける「袋とじ開封力」、この力が人生には必要なのです。この力が身につけば、どんなところでも禁断の扉を開けることが可能になるのです。ただ、くれぐれも、高揚する気持ちは開封しないように。
1.週刊ふかわ |2008年06月22日 09:22