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2016年03月20日

第651回「記号に弱い、日本人」

 そもそも、日本人が記号に弱いのは否めません。以前「美しさにまつわる」でも散々お話しましたが、これは、僕自身が人生をかけて追求していること。モノの価値、美しさを決めるものはいったいなんなのか。それらはときに、本質を見えにくくさせてしまう。どうして人は、記号に振り回されてしまうのか。
 もちろん、記号は大切です。「なんのお店かわからないけど、おいしいお店」なんて、どんなにおいしい料理を提供していても、なかなか浸透しません。「なにしているかよくわからないけど、荷物を運んでいる男性、すごくかっこいい!」と言われても、ピンときません。頭のなかで処理できないのです。あの和食屋さん、すごくおいしい。佐川男子、最高。記号があるから、輝くのです。
 とくにテレビの世界は、記号を求められます。たくさんの人たちが触れるので、わかりやすさが求められるのです。僕は、サービスエリアが好きですが、その好きが高じて、DVDを作りました。するとどうでしょう。情報番組で呼ばれるようになるのです。サービスエリア愛好家として。呼ばれるために作ったわけではありません。そのDVDが売れようが売れまいが、まぁ売れている方が望ましいのですが、カタチになっていることで、視聴者は「そうか」と納得してしまうのです。それが本だったりCDだったり。逆に、いくらサービスエリアが好きだと言っても、そういった「記号」になるものがないと、だれも耳を傾けてくれません。「愛をカタチ」にしないとだめなのです。それが、テレビの世界。
 記号が力を持ちすぎてしまっているものもあります。「世界遺産」になった途端に集まりはじめる人々。「全米ナンバー1」という映画のコピー。かつては「カリスマ美容師」なんてのいうのもありました。ここまでくると、記号というよりもブランド。普通の女の子とだと思っていたら「AKB」のメンバーだった。そうした記号がつけられた途端に、見る目が変わってしまう。本質はなにも変わっていないのに、記号が一人歩きしてしまう。
 世の中は記号でできているといっても過言ではありません。記号やブランドは、世の中との関わりであり、社会の認証を得ているという錯覚に近いものを与えてしまいます。
 「海外で評価された」という記号に弱いのは、やはり、島国だからという部分もあるでしょう。もっというと、英語を話せないというコンプレックスも加担しているかもしれません。母国語なのだから話せて当然なのに、外国人が英語を話しているのを見て「すごい!かっこいい!」という印象を抱いてしまう。これぞGHQの思う壺。同じように、タイ語やマレーシア後を話す人々に同じ印象を抱けないのはどうしてなのか。「僕たちの話せない言語を巧みに操っている」という印象に振り回されているだけなのです。
 記号は文字とは限りません。「ハーフ」や「クウォーター」の人たちに対する印象もそう。人間として優劣などないのに、どうしても特別扱いしてしまう。顔自体が記号とも言えます。イケメンがどうかで、メニューをオーダーするときの声色は変わるでしょう。人間というのはそういうもの。記号を判断材料にしているのです。
 だからこそ、ブランドというものがあり、一度ブランディングに成功すると、とても楽になります。人々は記号に振り回されてくれるからです。
 そういった日本人の弱いところ、つまり、大好物が集まっているのだから、テレビが放っておくわけがありません。甘いマスク、甘い声。結果として、複数の記号がお茶の間の支持を得ましたが、この度、もう一つの記号がついてしまいました。「経歴詐称」という記号。意図的かどうかは別として、記号の恩恵があった分、負の恩恵だけ避けることはできません。とはいえ、これらはテレビのなかの話。僕個人としては、これまで「人」として接してきたので、今後なにかが変わるわけではありません。
 人は無意識に記号の影響を受け、それらによって判断していることを、今回あらためて感じました。記号に弱い日本人が無意識に担ぎ上げてしまったのです。それは同時に、自分で価値判断ができない者が多いということかもしれません。本質を見抜くことは容易いことではありません。ましてや、人間の本質なんて、自分自身でもわからないくらいです。だからこそ、記号に振り回されないよう、心がけるべきなのでしょう。
 

2016年03月20日 17:31

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