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2006年07月23日
第230回「いまこそ、その時」
最近はこのコラムでもアルバムのことばかりで、生活のすべてをそこに捧げているような印象を与えていたかもしれません。確かにそれに近い状態のときもありました。楽曲のことはもちろん、ジャケットやブックレット、PVやグッズのデザイン、ましてやツアーの日程まで、どれも自分で決めないといやな性格なので、常になにかを気にしながらなにかの作業をし、正直、頭の中の整理が大変でした。もう「キーッ!!」となりそうでした。しかし、「キーッ!!」となりながらも、アルバムの制作と同時にもうひとつ、僕にはやることがあったのです。
「小説?!」
予想外の言葉に僕は耳を疑いました。
「はい、そうです」
「えっ、コラムとかエッセイとかじゃなくて?」
「はい、小説です」
「なんで?そんなのやったことないよ」
「そうなんですけど、編集部の人が是非書いてほしいということで」
「ほんとに?なんでだろ?」
「わからないですけど、劇団ひとりさんの流れですかね」
「こっちに流れてくるとは思わないけど」
「どうしましょう?」
「どうしましょうって、言われてもなぁ、、、」
即答できる内容ではありません。
「ちょっと2,3日考えさせて!」
男には、何日か寝てみないと出せない答えがあるのです。
僕の中で、「小説は40歳になってから」みたいなのがありました。いつかはやりたいと思っていたものの、40年くらいの人生経験が必要だと思っていたのです。だから、31歳の自分には早すぎる、そんな気がしてならなかったのです。だから悩みました。やりたいことはやりたい、でも、生半可な気持ちで着手はできない。やがて、決断をしなければならない時が訪れました。
「ねぇ、ほんとに小説じゃないとだめなのかなぁ、、、」
「あ、まだ悩んでますか?」
「うーん、今日中に答えだすから!」
持ち前の優柔不断さが発揮されました。
「いや、やるよ!!」
今日中と言っておきながらも、5分もしないうちに決断を下しました。
「え、やりますか?!」
「きっと今ってことだと思うから」
「もう一度エッセイじゃ駄目かきいてもいいですけど」
「いや、小説でいこう!俺だっていつかはやると思ってたし、いま話がきたってことは、そういうことなんだよ!いまこそ、その時なんだよ!」
「わかりました、それで進めていきます」
受ける勇気が断る勇気を上回り、結局僕は小説を書くことに決めました。自分の想定よりも約8年早いスタートです。でもそれでいいのです。いまできることでいいのです。40歳になるのを待ったところで、きっと「もう小説を書ける準備はできた!」なんて思わないのです。できるかわからないけどやるしかないだろ、という時もあるのです、人生には。そんな気持ちが後押しして、小説を書きはじめました。たしか4月の中頃の話でした。
そして7月24日。配信日から考えるともう明日でしょうか。若者向けファッション誌smartにて、小説の連載がはじまります。ちなみにですが、連載が始まったからといってこっちを手抜きすることはありません。なぜなら、もう書き終えたからです。あとは小出しにしていくだけです。男性ファッション誌ですが、女の子も是非見てください。編集長の器のでかさがうかがえます。では明日、smartでお会いしましょう。
1.週刊ふかわ |2006年07月23日 10:00