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2005年07月10日
第177回「のび太くんにはわるいけど」
「ここは...どこだ...」
目を覚ますと僕は車の中にいました。いま自分がなぜ車内にいるのか、どこに行こうとしていたのかを考えようとしても、なかなか頭が働いてくれません。
記憶がよみがえってこないのです。
「...えっと...俺はなにをしようとしてたんだ...」すると、窓ガラスを叩く音が聞こえてきました。おそらくさっきから叩いていたのだろうけど、意識を回復したばかりだったため、パソコンの立ち上げのように、視覚や聴覚が機能するまで時間がかかってしまったようです。振り向くと、女の人がガラス越しに中をのぞき込んでいました。
「ちょっと、だいじょうぶ?お兄さん?!」
なにやら高速の料金所のおばちゃんのような人がガラスを指で叩きながら声を掛けています。
「...まさか...」
はっとなって前をみると、30メートルほど先に、まさに高速道路の料金所が見えました。
「ちょっとちょっと、お兄さん、起きた?!」
相変わらず窓ガラスを叩いています。徐々に記憶がよみがえってきました。
「...たしか...高速をおりて...」
料金所にさしかかり、スピードを緩めました。
「ったくなんでこんなに混んでるんだよ!」
最近はいつのまにかETC専用のゲートのほうが多くなり、現金払いのゲートだけが混んでいたりします。そのときも中央に3つ行列ができていました。
「それでも俺はETCなんてつけないぞ!」
そう思ってサイドブレーキをかけました...。そこで記憶が途切れました。まだ僕の車の前に10台ほど並んでいて、サイドブレーキをかけたところで意識がとんでいたのです。
「じゃぁ、ブレーキをかけたあと一瞬にして眠ってしまったということ
か...」
それ以外に考えられませんでした。しかし、辺りを見渡すと、前にも後ろにも車はなく、3列のうちの両端だけが長い列をなしていました。
「...ということは...」
散々クラクションを浴びているときも気付かないでいたことになります。僕は周囲に多大な迷惑をかけながらも、すっかり別の世界で眠っていたのです。なんとなく状況を把握してきたところで僕はウインドウをおろしました。
「ちょっとぉ、お兄さん!だいじょうぶ?運転できる?」
本来なら怒られて然るべき行為だったのかもしれないけど、そのおばさんは僕の体調を気遣ってくれました。
「あ、すみません。だいじょうぶです!」
「もうどうしたのかと思ったわ!ずっと停まってるからぁ...」
「ほんとすみません...ちなみにですけど、僕どれくらいここにいたんですか?」
こういうのって一瞬の出来事だったりします。
「えーっと、10分くらいかしらねぇ。もしあれだったら、あそこで休んでいきなさいね」
そう言うと、おばさんは自分の位置にもどり、ゲートの信号が青になりました。僕はまだ少し頭がぼーっとしたままサイドブレーキをおろし、そのゲートを抜けていきました。
「10分かぁ...」
たしか、のび太くんは3秒で眠れるという、誰にも負けない特技があったとおもいます。のび太くんには申し訳ないけどたぶん、そのときの僕は、何秒とかそういうことじゃなくって、まさに一瞬にして眠りの世界へと突入してしまったのだと思います。サイドブレーキをかけたと同時にぐわーっと落ちてしまったのです。フットブレーキだったらきっと気付かぬうちに足が離れ、前に突進していたかもしれません。そう考えるとサイドブレーキをかけていたのがある意味、不幸中の幸いだったのかもしれません。
低血圧だとか、寝不足だとか、原因をあげればそれらしいことはいくつかでてくることでしょう。ただここで言いたいのはそういうことではありません。今回一番伝えたいのは、「俺は眠いときはものすごく眠いのだ!」ということなのです。いわゆる一般的に使用されている「眠い」どころの話じゃないのです。その数十倍もの「眠い」状態に陥るのです。「すごく眠い」のです。以前から思っていたのですが、僕は「ベースが眠い人間」なのです。ベースが眠いというのはつまり、そもそも眠い、眠くてあたりまえ、ということで、眠くない時なんてたまにしか訪れないのです。あの人いつも眠いのによく頑張ってるわ、ということなのです。だからいつの日か、眠さを計る機械ができたらいいのにと思います。授業中居眠りしてても、すぐには怒られないのです。ちゃんと機械で計るのです。「97ネムイもあるじゃないか。すぐに保健室行って寝てきなさい」みたいになるのです。そんなことを考えてる僕は、「ベースが眠い人間」とかの前に、単に「自分に甘い人間」なのだろうか。
ブログの方、文字を大きくしてみました。
1.週刊ふかわ |2005年07月10日 11:00