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2007年09月16日

第285回「地球は生きている1〜旅立ち〜」

 そのとき僕は、ロンドンに向かう飛行機の中にいました。海外ロケなどの仕事ではありません、海外旅行です。こんな夏休みでもお正月休みでもないない時期に海外旅行とはなかなかのんきなものですが、前々から企画していたわけではなく、ある意味衝動的に旅立ってしまったのです。その国のことがある日突然気になって、気になりだしたらとまらなくなって、まるで恋するように気持ちが抑えられなくなってしまったのです。恋の病のように四六時中そのことを考えるようになってしまった僕は、その日からネットなどでひたすら調べ、気付けば旅行会社に電話をしていました。もうこうなると駄目なのです。自分の意思ではとまらないのです。
 ただそれでも僕の心の中には、すこしひっかかっていることがありました。社会人としての責任感のようなものです。果たして、まだひな壇芸人から卒業していない僕が、こんな時期に海外旅行に行っていいのだろうか。ましてやこの前フィンランドにいってきたばかり。今回もし決行したら今年に入って3回目(仕事を除く)の海外旅行、年末にも行ったら、一年に4回ということもあり得ます。だから、どうにかこの抑えられない気持ちを抑えなければ、我慢しなくてはと思ったのです。そのために僕は、誰かに強く「駄目だ」と言われよう、そう思ったのです。
 「この前って、社長はなんか言ってた?」
  フィンランドに行ったのは6月末のことです。
 「ふかわらしいね、と言っていました」
 「あ、そう...」
 「なんでですか?」
 「いや、この前いったばっかりだから多分だめだと思うんだけど」
 「はい、なんですか?」
 「もしも、また海外行きたいっていったら、やっぱりだめだよね...」
 僕は、「駄目だ」といわれる流れを作っていました。マネージャーに駄目と言われてあきらめようと思っていました。
 「大丈夫じゃないですか」
 「え?大丈夫?!」
 「はい、大丈夫と思いますよ」
 「え、どして?この前行ってきたばっかりで怒られないかな」
 「いや、ハワイとかで遊ぶなら別ですけど、そうじゃないんですよね」
 「そ、そうだけど」
 「この前のフィンランドも仕事に反映されてますし、大丈夫ですよ」
 「あ、そう...」
 「ちなみに、どちらに行かれるんですか?」
 「アイスランド、なんだけど」
 「アイスランド?ってどこでしたっけ?」
 「北欧といえば北欧なんだけど」
 「勉強のためであれば、全然いいと思いますよ。社長もそこらへんは理解していると思いますし」
 僕は、予想外の返答に、嬉しさよりも戸惑いのほうが多くを占めていました。
 「ちなみにアイスランドだと、なにしにいくんですか?」
 「なにしに...ってわけじゃないんだけど、いろいろとみたいものがあって」
 「そうですか。まぁ、とにかく遊びじゃないのであればいいと思います」
 「あ、そう...でもまだ大決定じゃないからもしなにかあればいって」
 僕の気持ちを抑えるどころか、拍車をかけたマネージャーの言葉が、実質上のゴーサインになりました。放水されるダムの水のように、アイスランドへの想いは一気に流れ出しました。
 「チケットの発券おねがいします」
 僕はすぐに旅行会社に電話し、仮でおさえていた航空券を手配してもらいました。予定を組んでいたのでうそれにあわせてホテルや国内線の飛行機の予約などをネットで済ませ、のこすは国際免許の取得だけになりました。国際免許というと、どこか大げさな印象を受けますが、実は手続きは簡単で、15分ほどで終了します。なぜ知っているのかというと、これまでの海外のときも万が一のときのために国際免許証を一応持ってはいたのです。「運転できる」という気分を取得するために。でも結局、なんだかんだ国際免許が活躍することはなかったのです。でも、今回ばかりは取らないわけにはいきませんでした。というのも、アイスランドは鉄道が走っていないのです。
 「アイスランド、アイスランド...」
 僕は、本の背中を指でなぞりながら、アイスランドの本を探していました
 「な、ない...」
 しかし、地球の歩き方なら当然あるだろうと思いきや、どこの書店を訪れても、そこにアイスランドの文字はありませんでした。
 「そんな馬鹿な...」
 すべてが網羅されていると思っていたあのシリーズさえも、アイスランドに関しては単体のガイドブックを発行していなかったのです。(実際には、ヨーロッパ編で少し扱っていますが)
 「よろしければ、ガイドブック郵送しましょうか」
 結局、アイスランド大使館に電話しては質問攻めをしていた挙句、別のガイドブックなどを郵送してもらいました。
 「電車がないのか...」
 なので、主要な移動手段はバスかタクシーになります。当然、現地にはバスによるガイドツアーもあるのですが、僕の行きたい所はそういったものがなかったのです。なので今回は、これまでのような「気分」の取得でなく、本当に国際免許が必要だったのです。
 ラジオを終えた僕は、まだ薄暗い中、六本木ヒルズからそのまま成田に向かい、ロンドン行きの飛行機に乗りました。アイスランドは、チャーター便を除く、日本からの直行便はありません。一般的には、コペンハーゲンかロンドンでの乗り継ぎになります。ロンドンまでが12時間、そこからアイスランドまでが3時間ほどです。ちなみにマネージャーには言いませんでしたが、僕の中ではちゃんと目的がありました。しっかりとしたサブタイトルがあったのです。それは「地球が生きていることを確認する旅」です。
 「果たして、確認できるだろうか...」
 そして僕は、今回の旅用に編集しておいたオーディオプレイヤーを装着し、オレンジジュースを飲みながら、大使館から送ってもらったアイスランドの本を眺めていました。

1.週刊ふかわ |, 2.地球は生きている |2007年09月16日 09:30

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