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2021年03月22日
第870回「うたたねクラシックin福岡・宮崎⑤」
ポスター・カラーのマジックを振る時のような、シャカシャカ、カラカラという音が、人の少ない空港のロビーで鳴り響いています。何事かと見回せば、最近担当になったばかりの女性マネージャーが、カクテルを作るバーテンダーのように、筒状のものを振っています。
「ねぇ、それ、何?」
「あ、これですか?プロテインです」
なぜこのタイミングでプロテインを摂取しようとしているのかわかりませんが、日課にしているようで、リュックの脇にはいつもその筒が常備されていました。そうして「めんべい」とプロテインとともに宮崎へ飛び立ち、到着すると、どんよりとした空から重たい雨が降っていました。
宮崎県は、「きらクラ!」の公開収録で都城へ、また、クラブ・イベントでもよく訪れていました。緊急事態宣言の福岡に比べ、街は賑わっているようにも見えます。チェック・インを済ませると、みんなで地鶏でも食べに行きたいところですが、うどんを食べに行く者、買い物に行く者、部屋で「めんべい」を食べる者、プロテインを飲む者、三々五々で過ごし、翌日の本番に備えました。
「今日はよろしくお願いします!」
うたたねクラシックでは初となる宮崎の会場は、300人ほど収容できるホール。もちろん、間隔を空けての開催となります。一度、福岡で終えていることもあり、皆、力も程よく抜けて、朝から和やかムード。緊張感よりリラックス。ナビゲーターも心に余裕が出てきたのか、いけないアイディアが浮かんでしまいます。
「場内アナウンス、やってもいいですか?」
本番前のアナウンスは現地の会場スタッフが通常担当するのですが、会場を和ませるためにダメもとで相談してみました。
「いいですね!やりましょう!」
まさかの快諾を得て、本番を迎えることになりました。
「本日は、うたたねクラシックへお越しいただき、誠にありがとうございます。本番開始に先立ちまして、お客様にご連絡があります」
客席は一杯になっていました。
「では、ここで皆さんにお尋ねします。本番までの数分間。じっと待っていますか?それとも、ナビゲーターのピアノを聴いてお待ちになりますか?」
すると、会場から拍手が笑い声と拍手が湧いてきました。どの段階で気づいたのか、狙い通りの展開に。
「よし、じゃぁ行こう!」
そしてアナウンス用のマイクを置くと、パジャマ男はステージに飛び出しました。雨のような拍手を浴びてピアノの前で一礼。もちろん曲は「トロイメライ」。昨日よりもリラックスして弾けた気がします。
「昨晩はおだまきっていう、うどん屋さんに行きまして」
「おだまき三姉妹による演奏です」
「音色にもダシが効いていましたね!」
「マキシマムっていう、宮崎にしかない調味料を買いに行きました」
「スパイスが効いていましたね」
「あの蝿は、チケット購入してないですよね」
以前の霧島でも感じたのですが、大きなホールは大きなホールの、小さなホールは小さなホールの良さがありますが、後者は距離の近さからくる熱量を体感できます。演奏家のトークもエンジンがかかり、終始和やかな雰囲気で、プログラムは終了。アンコールの「WATZ IN AUGUST」もたっぷり孤独に浸ることができました。
「また、会えると信じています。本日はありがとうございました!」
初めての宮崎公演。お客さんのおかげで、とても楽しいひと時となりました。
「ほんと、小劇団みたいなノリでしたね!」
「そうですね、うたたね劇団」
演奏家の皆さんも満足して会場を後にします。福岡も宮崎も、それぞれその瞬間にしかない音がありました。
「プロテインは、いいの?」
「今は大丈夫です」
次はどこで開催できるかわかりませんが、全国に大きなゆりかごを作りたいと思います。
2021年03月22日 07:58
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