« 第870回「うたたねクラシックin福岡・宮崎⑤」 | TOP | 第872回「新しいリズム」 »
2021年03月29日
第871回「愛おしい沼」
「この後、土居さんが来るので、ちょっと待っててもらえますか?」
「ひるおび!」の放送終了後、いつもなら着替えてすぐに楽屋を出るのですが、チーフ・マネージャーが来るから待っていて欲しいとのこと。些細な報告であれば現場マネージャーからの伝言で済みます。私は、何かあるなと思いながら到着を待ちました。
「5時に夢中!の件なんですけど」
予想は的中しました。ただ、あまり深刻な表情をしていないように見えます。
「4月からバラダンを担当して欲しいということで。5時に夢中!はで卒業になります」
人によって伝え方はまちまち。先に「卒業」を話してから新天地の話をする者、先に新天地を話してから「卒業」に触れる者。昨年12月のことでした。
2012年4月から9年間。最初は月曜から木曜日、途中金曜も担当し、ここ数年は月曜から木曜のシフトで固定していました。この間に、スタッフをはじめ、出演者もアシスタントMCも変わりました。アシスタントMCは、指揮者とコンサートマスターのような関係でしょうか。いつかこの日が来るとは思っていましたが、大きなコロナの波と一緒にやってきました。
波にもまれながらも、ささやかな出来事がたくさん詰まった9年間。毎日、こんなに笑顔だった日々はあったでしょうか。もちろん、いつまでも続けたいと言う気持ちはありましたが、私を起用してくれた方による判断なので、それに争う気持ちは一切ありません。
4月1日より、21時の生放送、「バラいろダンディ」という番組に移ります。新天地があることはとてもありがたいこと。ましてや日勤から夜勤というように、同じ場所に勤めるので、「5時に夢中!」を離れることに対する寂しさは若干薄まります。本来であれば、単なる卒業でお別れするケースもあったかと思うと、あらためて大川局長の愛情に感謝です。
9年間の日常のリズムから、新たに始まるリズム。どんなメロディーが流れるのでしょうか。
スタッフ、共演者、視聴者の皆さんに支えられ、今日まで来ました。皆さんに育ててもらいました。「半蔵門のタモリ」は浸透しませんでしたが、決して綺麗とは言えない床の上で、私は育ててもらったと実感しています。この汚い沼だからこそ、人は育つのかもしれません。これほど愛おしい沼はありません。
そうして迎える最終日。私はいつものように笑って終わりたかったのですが、やはりダメでした。視聴者の方が画面に映ったとき、涙腺はたちまち崩壊。でも、愛情たっぷりに作られたVTRや、涙を流す共演者たちに囲まれて、とても幸せな卒業式になりました。
この9年間は私の人生の宝物です。これからまた、新しい宝物を探したいと思います。新たな船出。皆さんも、新しい夕方と夜の景色をどうぞ楽しんでください。長い船旅にお付き合いいただき、ありがとうございました。
2021年03月29日 07:59
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.happynote.jp/blog_sys/mt-tb.cgi/330