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2006年10月01日

第239回「駄目な大人たち」

第239回「駄目な大人たち」
「ただいまより、2006年の流行語大賞にノミネートされた言葉を発表します!」
司会者が声高々に言うと、その隣の女性アナウンサーが美しい声で読み上げていきました。
「飲酒運転、痴漢、虐待、猥褻行為、談合、不正...そして最後は、格差です」
ひとつの単語が読まれるたびに、会場がどよめきました。
「えー、以上の言葉が2006年の流行語大賞にノミネートされたものです。たしかに今年の出来事を反映しているのではないでしょうか。ちなみに、よく使う言葉はありますか?」
彼は隣の女性アナに尋ねました。
「そうですねぇ、私はどの言葉もニュースで毎日のように発していましたが、特に猥褻行為という言葉は頻度的に高かったかもしれません」
「そうですか。飲酒運転というのもかなり聞きましたね。あれほど駄目だと言ったのに、後を絶たちませんでしたね。無免許のうえに飲酒という事件もありましたねぇ。そして虐待という言葉もよく耳にしました」
「はい。ただこの言葉は、今年に限らず数年前からずっとノミネートされていますから、今年は選ばれないんじゃないでしょうか」
「そういう意味では、やはり格差が有力なんでしょうか。流行語が格差というのも、どこか悲しい気がしますが...Aさんいかかでしょう?」
司会者がゲストコメンテーターに訊いてみました。
「そうですねぇ、流行語はその国の風潮を表していると思うんですが、こうやって見ると、日本という国がとても緊張感のない国になってしまった気がします」
「緊張感のない国、ですか?」
「そうです。だって、これらの言葉を毎日聞いてるでしょ。猥褻行為という言葉なんて聞かない日はないですよね。ほんとにだらしがないんですよ、いまの日本は」
「結局、大人が駄目なんだよね」
もう一人のコメンテーターが間に入ってきました。
「大人が駄目、とは?」
「結局ね、飲酒運転にしても猥褻行為にしても、みんな大人たちですよ。大人たちがだらしないんですよ。そもそも大人は子どもたちの模範であるべきなのに、いまニュースで流れているのは駄目な大人たちばかり。そりゃ当然ね、スポーツ選手とか、立派な大人もたくさんいますよ。でもね、それにしたって駄目な大人が多すぎる。こんな駄目大人のニュースばかりやっていたら、子どもたちや若者たちは大人に魅力を感じなくなりますよ。あんな風にはなりたくねぇって。駄目な大人を反面教師として成長するのも悲しいでしょ?立派な大人を見て子供たちは成長するべきでしょ」
「こんな世の中だから、総理は美しい国というテーマを掲げたんでしょうか」
司会者がさらに踏み込んだ質問をしました。
「まぁ、美しい国を目指すのもいいけど、そのためには美しい大人たちをつくることだろうね。ちょいワルオヤジなんてきっと数年後には恥ずかしい過去になっているだろうから、これからは子どもたちが憧れる大人を作らないとだめだよね。それができてはじめて子どもたちを叱ることができるんだから。全部とは言わないけど、少年犯罪の多くはそんな環境を作った大人たちの責任だよ」
「会場内が白熱してまいりましたが、この中から大賞が選ばれるまでもうしばらくお待ちください」
そう言って、司会者は一旦席をはずしました。
おそらく実際の流行語大賞はこんな展開にはならないのだろうけど、でも現在の日本は上記の言葉が横行しています。そりゃぁニートも増えるわけです。社会人、大人たちに魅力がないのだから。ほんとにだらしない大人が多すぎるのです。だらしないクセに、ちょいワルオヤジなんていうスーパーダサい言葉で身を飾ってる。ほんと30代の大人として情けないです。どうしてこんな風になってしまったのでしょう。いっそ、流行語大賞を「猥褻行為」にして、自らを恥じるべきなのです。首相がかわったところで本質的にはなにも変わらないのだから、各々が駄目な大人にならないように気をつけないといけないのです。それにしても、こんな日本に誰がしたんだろう。

1.週刊ふかわ |2006年10月01日 10:00