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2006年05月21日

第221回「雨上がりの旅路」

「それではまた、どこかで会いましょう。今日は本当にありがとうございました」
そう言って、僕は参加者全員と握手を交わし、お別れしました。本当は握手だけでなく、全員を抱きしめたいくらいでした。
「今週末は天気悪いみたいですね」
「そうですね」
なんとなく見ていたテレフォンショッキングのタモさんがいつものように発した言葉が僕の胸に突き刺さりました。
「今週末...雨...」
天候というのは普段の行いが反映されると思われますが、このバスツアーに関しては晴れてもらわないと正直困るのでした。というのも、行く先々が屋外であり、露天風呂も露天と言ってるだけに屋根がありません。なので雨が降ってしまうとだいぶ印象が変わってしまうのです。さらに僕には不安材料がひとつありました。それは山梨との相性です。なぜか僕が山梨を訪れると降水確率が高くなる傾向があり、これまで山梨で行ったイベント13回のうち7回は雨だった気がします。それくらい、山梨に雨を降らせる男なのです。だから、天気予報でもないタイミングでの不意の雨予告は、不安だった僕を憂鬱にさせました。
「全部、俺のせいだ...」
当日の朝、目覚めるとすぐに雨が降っていることがわかりました。雨の日特有の音、アスファルトを車が通る音、屋根にぶつかる音がきこえていました。カーテンを開けると完全に雨の日の色で、僕はもうバスの中での言い訳を考えていました。
「いやぁ、雨になっちゃいましたねぇ...」
集合場所近くのビルの地下駐車場までスタッフの人が迎えにきてくれました。
「僕の普段の行いが悪いんです...すみません...」
「いえいえ、でも一応雨コースもありますし、雨は雨なりの...」
「はい...」
すっかり気分は落ち込んでいました。嫌だ!雨コースなんて絶対嫌だ!そんなことを思いながら地上へ出る階段を上っていきました。
「やばい、なんかドキドキしてきた!」
地上に出ると、みんなが乗っている大型の観光バスが見えました。近付くにつれ緊張が高まってきました。いままで味わったことの無い感覚でした。
「どうしよう、なにから話そう...」
第一声の言葉がみつからないままバスの乗り口に着きました。
「それでは、お願いします」
スタッフの人に案内されてバスに乗り込むと、みんなの顔が見えました。車内が拍手に包まれるものの、個人参加者ばかりなので、どこか不安定な空気が流れていました。
「えー、非常に微妙な天気ではありますが、今日は皆で楽しみましょう!」
確か、そんなようなことを最初に話した気がします。幸い、バスに乗車する頃はだいぶ小雨になり、なんだか今後に期待できそうな感じだったのです。
「それではせっかくなので、皆さんに自己紹介をしてもらいましょう」
といって始まった自己紹介タイムでしたが、全員ふかわマニアということもあって、僕の人生の中で最も興味深く、楽しい自己紹介となりました。
「私がふかわさんのことを気になりだしたのは、まだ頭に白いターバンをしていた頃の...」
「髪型を変えたときに...」
「なにげなく読んだ本がきっかけで...」
「ある日突然気になりだして...」
「その後、多少の浮き沈みはありましたが...」
「好きな一言ネタは...」
僕を気になり始めたきっかけは様々でしたが、たいてい周囲の反対を押し切って支持してくれていたので、ある種隠れキリシタンのような、社会的迫害を受けた者たちが一つのバスに乗っているという印象を受けました。それで一人一人に、「私とふかわの歴史」を訊いていたものだから、まだ半分も紹介できぬまま、今回の名目上の目的地、談合坂サービスエリアに到着してしまいました。次号へ続きます。

1.週刊ふかわ |2006年05月21日 11:00