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2006年09月17日
第237回「ダンゴムシの憂鬱」
「そろそろいいかな?」
「そろそろいいんじゃない?」
「だいじょうぶかな?」
「だいじょうぶだよ」
「よし、じゃぁいくぞ!」
「うん!」
2匹のダンゴムシは体を丸めると、勢いよく石の陰から転がって出てきました。
「わー、久しぶりだぁ!」
「ほんと、久しぶり!」
「いやぁ、長かったなぁ、、、」
「ほんと、長かったねぇ、、、」
「もう一生出れないかと思ったね」
「うん、一生石の下かと思ってた」
ようやく石の下から出れたことに、彼らはとても喜んでいました。
「どれくらいいたんだろう?」
「もう結構いたよね」
「結構どころじゃないでしょ」
「うん、結構どころじゃないよね」
「それにしてもすごかったねぇ、あのとき、、、」
「ほんとすごかったねぇ、あのとき、、、」
「まさか、あんなことするなんてねぇ、、、」
「よっぽど怒ってたんだろうね、、、」
「でも仕返しもすごかったね、、、」
「うん、仕返しもすごかった、、、」
「みんな反対したのにねぇ、、、」
「よっぽど怒ってたんだろうねぇ、、、」
彼らの頭の中に、石の陰で見てきたことが浮かんできました。
「で、結局人間はいなくなったのかな」
「結局人間はいなくなったみたいだね」
「ったくいい迷惑だよ、地球を変えるだけ変えちゃって」
「ほんといい迷惑だよ、あんなに快適だったのに」
「最初は恐かったけど、次第に悪い人たちじゃないって思って、でも結局は野蛮な人
たちだったよね、人間って」
「うん、野蛮なひとたちだった、人間って」
「仲間同士でいがみ合って殺し合いをしてさ」
「どうして仲間同士で殺し合うんだろね」
「人間て、やさしいときと恐いときの差があるんだよね」
「ほんとそうだよね」
2匹のダンゴムシは体を伸ばし、仰向けになっていました。
「なんか勘違いしてるよね、人間て」
「たしかに勘違いしてたよね、人間て」
「変えることがすごいことだと思ってたのかな」
「与えられた環境の中でどうするかなのにね」
「生きるうえでなにが大切かを見失っちゃったのかな」
「そうかもしれないね、、、」
「もう、人間みたいの来て欲しくないね、、、」
「うん、もうあんな奴らに支配されたくないしね、、、」
彼らの口からため息がもれました。
「で、これからどうする?」
「どうしよう?」
「とりあえず人間たちがいなくなったからもう自由に動き回れるよ!」
「寝てる間に急に起こされることもないしね!」
「今日から僕たちは自由だね!」
「うん、今日から僕たちは自由だよ!」
片方のダンゴムシは体を丸め、ころころと大地を転がっていきました。
「いたっ!!」
「どうした?!だいじょうぶか?」
一匹のダンゴムシがなにかに衝突しました。
「イテテ、、、あれ?なにこれ?」
見上げると、巨大な物体がありました。
「わー!人間だ!」
一匹のダンゴムシが一目散に逃げようとするのを、もう一匹がとめました。
「ちょっと待って、これ、人間じゃなさそうだよ!」
「え、ほんと?」
「ほら、これまで見てきた人間とちょっと違うでしょ?」
「あれ、ほんとだ」
「なんか頭のカタチとか、指の数とか、いままでと違う」
「うん、違う」
2匹のダンゴムシは再び石の陰に隠れて見ていました。
「ねぇ、なんかたくさんいない?」
「ほんとだ、たくさんいる」
「こんどはこういうのが地球を変えていくのかな」
「もしかしたらそうかもしれないね、、、」
2匹のダンゴムシは憂鬱な気分になりました。
「まぁいいや、とりあえずうちらはいままでどおり石の下で丸まって寝てようよ」
「そうだね、丸まって寝ていよう!」
「うちらはダンゴムシである以上のことは望まない」
「うん、ダンゴムシでいればそれで充分幸せだね」
「それ以上はなにも望まない」
「それ以上は、なにも望まない」
2匹のダンゴムシは、再び石の下で体を丸め、眠り始めました。
PS:突然現実的な話になりますが、本日17日、名古屋のオゾンでイベントやるの
でお近くの人はぜひ遊びに来てください。
1.週刊ふかわ |2006年09月17日 10:00