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2005年01月14日
第153回「新たな時代へ」
「というわけではじまりました!、、、というわけではじまりました!」
スーツに着替えた僕は、本番を間近に控え、ウーロン茶を何度も口に含ませては、台本の言葉を復唱していました。
「さっきから同じところばっかりじゃないですか」
そばにいた番組の作家さんが見るに見かねて言いました。
「いや、この最初が肝心なんだよ!ここをクリアすればあとはどうにかなるんだよ!」
そう言って、再びお経を唱えるようにセリフを繰り返しました。
普段バラエティー番組に出る際、セリフを憶えて出るということは滅多にありません。台本こそあるものの、ドラマのそれとは大きく異なり、それはあくまで大まかな流れの台本であって、その通りに進むとは限らず、そこに書かれたセリフに関してもあくまで想定にすぎなかったりするのです。だから、本番前にさっと目を通すことはあっても、セリフを暗記するようなことはないのです。なのに、その日の僕は台本を手放しませんでした。トイレに行くときも着替えるときも、目の届く範囲に置いていました。もっというと、3日前くらいから僕の手元にあったのです。その台本に目を通し、事前に体内に叩きこんでおいたのです。なぜなら、今までにない形でバラエティー番組に出演することになったからです。もうお気づきのことでしょう。そうです、司会です。MCです。マスターオブセレモニーです。厳密に言うと、完全なる初司会というわけではないのですが、民放バラエティー界においてはおそらく、ふかわ初司会番組、ということになるのです。
司会を務めるということは、番組を進行することであり、番組の形を作ることでもあります。だから、どんな番組にもたいてい司会という立場の人が存在し、その人の個性で番組のテイストも変わってくるのです。自分を一番面白くする司会者もいれば、周りを引き立てる司会者もいます。司会者の比重が重い番組もあれば、その逆のケースもあります。いずれにしても、司会者の存在は大きく、番組の顔であることは否めないのです。その「司会」という重要なポジションを与えられたことは、小学生の頃から責任感の強い子供だと通知表に必ず書かれていた僕からしてみれば、これまで番組に出演してきた時の何百倍もの任務を与えられた気分になるのです。当然、これまでも、それなりの責任感を持って番組に臨んでいました。いじられる側にはいじられる側なりの責任感があったのです。しかしながら、ピッチャーを務める人とライトを守る人の違いというか、言ってみれば、自分のところに球が飛んできたときに頑張ればよかったのです。よきところで、「ちょっと待ってよぉー!!」と叫んで、はいり込めばどうにかなったのです。特に最近は、「コラーッ!!」「ちょっとちょっとー!!」「おかしいおかしい!!」といった、3種の言葉でたいていのふかわ業は果たせていました。しかし、司会という業種は、それらの言葉は役に立たず、冒頭のような、「というわけで」とか「はいっ!」「さて!」「それでは!」のような、展開の節目となるような言葉がメインになってくるのです。で、僕に関して言うと、「コラーッ」は20パターンあっても、そういった仕切りの言葉は何年と発していなかったのです。言い慣れない言葉なだけに、何度も発音しておきたかったのです。そんな僕に司会という重要なポジションを与えてくれた番組制作サイドは、ある意味リスクを背負って賭けにでたようなものです。
「お待たせしましたぁ、まもなく本番になりまーす!!」
楽屋にスタッフが連絡に来ました。僕はスーツの上着をはおり、ウーロン茶を口に含むと、台本を握り締めました。そして鏡の中の自分に、「よし!どうにかなるさ!」的なことを心の中で言いました。
「というわけではじまりました!というわけではじまりました!」
階段を上りながら、何度も口にしていました。
「だいじょうぶですか?というわけでを練習してる人、はじめて見ましたけど」
周囲のスタッフが、僕の緊張を楽しんでいるようでした。
「それでは本番10秒前!8、7、6、、、」
数が少なくなるにしたがって鼓動が激しくなります。
「3、2、1!!」
というわけで、その模様は実際の放送で確認してもらうのがいいでしょう。来る12月30日、フジテレビ深夜1時15分から2時15分放送の「やぱんすか」という番組です。スウェーデン語で「日本語」という意味らしいです。この時期によくありますが、特番と言って、レギュラー番組になる前の段階です。ちなみに全国放送ではないので、オンエアしないところはごめんなさいね。見たらわかると思いますが、キーワードは「いじられ進行」です。これがおそらく僕にしかできないスタイルなのかもしれませんね。さぁ、2005年は司会業をこなしていくぞ!!よいお年を!!
1.週刊ふかわ |2005年01月14日 21:28