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2005年01月16日

第154回「ボンジュール!!」

「すみません、なんか飛行機遅れちゃって!」

大きなスーツケースを引きずりながら出てきた僕を迎えてくれたのは、美恵子おばさんと、その旦那さんでした。

「もうなかなか出てこないから心配しちゃったわ」

「スイスの空港で乗り換えのときにアナウンスがなにか言ってたんですけど、あんまり聞き取れなくって、、、」

「そうだったの。あ、亮くんね、この人が私の旦那さんよ」

「ボンジュール!!」

「あ、ボ、ボンジュール!!」

美恵子おばさんの旦那さんである、ジャン・ジャックさんと握手を交わしました。

2005年1月2日、現地時間で20時を少しまわったところ。シャルル・ド・ゴール空港は多くの人たちであふれていました。僕は、正月の休暇を、フランスで過ごすことになったのです。

 そもそも僕は、お正月休みに海外に行く、という芸能人らしいことを経験したことがありませんでした。というのも、自分自身で、30歳になるまでは「事務所にわがままを言わない」と決めていたからです。いくら正月であっても、プライベートよりも仕事を優先させるためです。そんな僕もようやく30歳になり、芸能生活10周年を迎え、そろそろ海外旅行くらい行ってもいいんじゃないかと思うようになったのです。それでマネージャーに、「年明けなんだけどさぁ、ちょっと海外に行きたいからさぁ、この日まで休ませてもらえないかなぁ?いいよね?いいよね?」という感じでアプローチしたわけです。そうでもしないと、中途半端に仕事がはいり、まとまった休みがとれなくなってしまうからです。

「そりゃハワイとか行ったら最高よ!青い海、青い空、なにもしなくっていいのよ!ただボーッとしてるのが芸能人のお正月ってわけよ!」

晴れて休暇を勝ち得た僕は、お正月にどこへ行くべきか番組の共演者に相談しました。するとたいてい、「ハワイは一度行っておけ」「寒い冬には暑い国に行くもの」という、ハワイ、グアム、サイパン、オーストラリアらの南国系を勧める回答ばかりが返ってきました。特にハワイは、なんだかんだ「芸能人=ハワイ」という定説ができるだけのことはあるらしく、行ったことのある人から「ハワイ否定論」を聞くことはありませんでした。

「やっぱりハワイなのかなぁ、、、」

と、心の中でぶつぶつとこぼしながら書店に立ち寄った僕は、気付くとフランスのガイドブックを手にしていました。

「だめだ!どうしても意識がヨーロッパに向ってしまう!どうしたらいいんだ!やはり僕は、暖かい国よりも歴史や芸術を感じれる国に関心があるのだろうか!僕はやはり芸術家タイプなのだろうかー!!」

共演者の意見を無視することに抵抗を感じながらも、僕はヨーロッパの国々の本ばかり立ち読みしていました。

「結局フランスに行くことにしました!」

「なんだよお前!あれだけみんなで南国を勧めたのに!」

収録前の楽屋で集中攻撃に遭いました。

「はい、そうなんですけど、やはりどうしてもアートの世界に興味がいってしまうっていうか、自分には嘘がつけないっていうか、、、」

「なんだよお前、腹立つなぁ!じゃぁハワイとか行ってるウチらがアホみたいじゃんかよ!」

「そういうんじゃないですよ。ただ、僕って昔からヨーロッパに対する憧れがあったんですよ。やっぱりピアノを習ったころから、、、」

ヨーロッパに対する憧れの話が始まると、共演者のシャッターが一斉に閉じられました。こうして、共演者の助言を聞いたうえで、僕はお正月の海外旅行に、フランスを選んだのです。エロDVDが日ごろのご褒美なら、これは10周年のご褒美です。

「いやぁー、やっぱりフランスってかんじですねー!!」

ジャン・ジャックさんの運転する車の中で僕は、フランス的な物体をまだひとつも目にしていないにも関わらず、ひとり興奮していました。

「亮くんおなかは空いてる?もし空いてるんだったら、、、」

「いや、もう機内で4食くらい食べた気がするんで今日は大丈夫です」

「じゃぁとりあえずホテルに行きましょう」

その旨をジャン・ジャック氏に伝えました。叔母が流暢にフランス語を話しているのは、少し不思議な感覚でした。ちなみに、美恵子叔母さんとは、僕が小学生の頃、おばあちゃんちに行ったときによく遊んでもらいました。僕がこの仕事に就いた頃にはもうフランスに住んでいたために、母の言葉からしか、僕の活動状況は伝わってなかったと思います。

「それにしても綺麗だなぁ、、、」

フランス的なものはないにしても、街頭や看板などの明かりは、どこか日本のそれと違い、ロマンチックな気がしました。

「あっ!もしかしてあれは!!」

空港を出て40分くらいでしょうか。徐々に中世の建築物がちらほら見られるようになって来た頃、僕の目の前に、フランスのシンボルであるエッフェル塔が現れました。わりとこじんまりしているのだろうという僕のイメージを裏切るように、それは大きく、悠然と立っていました。

「あと5分くらいで光るわ」

「え?エッフェル塔が、ですか?」

ニューイヤーの時期になると、夜は毎時10分間、キラキラ輝くということでした。といっても、すでに光っているわけで、僕には、何が起こるのかわかりませんでした。

「うわっ!なんだこれは!!」

突然、エッフェル塔がキラキラと輝き始めました。なんというか、巨大なダイヤモンドのように、全身がキラキラしているのです。また、周囲に高い建物がないために、より一層大きく、美しく見えました。

「これはすごいなぁ!!」

キラキラしたエッフェル塔をバックに写真を撮った僕は、フランスにいれる数日間への期待で、胸を膨らませました。次週へ続く。

1.週刊ふかわ |2005年01月16日 09:30

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