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2007年04月15日
第264回「解禁の理由」
それが、単に逃げているだけだということに気付いたのは、少し前のことでした。
これまで何冊かの本やCDを制作してきました。それなりに売れたものもあれば、そうでもないものも当然ありました。この読者をはじめ、ファンの人たちはある程度認知していても、世間的には、「え、ふかわってこんなに本出してたんだ!」「ふかわってDJやってんの?」くらいが現状だと思います。実際、テレビでほとんど話したことないし、僕の中でも、お笑いと違う活動だから言うべきじゃない、なんて思っていました。心のどこかで、ファンの人たちだけに届けばいい、わかる人だけにわかってもらえればいいという考えがあったのです。しかし、それは間違っていました。
「僕は、逃げている」
あるとき、そう思ったのです。逃げているつもりはなくっても、僕の考えは、世の中から逃げているだけで、まっすぐ向き合っていなかったのです。
当然、売れなくていいなんて思っていません。せっかく作ったものですから、たくさんの人に見てもらいたいという気持ちは当然あります。10万部や10万枚なんていったらさぞ気分いいんだろうな、なんて誰もが思うでしょう。それと同時に、ファンの人たちにさえ伝わればいいと思っていたのも事実でした。常にふたつの気持ちが存在していました。「わかる人だけにわかってもらえればいい」と思うことで、10万部に届かなくても言い訳ができるのです。10万枚売れなくても傷つかずに済むのです。でも、それじゃいけないのです。僕は、「わかってもらえない人にわかってもらう」ことから目を背けていたのです。
僕はいままで、逃げ道をつくったり、言い訳を考えていたり、そんなことばかりしていたのです。本当は知って欲しいのに、拒絶されるのが怖いから、傷つくのが怖いから、声を大にしていうのを避けてきたのです。そうすることがかっこういいとすら思っていたのです。世の中から逃げているだけなのに。
だからもう、言い訳もしないし、保険もつくらない、世の中にただまっすぐ、これが僕の作品です、これが僕の伝えたいことです、と胸を張って言おうじゃないか、そう思ったのです。だから、「解禁」なのです。
常連さんしか知らない裏メニューのままで満足せず、店にきた人みんなに味わってもらおう、この店に興味のない通りすがりの人にも、店先のショーケースの中にちゃんと飾って見せようじゃないか、ということです。そうしないと、伝わらないのです。ようやく最近になって、そう感じられるようになったのです。
もう少し踏み込んだ表現をすると、僕は、「作品」を作ってばかりで、本当の意味での「商品」を作っていなかったのです。家で作ったものを市場にださず、自分の家だけで楽しんでいたのです。自分の気持ちを満たすために作っていたのです。
自分の頭のなかにあることを形にすることは、それはそれで大切なことです。でも、それを「作品」にするか「商品」にするかで、大きく変わってきます。自分の思いを形にすれば、それは作品になります。でもそこに、世の中のたくさんの人たちに理解してもらうという気持ちが込められなければ「商品」とは言えないのです。自分の思いと同時に、世の中への思いがあってはじめて「商品」になるのです。だからいつも「作品」と「商品」のせめぎあいなのです。この先は少し長くなってしまうのでここでは割愛しますが。
どうしてこのような心境の変化が訪れたのかはわかりません。いろんな経験や出会いから生まれた自信も、その要因のひとつでしょう。でもなにより、自分を追及することに向かい始めたことが、一番大きな要因かもしれません。32歳になってようやく、自分というものに興味が出て、自分と向き合うことができて、そして本当の意味で自分を好きになりはじめたということです。だから、誰かに勝るとかではなく、自分の道を追及する、そこだけに集中できるようになれたのです。そしたらすべての恐怖が払拭され、不安がすーっと抜けていったのです。前にも後ろにも、その道に敵はいません。自分だけの道をただひたすら走り続ければいいのです。
こんな気持ちが、今回の裏メニュー解禁につながり、この価値観が、今後の僕の活動を大きく左右するのだと思います。自分の中に、宇宙があるのです。
PS:5月13日、渋谷HMVにて、3つの裏メニュー合同サイン会を行います。詳細は次週お伝えします。
1.週刊ふかわ |2007年04月15日 10:00
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