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2020年01月24日
第820回「カキモトアームズ」
番組内で時折話に出るので、今日は「カキモトアームズ」についてお話しします。私が、カキモトアームズに行くようになったのは25年ほど前。それまで存在を知っていたのか、看板を見たり、なんとなく耳に入っていたのだと思います。
「お昼はパンにしようかな。」
初めて一人暮らしをしたのは自由が丘のワンルーム・マンション。駅前にある東急ストアの入り口に併設されたパン屋さんへ歩いて向かっていると、後ろでざわざわしている気配。
「もしかして、ふかわさんですか?」
振り向くと、若者3人の笑顔がありました。深夜番組から徐々に認知度が上がりつつあった時期かもしれません。
「え?この辺に住んでいるんですか?」
「うちら、カキモトのスタッフなんです」
「前にも見かけたことあったんですよ!」
ケータイもない時代。写真こそ撮らなかったものの、パン屋に行くことを伝えると、3人はなぜか付いてきました。
「じゃぁ、食べたいの言って」
トレーの上に4人分のパンが乗せられていきます。
「いらっしゃいませ〜」
そして後日、出会ったばかりの3人が務める美容室、カキモトアームズを訪ねました。しかし、彼女たちはまだデビューしていないので、実際カットは違う人が担当。まだ、カリスマ美容師なるものが生まれる前のことです。
初めての美容院は中学生の頃だったでしょうか。理髪店から美容院への憧れ。前に倒れるのではなく、後ろに倒されて、白いガーゼをかぶせられ。駅前のリーズナブルなところでしたが、理髪店とは全く違う雰囲気でした。
「え?大丈夫?」
地元の美容院とも違い、宇宙空間のような店内。スタッフも奇抜な格好の人が多く、非現実な世界。髪を洗う際も、後ろに倒される角度が非常に浅く、例の白いガーゼすら被せません。お湯が垂れてくるのではと心配しながら髪を洗ってもらうひととき。そうして、カキモトアームズに通うことになりました。出会った3人組をはじめ、若いスタッフが多かったので、やたらとテンションが高く、友達のように接してきました。
「そろそろ、髪型を変えたいんだけど、何かいいのないかな」
ロン毛にヘアターバンから次のステップへ。とはいえ、わかりやすいスタイルがいい。マッシュルーム・ヘアに目星を付けていましたが、なかなか踏み切れずにいました。
「ねぇ、次マッシュルームにしたいみたいなんだけど、どう思う?」
「マッシュ?いいじゃん!」
「いいよ、きっと似合うよ!」
お店のスタッフ達に背中を押され、マッシュルーム・ヘアに踏み切ります。お陰で、いじられキャラへと転身できました。その後、引っ越したり、担当が変わったり、別の支店に移ったり、トルコでスポーツ刈りになったり、ベトナムでパーマをかけたり。
「カットの予約したいんですけど」
時は経ち、久しぶりに最初に足を運んだ自由が丘店のカキモトアームズに連絡をし、店を訪ねました。すると、そこにいたのは、20歳の時にパン屋さんでパンを買ってあげた女性でした。
「カット、お願いできるかな」
だいぶ時間は経っているので、流石にシャンプーの段階ではないと思っていましたが、彼女は自由が丘店の店長になっていました。光陰矢の如し。それが7、8年前のことでしょうか。それから、彼女は結婚、出産をし、現在は立派にお母さんをしながらスタイリストを務めています。おしゃれな美容室ではありますが、いわゆるカリスマ美容師とか、そういうチャラついた感じではなく、自由が丘らしい落ち着いたお店。だいたい2ヶ月に一度くらいのペースで足を運んでいます。
「〇〇ちゃん、今日ママにカットしてもらったよ〜」
幼い娘さんに向けて動画を撮影。当時のスーパーもパン屋さんも今はなく、スタッフもだいぶ入れ替わりましたが、25年前に商店街で遭遇した日のことは、今でも昨日のことのように覚えています。
2020年01月24日 17:14
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