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2005年10月02日
第189回「アキバ系の陰謀」
結局一回も見ないまま「電車男」が終了してしまいました。僕はもともと、世間で盛り上がれば盛り上がるほど冷めてしまう性質で、「えっ、お前これも見てないの?!」と周囲に衝撃を与えるほどメジャー作品を見ていないことがよくあるのです。それはドラマに限らず、ワールドカップやオリンピックなど、国民のほとんどが熱狂しているものさえも、どこか入り込めない自分に気付いたりするのです。だから、今回こそは見なきゃだめだと思っていたのです。なんせ社会現象になっているのですから。にもかかわらず、さっそく初回を逃してしまうともう途中参加する気になれず、そのまま終了を迎えてしまったわけです。ともあれ、ドラマは大好評のうちに幕を閉じたようで、それはそれでよかったのではないかと思われます。これら一連の「電車男」ブームが、世の中の男性に勇気を与えたのかはわからないけれど、いわゆる「アキバ系」と呼ばれる人々の存在を確固たるものにしたのではないでしょうか。
それこそ「アキバ系」の男たちというのは、昔から存在しました。存在はしていたものの、彼らをどう扱っていいものか、いじっていいものなのかわからず、そっとしておいた感がありました。その頃はまだ「アキバ系」という言葉は生まれてなく、「オタク」という言葉で表現されていました。「オタク」たちは、かわいらしいキャラクターのアニメなどに情熱をそそぎ、どこか非現実の世界を生きているようにも見えました。また、シャツを微妙な色合いのジーンズの中に入れる独特のファッションが後押しし、どこかで気持ち悪がられていたのです。そんな彼らを唯一受け入れたのが、秋葉原という街でした。そこはいつでも彼らを暖かく迎えてくれました。だから「オタク」たちは常にそこに足を運ぶようになり、いつしか「オタク」たちであふれるようになりました。他の場所では完全に少数派になる彼らも、そこに行けば圧倒的な多数派になるのです。彼ら中心の街になりました。そうして秋葉原は「オタク」たちの聖地と化したわけです。
それからインターネットが普及し、誰もがパソコンを持つようになると、社会の風向きが変わりました。一般の人も秋葉原へ足を運ぶようになるのです。そして、パソコンを購入しに秋葉原へ行く人たちは皆、こう思いました。
「秋葉原にいる人たちってなんか気持ちわりぃな...」
このときすでに、彼らが世の中で頭角を現し始めていたのです。世の中が気になりはじめると、もはや彼らのことを放っておくことはできなくなってしまったのです。
「あの、秋葉原の人たちは一体なんなんだ...」
そうして「秋葉原に人々」は「アキバ系」という言葉に変貌し、「オタク」にとって代わることになりました。これまで、「渋谷系」だ「裏原系」だと、なにかにつけて「系」でブームを表現されてきたように、「アキバ系」と称されたのは、社会に認められたことを証明しているわけです。「アキバ系」がカルチャーとして承認されたのです。ということは、もはや弱者ではなくなり、彼らをいじることが解禁になるのです。コントなどで彼らを面白がるのはそういうことです。彼らのキャラクターを楽しんでいいんだし、彼らも自分自身のことをわかっているのです。そうして2005年、遂に人気ドラマの主人公になるに至ったのです。しかし、彼らのピークはここではないのです。では、この先どうなるのでしょう。
まず、「アキバ系」の代表者が出馬します。アキバ党を設立するのです。もはや、アキバ系の人口というのははかりしれないものになっているわけで、彼らの中から議員になる者がでて然るべき状態になっているのです。この前の選挙でも、「アキバ系」の立場を代表する人を擁立していればさらに議席を増やせたことでしょう。とにかく、彼らの代表者が政界に参入するのです。メイド喫茶の店舗拡大のために。そして彼らは、「秋葉原独立運動」を行うようになるのです。「アキハバラ」というメイド喫茶だらけの独立国家です。そうして彼らは彼らにとって快適な世界を築きあげるのです。独立国家となった「アキハバラ」は、やがて領土拡大のために、日本を侵略するようになります。ウイルス作戦により、日本中の情報を錯乱させ、自滅に追い込むのです。そうして北海道から沖縄まで、日本は「アキハバラ」の支配下に置かれるのです。当然彼等の次の矛先は海外に向けられます。日本だけでなく、海外にもメイド喫茶を設立させるためです。彼らはまるで「猿の惑星」の猿たちのように、世界を侵略し、征服しようと企むのです。ではなぜ、世界を征服するのでしょう。
なぜなら、彼らは宇宙人なのです。彼らは何十年も前から「オタク」という姿で地球に潜んでいる、宇宙からの使者なのです。前々からうすうす感じていたのだけど、きっとそうなのです。だから秋葉原には宇宙のどこかの惑星と交信する場所があり、そこで情報交換を行ったりしているのです。おそらくそれがメイド喫茶なのです。「アキバ系=宇宙人」、そんな風に考えると、彼らのことがまた興味深く思えてきます。今後の「アキバ系」の動きに期待したいものです。
1.週刊ふかわ |2005年10月02日 10:45