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2020年04月05日
第829回「愛の挨拶」
さて、無事に最後の「きらクラ!」の放送が終了しました。一回前にすでに決壊したので今回は大丈夫だろうと思っていたのですが、ブースに入ってみなさんの言葉を読み、思い出の音楽が耳から入ってくると、心のタンクは瞬く間に一杯になり何度も溢れ出してしまいました。
最後のBGM選手権「わすれられないおくりもの」も、この番組ならきっと成功するだろうと思いましたが、想像以上に素晴らしいものでした。こんな素敵な卒業制作あるでしょうか。しかも一通のメールからこれほど大きな果実が実るなんて。まさに、ラジオの力。本当に多くの人に愛された番組だったと実感。惜しまれながら終了できたのはとても幸せなことだと思います。
8年前。番組がスタートする際の記者会見で真理さんと演奏した曲が「愛の挨拶」でした。もともとよく耳にして好きではありましたが、NHKの「名曲アルバム」でイギリスの街並みとともに聴いた音が深く刻まれていました。それで、チェロとピアノの曲で真っ先に「愛の挨拶」が浮かんだのです。
自分で弾いたことも弾こうと思ったこともなかったのですが、シンプルそうでいて意外と難しく、記者会見ではショート・バージョンで披露した気がします。そんな二人の出会いの曲ということで、番組で使用することになり、途中から遠藤さんのチェロ(多重)バージョンで「きらクラ!」のエンディングを彩っていました。
もし再び「愛の挨拶」を二人で演奏することがあるとしたら、番組が終わるとき。自分の中で勝手にそう思っていました。アルヴォ・ペルトの「鏡の中の鏡」は二人で演奏したことがありましたが、なぜこの曲を演奏することになったのか。番組で聴く前に、オムニバス映画で聴いていたのですが、その時はそれほど心は動かなかったのです。シンプルな分、ひとつひとつの音が際立つ曲。真理さんのおかげで「鏡の中の鏡」の中に入ることができました。複数人で演奏することはあっても、二人で演奏というのはそれだけだったと思います。
番組終了の報告を受けたのは昨年末。徐々に心の中で消化してゆくと、やはり演奏したい気持ちが芽生えました。
「二人で演奏しない?」
真理さんは二つ返事で受け入れてくれました。
そうして二人で演奏することになった「愛の挨拶〜ありがとう、きらクラ!バージョン〜」は、本来クラシックの楽譜に記されていないコードでアプローチしたものでした。いざ録音となると失敗できないプレッシャーで指が固まってしまうのですが、「うたたね」の成果なのか経験なのか、1回目でオーケー。念のために録った2回目の方がミックス状態がいいということで、そちらが放送されました。
電話の保留音やドラマやCM。至る所で耳にする曲。私がよくかける電話先のほとんどが保留音で「愛の挨拶」が流れます。日常のふとしたした瞬間に思い出すのでしょう。卒業があるのなら、いつか同窓会があってもいいのでは。その日が来ることを願っています。
2020年04月05日 16:55
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