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2009年07月05日
第367回「人類は常になにかを知らない」
「3D」という言葉をときおり耳にしますがなんとなく立体的というイメージはあるもののそれが「3DIMENSION」という3次元を意味しているとなると知らない人もいるかもしれません。それこそかつてTHE FIFTH DIMENSIONなるアーティストもいましたが、「3D」の「D」は「DIMENSION」(次元)の「D」。ゲームなどによくありますが、まさに僕たちがいるこの世界こそ3次元、3Dなわけで、単純にいうとタテ・ヨコ・高さの立体世界。これに対して2次元はタテとヨコの線で構築された平面の世界です。主人公が平面上を移動していたかつてのドラゴンクエストが2次元で昨今のファイナルファンタジーが3次元ということです。
2次元の世界は決してゲームの世界だけでなく、僕たちの世界にも存在します。たとえばアリがそうで、彼らは2次元の世界を生きています。一匹のアリが朝礼のときなどよく足をのぼってきたりしましたが彼にとっては上に登るという感覚はありません。ひたすらまっすぐにのびる平面を進んできているだけで「高さ」は認識していないのです。だから、アリの行列から一匹手でつまみあげたとき、そのうしろにいるアリからしてみたら「人間にさらわれた!」とはならず、突然目の前のアリが消えた、ということになります。アリは、「高さ」は認識していないからこそ、どんなところもよじ登れるのかもしれませんが。
では1次元とはどういうことでしょう。2次元が平面世界なら1次元は線の世界。平面にもなっていないのです。そして0次元が点による世界。勝手な想像ですが、ホクロというのは0次元のものかもしれません。あの点の中に大きな世界が集約されているのです。
このように、3次元に生きる僕たちはそれ以下の次元についてはわりと容易にイメージできるのですが、問題はその逆です。こっち側に関してはそう簡単にはいきません。4次元とはいったいどんな世界なのか。立体を超えるもうひとつの次元、それは時間です。時間がプラスされるのです。
ちょっと待ってよ、僕たちが生きているこの世界にも時間はあるじゃないか、と思うでしょう。たしかにこの世界にも時間は存在します。ですが、時間に逆らうことは誰もできません。3次元の世界では時間をコントロールすることはできないのです。
「じゃぁなんだよ、4次元の人ってのは時間をコントロールできるってのかい?」
「そういうことです」
ここからは謎の江戸っ子と少年の会話形式でお送りします。
「未来にも過去にも行けるってのかい?」
「そういうことです、ただ」
「ただ?」
「4次元に人はいません」
「いない?なんで」
「おそらく、人ではありません」
「じゃぁ、なにがいるのさ」
「それは…わかりません」
「なんだよ、それじゃ意味ねーじゃねーか」
「だから、人が作った現在とか過去とか未来という概念・言葉も存在しないのです」
「概念?なんだか難しくなってきたぞ?」
「アリが僕たちを認識できないのと同じように、3次元の僕らからは4次元の世界は認識できないのです」
源さん(江戸っ子)の喉を唾液が通過していきました。
「個人的な想像ですけど、どこかに異次元の扉があるのではなく、4次元の世界は僕たちの身の回りに存在しているのです。現在も過去も未来も同時に存在している、というと多くの人が拒絶反応を起こしますが。時間を自由に行き来できる物体の移動ルートと3次元の時の流れが交差したときに見えるのがいわゆるUFOなのかもしれません」
「UFOが?」
「はい。まぁUFOの存在についてはまた別の機会にしますが、どこかに異次元の世界が存在する可能性は高いでしょう」
「異次元の世界ねぇ…」
「そうです、でも…」
「でも?どしたんだい?」
「いままで言ったことはすべて忘れてください」
「なんだよ、散々話しといて」
「いいから忘れてください」
「どして!」
「大事なのは、人類は常になにかを知らない、ということなんです」
「人類は…?」
「常になにかを知らない」
そう言うと、少年はゆっくり麦茶を口にいれました。
「かつて地球が回っていることを知らなかったように、地球が丸いことさえ知らなかったように、人類はどんなに進化してもなにかを知らないんです」
「そんなことないでしょう、科学ってやつがぜんぶ解明するんだから」
「いえ、知れば知るほどわからない部分も生まれます。人類はいくら知ってもすべてを知ることは不可能なんです。言い換えれば…」
「れば…?」
