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2018年07月13日
第754回「きらきら星はどこで輝く?第18話 スーツはご機嫌ななめ」
そうして始まってみれば、うたたねどころか、とても楽しいノリノリコンサート。国際音楽祭も開催している場所というのもあり、霧島の皆さんのノリがよく、出演者の気分を盛り上げようという心意気を感じました。昨日以上にカジュアルな雰囲気に包まれていたので、ナビゲーターの話も3割増。すっかり上機嫌です。
「愛の挨拶が、世の中のクレーマーの気持ちをなだめているのです」
「これは、100年に一度の突然変異によって生まれた薩摩のピンク豚です」
「アイロン台がグランドピアノに見えました!」
譜めくりの方も、絡まれるとは思っていなかったでしょう。明るい雰囲気と笑い声に包まれて、プログラムはスムーズに進んで行きます。いつか叱られるのではと思っていましたが、ステージ袖に戻る度に、スタッフの笑顔に迎えられます。ただ、若干一名、不機嫌な者がいました。
「ねぇ、今日こそ着てくれるんでしょうね」
霧島では15分の休憩がありました。
「も、もちろんさ、せっかく持って来たんだし、ここで着なかったら、何の為にわざわざって話でしょ?」
「じゃぁ、早くここから出してよ、暑いんだから」
「そろそろ休憩も終わるから」
そう言って、黒のカバーを外しました。そして、プーランクのエレジーから始まる後半戦。休憩を挟んでも相変わらず会場は暖かい雰囲気に包まれていました。
「いよいよ、次が最後の曲となります」
本編最後の曲、「星に願いを」が始まりました。もう終わってしまうのかという心情に、ハーラインのメロディーが染み入ります。挨拶を終え、袖に戻ると会場からアンコールの拍手。さて、どうするか。楽屋に戻ってスーツに着替えるか、それとも。
「では、行きましょう!」
ステージに現れたのは、水玉パジャマのナビゲーターでした。楽屋に戻ることはなく、そのまま楽譜を手にしてステージに飛び込みました。拍手を浴びながら、ゆっくりと歩いて行きます。センターでお辞儀をし、向かうはグランドピアノ。ここでも同じように、「え、嘘でしょ?」という雰囲気に笑い声がブレンドされています。楽譜を置き、腰を降ろし、会場のざわつきを吸い込むように深呼吸。ゆっくりと両手を鍵盤に載せると、息を飲むように会場は緊張感に包まれました。そして、張り詰めた空気を解きほぐすように響き始める、シューマンのトロイメライ。
グランドピアノから飛び出してゆく音が、風船のように飛んで行く感覚がありました。今までピアノを弾いていてそのような感覚になったことはありません。会場の構造によるものなのか、気のせいなのか。いずれにしても、自分でも気持ちよく弾くことができました。
「続いては、連弾をお聴きいただきます」
アイロンをかけてくれた三舩さんが登場し、ピアノの前に並びます。シワを伸ばしてもらった分、なおさら失敗するわけにはいきません。さて、霧島でも輝くことができるのでしょうか。
「ありがとうございました!」
演奏を終えると、観客の皆さんの目がとてもきらきらしていました。そして最後の「waltz in August」。この曲で、2日間全ての演目が終了するのかと思うと感慨深いものがありました。演奏後、一列に並んで、お別れの挨拶。こうして、本当にたくさんの拍手と笑顔に包まれて、うたたねクラシックは幕を閉じました。
「それでは、出発します!」
支度を済ませ、いざ空港へ。
「昨日から今日だけで、かなり上達していましたよ!」
途中、うどん屋さんに寄ることになりました。なかには焼酎を頼む人もいます。体にまだ余熱を感じながら、今回のうたたねクラシックの労をねぎらいました。
「ぜひ、またやりましょうね」
空港のラウンジ。そんな言葉を、遠藤さんを始め、メンバーの皆さん、スタッフの方からいただくことができました。至らぬ点もあったと思いますが、甘えてばかりでしたが、プロの演奏家の皆さんとの演奏旅行はあまりに楽しくて、演奏家になった気分も味わせてもらいました。全てがメロディーのようでした。
「結局、一回も袖通さなかった。一体、なんのために来たのか」
「今度のきらクラ公開収録の時に着るから」
「まぁ、いいわ。トロイメライ、よかったよ」
鹿児島空港が離れて行きます。さぁ次は、どこで輝くのでしょう。あらためて、ご来場の皆様、本当にありがとうございました。
2018年07月13日 08:40
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