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2020年07月17日

第838回「ニュー・シネマ・パラダイス」

 

 初めて映画音楽というものを意識したのはいつだったでしょう。子供の頃見た映画では、あまり関心を寄せていなかったと思います。高校生の頃、学校帰りに地元の駅で安く売られている3枚組映画音楽コンピを買ったことは覚えているのですが、きっとその中に聴きたい映画音楽があったのだと思います。

「スターウォーズ」「インディージョーンズ」「スーパーマン」泣く子も黙るジョン・ウイリアムズの作品こそ有名な映画音楽ですが、そういった躍動感のある激しいものよりも、どちらかと言うと穏やかでムーディーな曲が好きでした。

「太陽がいっぱい」「サウンド・オブ・ミュージック」「ムーン・リヴァー」「黒いオルフェ」「the shadow of your smile」「追憶」「夏の日の恋」

 あげればきりがありませんが、前述のSFものとは世界観が違います。人の心を揺さぶる叙情的な音。映画のために作られた場合と、もともとあった曲が劇中で使用されるケースとありますが、映画のタイトルを見ただけで、そのテーマ音楽が頭の中で流れるほど、作品とは切っても切れない存在。映画にとって音楽は、観る者の心に迫る、とても重要な役割を担っていることは言うまでもありません。

 もともと映画を広めるためだったのかもしれませんが、結果的に、映画音楽が有名になり、世界のスタンダード・ナンバーになっているものも多いです。ジャズ・アレンジされたり、時代を超えて多くのアーティストにカヴァーされているので、もともと映画音楽だと知らずに聴いている場合もあるでしょう。映画を見ていなくても、その音楽は馴染みがあると言うケースも。

 ビールのCMで耳にする曲は、1960年のアメリカ映画「日曜日はダメよ」の主題歌。「ブルー・ムーン」を手がけたリチャード・ロジャースのミュージカルソング「私のお気に入り」をJRのオリジナルソングだと思っている人もいるくらいですから、映画音楽と知らずに耳にしている方も多いと思います。

 私が最も聴いている映画音楽はおそらくパーシーフェイス・オーケストラの「夏の日の恋」だと思います。しかし、肝心の映画「避暑地の出来事」はまだ観ていません。むしろ、私の人生のサウンドトラックになっています。数々の映画音楽を演奏しているパーシーフェイス・オーケストラは、オーケストレーションが素晴らしく、華やかな音で心を豊かにしてくれるのです。

 タワーレコードやHMVで貪るように音楽を探していた18歳の頃。カテゴライズされていないCDたちの近くにはサウンドトラックのコーナーがありました。イージー・リスニングと呼ばれていた作品は、オリジナルが映画音楽だったりするので、サウンドトラックと表裏一体な感じです。

 現在、部屋のCDラックにもサントラブロックがあり、そこには「黄金の7人」「ピアノレッスン」などが並んでいます。映画を観て購入したものもあれば、作品は観ずに音楽だけを買ったものも。音楽が映像以上に語り、脳を刺激するので、「ベティー・ブルー」「エターナル・サンシャイン」で使用されている音楽で、たちまちスクリーンの世界に入り込むことができます。そして忘れてはいけないのは「ニュー・シネマ・パラダイス」のサウンドトラック。

 巨匠エンニオ・モリコーネの作品。彼が音楽を手がけた映画で言うと他に「マレーナ」や「鑑定士と顔のない依頼人」は何度も見ていますが、モリコーネを象徴するのはやはり「ニュー・シネマ・パラダイス」ではないでしょうか。これほど「愛」が詰まった音があるでしょうか。テレビでも頻繁に流れるので、おそらくほとんどの方が耳にしていると思います。ツナのおにぎりを食べられないのと同じで、この曲も好きすぎるが故に、ちょっとしたドキュメンタリー番組などで使用されていると、すぐにチャンネルを変えてしまいます。別の映像で上書きしたくないのです。

 私が「ニュー・シネマ・パラダイス」を見たのは20歳くらいだったでしょうか。映像の美しさ、トトの可愛らしさもありますが、グイグイ引き込まれたのはやはり、モリコーネの曲の力。「ニュー・シネマ・パラダイス」はモリコーネのミュージック・クリップと捉えることもできます。それくらい、彼のメロディーが美しく心に染み込んで、映像が深く刻み込まれます。とはいえ、あのストーリーがなかったら、モリコーネからあのメロディーが紡がれることはなかったかもしれません。映画と映画音楽は面白い関係です。

 私もかつて内村さんの監督する映画「ピーナッツ」で音楽を担当する機会がありましたが、やはりストーリーをイメージした上で曲を作りました。「きらクラ!」のBGM選手権で何度も実証しましたが、同じ内容でも音楽次第で感じ方は大きく異なるもの。またいつか、映画の曲を作れる機会があれば、是非チャレンジしてみたいものです。

 フランシス・レイ、ミシェル・ルグラン、そしてエンニオ・モリコーネ。世界中の人々の心を潤した音楽は永遠に鳴り止むことはないでしょう。久しぶりに、トトの顔が見たくなりました。

 

2020年07月17日 16:43

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