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2019年08月09日

第801回「コムシコムサ」

 

 今月19日に誕生日を迎えます。45歳。20歳の誕生日にこの世界の門を叩いたので、間もなくまる25年となります。では、門を叩く前。25年前の今頃はどうしていたのかというと、素人お笑い番組のオーディションに向け、大学の友人を今回だけだからと無理矢理誘い、「コムシコムサ」というコンビを組んで、日夜、ネタ作りに励んでいました。

 友人の前で披露しても、それは「友人」という関係性によって生まれる「笑い」であって、「客」を笑わせたことにならない。だから知らない人に見せるべきだという考えのもと、通りすがりの人にいきなり声をかけ、「ネタをみてください!」と路上でコントを披露しました。自分が何者だか知られていないので、羞恥心も怖いものもありません。

 しかし、いきなり見知らぬ二人組にコントを見せられて、面白いわけがありません。表情はこわばっているし、とても笑うような雰囲気ではなく、なんだかすごく申し訳ない気持ちにさえなりました。そこで場所を変えることにしました。

「ここなら笑ってくれるかもしれない!」

 路上では笑う雰囲気にならないけれど、ある程度あたまっている心境なら受け入れる体制になっているのではないだろうか。ネタを改良するのではなく、場所を変える方針。そうして向かったのは、遊園地でした。

 カップルだったり、家族連れだったり、すでに楽しい雰囲気に包まれています。僕らが声をかける段階でもう笑顔。そうしてショートコントを披露して、笑ってくれた時は、抱き合って喜びました。中には、アドバイスや一緒にオチを考えてくれたりする人もいたり。かなりの手応えを感じて、八景島シーパラダイスを後にしました。

 オーディションはなんとか通過し、僕らの稚拙なコントは無事に電波に乗ることができました。それと同時に「コムシコムサ」は解散。相方は就職活動をはじめ、僕はひとりで門を叩きました。一人だとどうしていいかわからず、ギターを弾いたり、小道具を使っては自分のスタイルを模索していました。まだ、ヘアターバンをする前のことです。

 人を笑わせることは、簡単なようで、とても難しく、雰囲気によって、タイミングによって、同じことをやっても結果は異なります。だからこそ、魅力があるのでしょう。その魅力のおかげで、今日まで続けることができました。

 

この25年の間に何をしてきたかといえば、皆さんの印象に残っているものがあるかわかりませんが、唯一言えることは、辞めなかった、ということでしょう。

 芸能界はボルダリングのように、とにかくどこかに手がかかっていたり、足が乗っかっていれば、なんとかなるもの。たとえ落ちそうになっても、誰かが手を差し伸べてくれます。

 ちなみに「コムシコムサ」は、フランス語で「まぁまぁだね」という意味。「最近どうだい?」「コムシ〜コムサ〜(まぁまぁかな)」学校で履修していたフランス語の授業で耳に残った言葉。あの日、抱き合って喜んだことを久しぶりに思い出しました。

 

PS:来週、再来週の週刊ふかわは、お盆休みのため休載です。

2019年08月09日 18:04

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