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2020年06月05日

第832回「エコとエゴ」

 

 「エコ」という言葉を耳にするようになったのは15年ほど前でしょうか。「エコロジー」はもともと生態学を指す言葉でしたが、自然と人間との調和を示す際に用いられるようになり、今では「エコ」というと環境保全をイメージする人が多いと思います。

 「エコ」という概念と同時期に誕生したのが、「エコバッグ」。海外でのそれに比べると日本での浸透速度は遅く、この新型コロナがもたらした新しい日常の一環のように徹底されつつあります。レジ袋・プラスチック袋の有料化はスーパーやコンビニだけでなく、個人商店でも実施され、これからの「当たり前」になろうとしています。ただ、かつての「エコバッグ」は地球温暖化という問題に対する取り組みでしたが、現在のそれは「海洋プラスチックゴミ」問題に対するものです。実際、いわゆるレジ袋の無償配布を無くしたところで、全体に占める割合は決して大きなものではなく、これで海洋ゴミ問題が解決されるわけではありません。もっと大きな取り組みが必要で、その入り口と捉えるべきでしょう。

 浸透度合いで言うと、有料にするよりも、エコバッグ使用者になんらかの特典がある方が速いのではないでしょうか。数円のガソリン代のために何時間も並ぶ人たちがいるわけですから、そういった方々のエネルギーを利用する意味ではレジ袋有料も効果はなくはないですが、一回のお買い物で数円お得という方がモチベーションが持続する気がします。

 お得といえば、車のETCシステムも導入されてかなり経ちますが、いまだに搭載していない車両を度々見かけます。なぜこのような疑問を抱くかというと、ETCは単なる利便性だけでなく、ETCを使用しないととても割高で、どの区間を走っても同額という、はっきりいってぼったくりなのです。かなり強引な手段でETCへの移行を促しているのですが、それでも頑なに設置せずにいるのは、会社が高速代を支払うからなのでしょうか。

 そんな私も「〇〇ペイ」のような電子マネーにはなかなか重い腰をあげることができず、一つも使用していません。コンビニで前のお客さんがピッとしているのを頻繁に見かけるようになりましたが、もう少し時間がかかりそうです。通帳も紙の通帳のまま。振込こそ電子で行なうようになりましたが、完全移行には二の足を踏んでいます。デジタルとアナログのハイブリッド。「ペーパーレス社会」という言葉ももう古いですが、新聞やCDなどがまだ健在なのは、日本人の紙嗜好によるものでしょう。悪いことではないと思いますが。

 今や、どこのレジも透明のシートで覆われるようになりましたが、店員さんに金額を言われても、シートで視界を遮られていると、どうしても聞き返してしまいます。耳から金額は入って来るのにしっかり把握できず、普段いかに視覚情報に依存しているかを痛感しました。

 スーパーではエコバッグを持参していますが、レジ袋が有料だからエコバッグにしたわけではないという雰囲気をなんとか出せないものかといつも考えています。お金のためではないのだと。理由はどうであれ、レジ袋はやがて消えていくのでしょう。何かと使い勝手がよくて便利だったのですが、その当たり前は大きな犠牲の上に成り立っていたのなら、改善しなければなりません。エコバッグは、その始まりに過ぎないのです。

 アクリル板で囲われた世界で我々はもうしばらく生活するのだと思いますが、ウイルスとの闘いというよりも、自然との和解に向けた協議が必要かもしれません。

 

2020年06月05日 16:51

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