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2005年07月31日

第180回「あの頃のように」

「ジョギングは夏に始めるとよい」
これは、ふかわ語録の2735番目の言葉です。冬の寒い時期にジョギングをしてもなかなか汗が出てこないため、燃焼している感じがなく、達成感、充実感、満足感、どれをとっても物足りないのです。それに比べ夏の暑い時期は、ただでさえ汗がじんわりしてるっつーのに、ちょっと走ったりなんかしちゃったら、そりゃぁTシャツが透けてしまうほどに、体中の毛穴から汗が噴き出してくるので、「いいぞいいぞ!俺、がんばってるぞ!」という充実感につながるのです。しかも、走り終わって家でぬる目のシャワーなんか浴びちゃって、そのあとにビール(僕は飲めないからオレンジジュース)を一気に流し込んだりでもしたら、その爽快感が病みつきになり、明日につながったりするのです。だから、もしジョギングを始めるのであれば、じっとしているだけでも汗がにじむ、今くらいの暑い時期がいいのです。実際僕が、走り始めてから一ヶ月くらい続いているのも、この爽快感のおかげでしょう。
「いったい俺はいま何キロなんだ?」
体型に緊張感がなくなり、常に顔がむくんだ感じになってしまった僕は、現状確認のためにまず体重計を購入しました。最近の体重計はかつてのような、目盛りが回転して数値を表すタイプではなく、液晶画面でデジタル表記が一般的です。しかも自分のデータを入力すると、体重だけでなく体脂肪や骨格筋率なんかもわかっちゃうので、もはや体重計でなく、ヘルスメーターと呼ばなければならないのでしょう。
「な、ななじゅうに?!」
それまでずっと57キロだった僕の体重は15キロも増加していました。ある程度増えてるだろうと予想していたものの、まさかの70越えだったため、さすがに困惑せずにはいられませんでした。しかもカラダ年齢は33歳と表示されました。
「ちょっと待ってよ、なんでなんで!?これぶっこわれてんじゃないのぉ?!だいたいカラダ年齢ってなんなんだよ、俺は誰がなんと言おうと30歳だよ!」
デジタルの無機質さは、ときに人を傷つけます。
「なんでだよぉ、だって確かに運動不足ではあるけど、お菓子だって一日一袋くらいしか食べないし、アイスだって毎日ピノを食べてるくらいだし、寝る前だってベビースターとか果汁グミとかしか食べてないし、休みの日だってなるべく家にこもってるし、、、おかしいよ、こんなに太るなんておかしいよぉ、、、」
太らない方がおかしい生活をしていました。お菓子などの間食が多いのも原因のひとつですが、やはり最初の突破口は以前番組でやった「まんじゅうだけで一週間」という企画でしょう。この生活がおそらく、体型を維持する緊張の糸を切ったのです。その後、タバコをやめたことも関係してきます。「タバコをやめると太る」なんてことをよく耳にしますが、たしかにタバコというストレス解消の道具を失うと、どこかでそれを補わなくてはならなくなるのです。それが食事に傾くケースは稀でなく、僕も、いつのまにか3食しっかり食べ、食後の一服の代わりにデザートのマンゴープリンを、仕事帰りのコンビニでタバコを買う代わりにベビネロを買ってしまうようになったのです。それでも10代の頃のように運動に燃えていれば脂肪もつかなかったのだろうけど、休みの日は12歩くらいしか動かないような生活なので、完全に供給過多になってしまったのです。
「これじゃそのうち80キロになっちゃうな、、、」
実際、おじさん体型っておもしろいなぁなんて思う時期もありました。仕事上、自慢の裸体を披露する機会があるのですが、その、お腹がぽっこりした、ラ・フランスのような体型は、恋愛においては不利でもバラエティーでは有利だったりします。そんな思いが余計に、僕をファニー体型にさせていました。しかし、僕はふと感じたのです。
「ちがうじゃないか、そんなの俺じゃないんだ!そもそも俺はタイトなスーツしか似合わなかったじゃないか。なのに最近はチャックが途中でとまってしまう、そんなの俺じゃない!そんなのもやしっこの恥だ!あの頃の、あの頃のシャープさを取り戻さねばぁー!」
それで、走り出したわけです。あの頃のシャープさを取り戻すために、陸上部だった僕は、十数年ぶりに走り出したわけです。時間があいたときに近所の並木道をTシャツ短パン姿で走るようになったのです。想像以上に体は重く、ウォーキングを随所に織り交ぜながらではあるものの、どうにかほぼ毎日走るようになったのです。だから、ピーク時に比べ、やや全体的にむくみがとれてきた気がします。寝る前のお菓子とか、毎日のアイスを控えるようにもなり、完全復活とはいかないまでも、徐々に余分な脂肪が消滅してきたのです。
「やっと実際の年齢になったよ」
ようやくカラダ年齢も30歳になり、日によっては27歳になったりします。毎日体重をはかり、毎日ジョギングすることがすっかり日課になったのです。するとですね、ひとつわかったことがあるのです。人間の体というのは、「疲れさせたほうが、疲れない」のです。矛盾しているようにきこえるでしょう。あえてそうしたのです。つまりこういうことです。
「俺は、ジョギングなんてかったるいことやってらんねえよ」って思ってなにもやらないでいると、かえって日常がかったるくなってしまうのです。ジョギングじゃなくてもいいのですが、汗かいてくたくたになるような運動をすると、未来はかったるくなくなってくるのです。平日会社で疲れているお父さんは休みの日こそ家族で公園をジョギングした方が、翌週元気だったりするのです。たしかに日課にすることはなかなか容易ではないのですが、それが当たり前になると、むしろサボることに罪悪感が生まれるようになり、走ることが日常になってくるのです。個人差はありますが、人間の体はある程度使っている方が、疲れないのです。
「がんばれ、がんばれー」
年配の人は、走っている人を見ると応援したくなるのでしょうか。庭先で草木に水をあげるおじいちゃんやおばあちゃんは、走っている僕を見てそんな声援をくれます。当然、僕のことなんて知りません。木々の間から差し込む朝の光を浴びながら走るのはとても気持ちがいいものです。なんか幸せな気分になれるのです。こんなことを言ってしまった以上、すぐにやめるわけにもいかなくなりました。画面で伝わるくらいシャープにならなくてはいけなくなりました。こうやって自分を追い込むことも、継続する秘訣だったりするのです。みなさんも、ぜひやってみては。

1.週刊ふかわ |2005年07月31日 10:55