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2005年02月13日

第157回「ささやかな反抗」

「あんまりネタにしないでよ!」

彼の口からこの言葉が出てきたことによって僕は、週刊ふかわのネタにしようと心に決めたのでした。

 幼少時代から、どこか権力に対して反感や敵意を抱いているタイプだったから、社会の権力者達が私腹を肥やすという報道があれば人並み以上に腹が立ち、昨今のニュースに見られる権力を振りかざした悪行に対しては、いつかどうにかしなくてはと常日頃から思っているのです。権力はろくなことをしない、わけです。だから、自分がその権力の剣を抜かれる対象にでもなれば、その巨大な権力に対してどうにか一撃を喰らわしてやりたいと思うのも当然なのです。

「はい、そこの原付!ちょっとこっち来て!!」

道路わきに立っていた警官が僕に呼びかけていました。僕は状況を把握できないもののなんとなく不安を抱きながらその警官の前で原付を停めました。

「じゃぁ免許証見せて」

「いや、あの、なんですか?」

「いいから免許証」

僕はしぶしぶ免許証を取り出しました。

「あの、なんか違反とか、そういうのですか?」

「そう。じゃないと停めないでしょ」

すでにこの段階で僕は理性と戦っていました。

「ふかわりょうって、あのテレビに出てる人?」

「あ、そうですけど...」

「やっぱりそうかぁ!似てるなぁと思ったんだよ」

「それで、僕がなにか...?」

「ふかわさんね、いまあそこから出てきたでしょ?」

ようやく説明が始まると、彼は数十メートル先のT字路を指しました。

「はい、そうですけど...」

「あそこね、ウキンなの、知ってた?」

「ウキン?」

「そう、右禁」

「ウキンって...?」

「右折禁止!!」

「あっ、その右禁...いや、知らなかったですけど」

ただでさえ略すことが嫌いな僕は、右折禁止を右禁という警官の顔がムカついてしょうがありませんでした。

「知らないにしてもね、あそこは右禁だから、違反には変わりないから」

「はい、わかりました、すみませんでした...」

僕は、原付だし、注意で済むのかと思いました。

「じゃぁ、切符きっとくから」

「えっ?これで、切られちゃうんですか?!」

「そうだよ、違反だもの」

「いや、そうですけど...ちなみに」

「点数は2点ね」

「2点?!原付で右折しただけで...」

「そう、2点」

「いや、ちょっと待ってくださいよ!だって知らなかったんだし!!」

警官の人柄や、この流れになってしまうとなにを言っても無駄だというのはわかっていました。ただ、その2点によって免許停止になることは以前に調べてわかっていました。それだけに、しかも原付でその処分を受けることは、なんとしても避けたいことだったのです。

「あの角はねぇ、右禁なのに右折しちゃう人が多いんだよ。それでここで見張ってるんだよ」

「なら、違反するのを見張るんじゃなくって、違反しないようにあっちに立ってればいいじゃないですか」

無駄とは思いつつも、簡単に引き下がるわけにはいきませんでした。

「それだと警官が立ってないときは右折してもいいってなっちゃうでしょ?」

「安全とかじゃなくって単純に違反者を見つけたいだけじゃないですか!」

そう言いながらも、気持ちは、免許停止を受け入れる体勢になろうとしていました。

「これで僕、免許停止ですよ...」

青い紙にサインをすると、免許証が返されました。

「まぁでも、講習受ければ短縮されるんでしょ?」

「短縮って、どれくらいなんですか?」

「えーっとねぇ、たしか...僕も交通専門の警官じゃないからよくわからないんだけど...」

「え“―――――っ!!ならお前こんなとこで取締りとかやってんじゃねーよぉーーー!!!」と心の中で大きく叫びました。「ネタにしないで」と言われたから僕は、こうして書いてやりました。僕の精一杯の反抗というわけです。そして僕は、ますます略すことが嫌いになりました。

1.週刊ふかわ |2005年02月13日 10:00

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