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2018年07月06日
第753回「きらきら星はどこで輝く?第17話〜うたたねクラシック?〜」
心地よい時間が流れていました。朝風呂に入り、朝ごはんを食べ、コーヒーを一杯。それでも出発まで時間があります。部屋でゆっくりしようと窓を開ければ、霧島連山の噴煙。気持ちいい風と新鮮な緑の香り。鳥のさえずりも聞こえてきます。福岡が12時開演だったのに対し、霧島は14時から。ホテルから会場も近く、随分余裕があったので、しばらくベッドで横になることにしました。
「なんの音?」
しばらくすると、鳴き声のような音が聞こえてきます。
「もしかして…」
どうも弦楽器の音のようです。誰かが音楽を流しているのか、それとも。
「真理さん?」
このホテルのどこかの部屋で練習しているのでしょうか。わからないけれど、風とともに入ってくるチェロの音色がとても心地よく、そのまま眠りに就いてしまいました。これぞまさに、うたたねクラシック。優しい音色を子守唄に、ハンモックに揺られるような、極上のうたたねタイムとなりました。
「ほら、見てください」
大自然に囲まれて、今日のコンサート会場がありました。迎えてくれたスタッフが、数日前の噴煙の写真を見せてくれます。青空に、くっきりと白い雲のような噴煙が立ち上っています。タイミングによっては、このコンサートも危なかったかもしれません。ステージもとても素敵なつくりで、20年以上も経っているとは思えないような綺麗な空間。二日目というのもあるのか、環境のせいか、まるで今日は本番ではないかのような、穏やかな時間が流れていました。
「そういえば、部屋で練習してた?」
会場で合流すると、朝のことを思い出しました。
「あ、聞こえました?」
「チェロの音色聞きながら寝ちゃったよ」
続々とメンバーが集まり、徐々に本番の緊張感が漂い始めたその時、今回のハイライトとも言えることが起こります。
「アイロンって、どこかにありますっけ?」
そうスタッフに尋ねた僕に声をかけてくれたのは三舩さんでした。
「じゃぁ、私がかけますよ」
「いや、悪いですよ、それは!」
「すぐなんで、かけちゃいましょう」
シワのついてしまった水玉のパジャマが、三舩さんに渡りました。ちょうどご自身のもやる予定だったのかもしれないですが、これから本番を迎えるピアニストの方にパジャマのアイロンがけをしてもらうとは。しかしながら、その姿はとても優雅なアイロンがけで、アイロン台がグランドピアノに見えました。このように、いつまでたっても甘えん坊のりょうちゃんを素敵な女性陣が支えてくれます。
「それでは、本日もよろしくお願いします」
そうして、昨日とは違う衣装を身に纏った遠藤さんがチェロを手にして現れると、会場は大きな拍手に包まれました。
2018年07月06日 08:42
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