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2019年08月23日
第802回「felicidadeな一日」
台風の余韻を感じる風、僕は大きなリュックを背負って自転車を漕いでいました。
「ご相談したいことがあるんですけど…」
そう言って、オーナーの辻さんに話を持ちかけたのは一月半ほど前のこと。駅のすぐそばにあるパティスリーRは、スウィーツとデリのお店で、サラダプレートやカレーを始め、僕の日常を彩ってくれています。常連とはいえ会話は挨拶程度。それでも僕の中で、この方なら話を聞いてくれる気がしました。
「面白そうですね!」
漠然としたイメージにも関わらず、興味を持ってくれました。しかも、場所の候補すらない中で、パティスリーRの系列店であるCAFÉ TORAならお盆休みが一週間あるので、それを利用するのはどうかとご提案まで。同様に、コンパス・コーヒーにも足を運んでみると、オーナーの小林さんを紹介してもらい、電話越しに説明。即座に賛同してもらえました。普段飲んでいるコーヒーでももちろんよかったのですが、せっかくだからと、イパネマ農園の豆を使用した当日限定のスペシャルブレンドを用意するとまでおっしゃってくれる心意気。イパネマのコーヒーを飲みながらボサノバを聴く。なんと贅沢な試みでしょう。
そうして、お盆休み中の8月16日に開催することが決まる頃、イベント名は「felicidade」に固まりました。ジョアン・ジルベルトの他界がなかったら、普段通りボサノバを聴いて終わる夏だったかもしれません。
料理やデザートのバリエーション、値段や営業時間など、度々話し合って進行していく8月。いざ開催となると予想以上に大変な部分はありますが、それも含めて文化祭のような懐かしい感覚と新鮮さがあります。そうしてあっという間に、開催の日を迎えました。
「今日は長丁場ですが、よろしくお願いします」
自転車を停め、扉を開けると辻さんはすでに厨房で作業しています。昨晩仕込みをしていたにも関わらず、今日も早くからいらして頭が下がります。オープンの11時まであと1時間半。僕はリュックから取り出した機材をセッティングし始めました。
今回使う機材は、DJコントローラーというもので、いわばDJブースをコンパクトにまとめたもの。だいぶ前に購入していたのに使う機会がなく、いつか実践したいと思っていました。
「さぁ、出るかな…」
天井に吊るされた2機のスピーカーからギターの音色がこぼれてきます。テーブルやカウンターの上にメニュー表などを並べ、飾り付けをしていると、コンパス・コーヒーの小林さんも到着。コンパス・コーヒーとCAFÉ TORAは目と鼻の先の距離ですが、小林さんがここの厨房に入るのはとても貴重なこと。今日だけの、フェリシダージ・ブレンド。DJブースの横に、コーヒーの機械が設置されました。
「こんにちは」
オープン30分前。雑穀クリエイターの田中雅子さんがいらっしゃいました。僕が普段いただいているものもそうですが、今日のカレーもオール国産の雑穀米で召し上がっていただきます。僕の日常を彩るものたちが一堂に会し、そろそろオープンの時間。あの日、頭の中に浮かんだものが、今、現実になろうとしていました。
2019年08月23日 18:04
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