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2006年02月12日

第207回「ふかわの愛した数式」

 極めてたまにではありますが、知り合いのライブに参加することがあります。といっても特に告知などをせず、いわゆるシークレットゲストみたいな感じでいきなり登場し、短時間で盛り上げて去っていくという、なかなか心地のいい役です。そんなことが先日ありまして、飛び入りでライブに参加したのです。そのライブはいくつかのバンドが出演するものだったのですが、知人に提供した曲をそのライブでやることになり、「だったら俺がピアノ弾くよ!」ということで、その曲のときだけキーボードで参加することになったのです。それにしても、生演奏はいいものです。過去に番組の企画などでバンドはやったことあるのですが、普段のDJとはまた違った快感がそこにはあります。音と音とが重なり合ってハーモニーになっていく。言葉はなくてもみんなのリズムがひとつになる。なんて素敵なことなのでしょう。出番を前にそわそわしはじめた僕は、なんだか落ち着かなくなって、裏の階段のほうに行きました。鉄の扉を開けるとそこにはたくさんのバンドの人たちが集まっていました。そのビル自体いくつかのライブハウスがはいっているらしく、上にも下にも、出番前のバンドマンたちが準備していました。それぞれに目指すところは違っても、そこにいる人たちは皆、いつか大きなステージに立ってやる、という野望を抱いているのでしょう。そんな、夢を追いかけている人たちの熱気が充満していました。
夢を追いかけることは容易なことではありません。なによりまず「勇気」が必要です。ミュージシャンになりたい!アイドルになりたい!そんな憧れを抱いても、実際に夢に向って一歩踏み出すかどうかとなると、個人差が生じてきます。夢を追いかけるか、現実的な道を選ぶかという岐路に立たされ、人は悩むものです。どちらを選択するにも勇気はいりますが、やはり夢を追いかけるほうがより大きな勇気が必要といえるでしょう。しかし、勇気が必要なのはスタートラインのときだけではありません。「勇気を持ち続けなければならない」のです。夢を追いかける途中でいつ壁にぶつかり、いつ道から外れたくなるかわかりません。一度追いかけた夢を捨てることも勇気がいります。でもやはり、追い続けるほうがその量は多いのです。夢を追いかけるということは、勇気を持ち続けるということなのです。そのために必要になってくるのが「自信」です。どんなに不安になっても「俺ならやれる!」と、自分を信じる気持ちがなければ勇気は持続しないのです。一時的な勇気ではだめなのです。夢を追いかけるには、勇気と自信が必要、というところまできました。では自信はどこから生まれるのでしょう。それはまぎれもなく、「努力」しかありません。ほんとに。努力なしに自分を信じることはできないのです。この努力も継続的なものです。一時的なものじゃだめなのです。一時的な努力なら誰でもできるからです。継続的な努力が大変だから、そこで差がでるのです。その努力を継続するための燃料になっているのが、「情熱」です。情熱がなければ努力は長続きしません。燃やす燃料がすぐに尽きてしまうのです。石油という燃料は中東などで産出されますが、情熱という燃料は「憧れ」から生まれます。それが、テレビだったり映画だったり本だったり、実際目にしたものだったり、人間はなにかに憧れるところから動き出すのです。それが最初の原動力になっているのだと思います。だから、人類は男女なのです。異性に好かれたい、というところから人類の文明は始まったんだと思います。それはそれとして、自分が将来こんな風になっていたいという理想像を頭の中でイメージし続けることで、燃料となる情熱を絶やさずにいられるのです。ここで一度整理しましょう。
何事も最初は夢や憧れからはじまり、そこから情熱が生まれ、努力するようになる。努力は自信を生み、勇気となる。それを持続させることでいつしか夢に到達する。つまり、
夢の実現=憧れ×情熱×努力×自信×勇気
どれかひとつが欠けてはだめなのです。どれか一つが0では0になってしまいます。ちなみにですが、憧れがときに、怒りだったり不満だったり、愛だったりすることもあります。
「臨界」という言葉を聞いたことあるでしょうか。おそらく物理の授業などで登場する言葉だと思います。
「物理的変化が起こる境目にあること」
ある物質に熱を加え続けると、その物質が劇的に変化する、ということです。おそらく人間にも同様のことがいえるのではないでしょうか。情熱という熱量を与え続ければいつしか劇的に変化するときがくる。すると、いままでできなかったことができるようになる。継続は力なり、なんて言いますが、ほんとにそういうことなのです。積み重ねて積み重ねて、継続することで、人間にも劇的な変化が訪れるのです。
「情熱を注ぎ続けると、やがて臨界を突き抜ける」
この言葉と上の数式を、受験生をはじめ、世に出る準備をしている人たち、今日の自分を越えようとしている人たち、自分の感性を信じている人たち、そして自分自身へのエールにかえて送りたいと思います。

1.週刊ふかわ |2006年02月12日 10:30