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2009年01月18日

第345回「How you say is more important than what you say.」

 なんだか英語の教科書に出てくるような堅苦しい英文に拒絶反応な人もいるかもしれませんが、これは教科書や参考書からの引用でも偉人の言葉でもなく、ある34歳男性のケータイの未送信メールの中にある大量に書き留められた言葉のひとつです。
 なんとなくは感じているのでしょうが、それを言葉で表現している人はほとんどいなく、テレビでもこのことについて言及している人を見かけないので、僕としてはどうして言わないのだろう、気付いてないのかなと不思議でならなかったのですが、とても大切なことだと思うのでここで話したいと思います。
 「あなたがどのように言うかは、あなたがなにを言うかよりも重要だ」
 なぜこれを英語にしたのかは置いておいて、タイトルを訳すとこのようになります。もう少しシンプルに言えば、「言う内容よりも言い方のほうが重要」といったところでしょうか。
 たとえば禁煙エリアにもかかわらず道端でタバコを吸っている若者がいるとします。当然それはよくないことですが、だからといってそれを発見したおじさんが注意しようと「おいお前!ここは禁煙なんだからダバコ吸うんじゃねー!」と言ったとします。確かにルールを破っているのはタバコを吸っている若者なのでこう言われても仕方なさそうですが、この場合、どちらも間違っています。タバコの男性も注意したおじさんもダメなのです。いくら相手がルールを破っているからといって、乱暴に注意をする資格なんて誰にもないのです。乱暴に注意した時点でそのおじさんも、タバコを吸った人同様に人に不快な行為、たとえば「死ね」という言葉を発するのと同じです。「乱暴に注意をすることは、乱暴な言葉を発する以上に乱暴をしている」のです。
 また性質が悪いのは、どさくさにまぎれて自分のストレスも一緒に詰め込んでしまう人です。普段のイライラも一緒にその若者に対して「おいお前!」と、自分が正義だから守られていると誤解して、注意に自分の怒りを上乗せするのです。こういうことが社会ではよくあって、ルールを取り締まる人はこの手のタイプが多いです。立場や権力を利用して、自分のストレスを無意識に上乗せして注意する。これじゃ世の中よくなりません。
 言葉というのは不思議なもので、どんな言い方でも相手の心に届くわけではなく、相手の耳には届いても、それが心に響くかどうかはその人の言い方、表現の仕方によるのです。同じ荷物でも、両手で差し出されるのとドンと投げ捨てるように置かれるのとでは全然違うように、言葉という「想い」を伝える際の運搬の仕方はとても重要なのです。
 どんなに素敵な歌詞でも、いいメロディーがついてこなければ、いくら大声で叫んでも人々の心に響きません。言葉は音楽と同じで、心地良いメロディーに乗せなければ心まで届かないのです。それは声のトーンだけでなく、表情も。理屈は脳に届いても心には届きません。人は感情に左右されるのだから、脳でなく心にうったえないとダメなのです。ネットですぐに殺伐とした空気がながれてしまう理由の多くは理屈だけが横行するからでしょう。
 「How you say is more important than what you say」
 あえて英語にしたのは、比較内容が目で見てわかりやすいからです。どんなに内容が正しくても言い方が間違っていたらそれは間違ったことを言っているのと同じ。どんな正義を貫いても、その伝え方が間違っていたら、それは正義ではない。相手を傷つける権利・資格はどんなときにもどこにも存在しないのです。この未送信メールを世界中の人たちに送ることができたらいいのだけど。

1.週刊ふかわ |2009年01月18日 12:52