「人類の歴史は、知らないことを発見する歴史、なのです」
「知らないことを発見…」
「そう。知らないことを見つけていくのです。だからすべて知っていると思うことが一番だめなのです。わからないから人類は滅亡しないわけで、もしすべてを知ってしまったら終了なのです。恋愛だって同じですよね?」
「恋愛も?」
「はい。人はわからない部分に魅力を感じ、わからない部分を好きになる」
「わからない部分を?」
「そうです。もちろんわからない部分だけだと単なる不可解な人で終わってしまうけど、恋愛にはほどよくわからない部分が必要なのです」
「もしすべてを知ってしまったら?」
「終了です」
「終了?」
「はい、それか…」
源さんは次の言葉を待ちました。
「愛に変わるか」
「愛?」
「とにかく、源さんがいままで振られてきたのは自分のことをたくさん話しすぎてわからない部分がなくなっちゃうからなんですよ」
「そうか、俺は多くを語りすぎていたんだな!」
「そうです。昔から男前はみんな無口じゃないですか。あれは、無口がいいんじゃなくて、なにを考えているかわからないからいいんですよ」
「そうか、じゃぁ俺も今日から無口になろう!」
「でも源さんが無口だとなんだか不気味…」
「なんだよ、じゃぁ俺はどうしたらいいんだよ!おい、こら!ここが大事だろ!ちょっと待って!」
「わからない」は決して悪い状況ではなく時にはそれを楽しむことも必要でしょう。知れば知るほどわからない部分が生まれ、すべてを知ることは不可能なのです。もしもすべてがわかってしまったらこの世界は誰かの手によってコントロールされてしまいます。「人類は常になにかを知らない」それに気付くことが大切なのです。
PS:4次元の話はあまり気にしないでください。
2009年07月05日 09:55
コメント
今週の内容、とっても好きです。
アインシュタイン曰く、現在過去未来の概念ってないんだってよ〜と、騒いでも、周りのみんなは、いつも「はい?」になってしまうのです、けれども、何となくその感覚がわかるような気がします。今思ったことの積み重なりが未来を造っているから、それは過去でもあって今でもあってのちのちの事でもあるのかしらって。やっぱり難しいですかね。
投稿者: ちぃすけ | 2009年07月05日 13:53
なんだか胸の奥がすっきりしました。
ちょうどひっかかる悩み事があって、
「わからないわからない!!」
ってモヤモヤしてたんです。
わからないことがあるのは決して恥ずかしいことではありませんよね。
わからないことを日々研究していって、
またわからないことをみつけて…の繰り返しですね。
気持ちが晴れてきました[^v^]!
投稿者: きみぃ | 2009年07月05日 20:57
こんにちわ!面白い記事でした。
人は常に何かを知らない、いつの時代も。
これって人の欲とかにも似てる気がしました。あとはよくどん底まで行ってしまえば後は這い上がるしかない、なんていいますが、頂点ってあるんですかね?これにも似てる気がします。
あと温故知新って言葉を思い出しました。
あと少年と麦茶は夏を思わせますねーーーー^^さり気ない情景描写素敵ですねーーーw 夏ですねーーーw
投稿者: 凛 | 2009年07月05日 22:15
知らないから知れてうまれてまた知らない。モヤモヤスッキリ。なんともいえない心地よさに溺れました。源さんには無理のない自分のまま、頑張って愛を手にしてほしいものです…そんな源さんへの希望にまた、違う心地よさで溺れました.゜*
投稿者: ようこ | 2009年07月09日 13:44
こんにちは、いつも応援しています。
今日はご挨拶だけしにきました。
ブログの更新楽しみにしています!
投稿者: あけみ | 2009年07月10日 11:18
初めまして。
勝手ながらコメント失礼いたします。
私は小さい頃から怖い本やマンガが大好きで、よく異次元の世界やら四次元の世界という言葉を聞いてきました。
そこから解釈すると、四次元の世界というのは、「空間」みたいなモノかなって思いました。タテ・ヨコなどではおさまらない360度の空間、宇宙みたいに端っこも地面も天井もない永遠の空間・・・
宇宙の事や、明日の事、未来の事が
わからない・・・
わからないって事はなんだかすごく
夢があって素敵なことですよね!
恋愛も、好きになって、
その人の事をもっと知りたいって
思って、お付き合いする前や
付き合いはじめの頃が1番ドキドキして
楽しいですもんね。
なんとなくふかわさんに
共感したのでコメントさせて頂きました。
投稿者: ru- | 2009年07月12日 06:01