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2006年12月10日

第249回「感謝の言葉にかえて」

週末となると、どこかしらのクラブでDJをしていたから、どこにもいかない週末に一抹の違和感を感じるようになりました。8月のリリースを皮切りに、北は北海道札幌から南は九州大分まで、全10都市のクラブでイベントをしてきたのですが、季節が秋にかわろうと、コートを着るようになっても、夏のアルバムのプロモーションをしていたので、一段落したいま、ようやく長い夏が終わったような感じさえあります。

イベントで全国をまわっているものの、あまりその土地土地の名物を堪能する時間もなく、ほぼとんぼ返りに近いケースがほとんどでした。それでもやはり、東京以外のクラブでイベントするのは新鮮で(東京が新鮮ではないという意味ではなく)、それでいて場所によっては数年ぶりに会う人たちがいたりと、懐かしい故郷に帰るような気分にもなります。大好きな新幹線で、コーヒーとお菓子を横に、好きな音楽を聴いて景色を眺めていることも、普段味わえない貴重な時間です。でも、地方イベントはいいことばかりではありません。

一応、アルバムリリースのイベントなわけだから、会場での物販がつきものです。今回はサンセットレコードTシャツとアルバムを会場で販売したのですが、この準備が一苦労なのです。というのも、そういった物販の品物を僕が管理しているからです。Tシャツなんかは、自分で業者に発注して自宅で保管しているので、タイミングによっては、部屋がダンボールだらけの倉庫のようになることもあります。そしてそれらをイベントの数日前にアルバムと一緒に箱つめして発送するという、非常に地味な作業を避けられないのです。だから週に一度は最寄りのコンビニにダンボールを二つ抱えて現れ、各地に郵送していたのです。おかげで伝票の書き方にも慣れ、この地域だといつくらいに着くかということも、だいたいわかるようになりました。

その規模の大きさもあり、地方のイベントは都内のイベントよりもDJ中のテンションが若干高いかもしれません。それでよく、DJ中にTシャツを脱いではフロアに投げまくったりしていました。かつてはその後も、上半身裸のまま汗を吹き散らしてDJを続けていたものです。それは、華奢ではあるものの、若い男の肉体と汗の結晶により、DJブースをまるでリングのように感じさせていたことでしょう。しかし、時は無常なもので、いつのまにか32歳になり、肉体的な緊張感がなくなりはじめ、汗を吹き散らしてDJをすると、ゆるい肉体と汗の結晶により、DJブースをまるでサウナのように感じさせてしまいます。その結果、脱いだらすぐ着る、というライフスタイルに変わったのです。

また、いろいろ回ってきて感じるのは、どこの地方でもとてもお客さんたちが素直だ、ということです。僕が両手をあげれば両手を挙げて、声を出せば声をだす、という良いお客さんたちに恵まれたと思います。また、人里離れたクラブでも、地元のDJたちのおかげで、とても洗練された音が流れていたりするのです。やはりクラブは、DJたちがお客さんのセンスを磨くのかもしれません。

ちなみにですが、僕はいつも控え室のようなところにいきません。DJが終わったあとも、控え室やVIPなどにはいかないのです。じゃぁどこにいくかというと、みんなのいるフロアにいくのです。それは、これまで一環してきたことなのですが、僕の場合は、DJプラスその後のコミュニケーションがセットでDJだと思っているので、プレイ後はたいていフロアにいくのです。すると、みんなが寄ってきて握手をしたり、頭を触ってきたり、ズボンをおろそうとしてきたり、抱きついてきたり、プロポーズしてきたり、といろんなことが巻き起こります。余談ですが、地方のクラブにいくと必ず一人は「結婚してください」という人が現れます。当然、本気ではないのだろうけど、ほんと不思議な現象です。それはそれとして、一番多いのはやはり写メールです。「お客さん全員と撮ったかも」というくらい、みんなと撮ります。正直へとへとになります。あまりに疲れて表情も笑顔になってないです。でも記念になればと思い、僕はみんなと撮るのです。おそらく、全国に存在するケータイのなかで、かなり多くのケータイの中に僕の顔が保存されているかもしれません。また撮ったあとに友人に送っていたりすると、一気にその地域で僕の顔のデータがとびまわっているかと思うと妙な気分になります。ちなみに、都内では常連さんが多いことや、雰囲気的にあまり写真をお願いされることもありません。どちらかというと、僕のほうがみんなをパチパチとっているくらいです。

この夏からの地方巡業で僕が感じたことは、これだけではありませんでした。いろいろイベントを重ねてきて強く感じたことがもうひとつありました。それは次週おはなしすることにします。それでは、全国のイベントに足を運んでくれた皆さん、そしてクラブのスタッフのみなさん、本当にありがとうございました。またいつか必ず訪れるので、そのときまで。この文章をみなさんへの感謝の言葉にかえて。

1.週刊ふかわ |2006年12月10日 10:00