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2018年11月29日

第770回「音の泉」

 

 2回の特番を経て、10月からレギュラースタートしたBSフジの「OTOSEN

ですが、本日の放送をもって一旦休憩となります。あまりに突然なタイミングに、不自然さは拭えません。僕としてもとても素晴らしい番組に巡り会えたと思っていただけに残念ではありますが、このようなお知らせをすることになりました。

 どんなにコンセプトがしっかりしていても、最初は探りながら形を変えて進むものですが、この番組に関してはほとんど迷いや軌道修正もなく、非常に安定して進んでいました。アーティストに寄り添ったVTRと、スタジオでのトークには、他の音楽番組にはない温もりがありました。音を伝えるのではなく、「人」を伝える場所。有名とか無名とか、売れているとかいないとか関係なく、人それぞれのメロディーが流れる、音楽ドキュメンタリー番組。

 志に焦点を当てることで、その人に漂う空気や、まなざしに惹きつけられます。不思議なもので、人を知ってしまうと、その音を聴きたくなるもの。逆に、人に興味がなければ聞く耳を持たれないのも事実。耳から入ってきたとしても、心に響くかどうかは別物。テクニックだけでもだめ。やはり、人に魅力がなければ音楽は伝わらない。つまり、人そのものが音楽であり、メロディーとなって、画面から伝わってきました。

 お越しいただいたアーティストの皆さんの言葉は温かく、厳しい試練を味わったからこその説得力や重みがあり、たとえ厳しい言葉でもすとんと腑に落ちる瞬間がありました。それらは、アーティストを志す者だけではなく、多くの人の心に染み渡っていったのではないかと思います。その一方で、アーティストの方も収録後の表情はとても晴れやかで、この音の泉にまた訪れたいという言葉を残して行かれる方ばかりでした。やはり、どんな成功者にも重なる「あの頃」があるのでしょう。

 個人的には同じ事務所である柏木由紀さんとのやりとりがとても好きで、特にオープニングは突拍子もない言葉を投げかけてばかりいましたが、「ゆきりん」という楽器は、初心者にも優しい、表情豊かな音色を響かせてくれました。

 そんな、みんなにとって貴重な場所だった音の泉がこのタイミングでなくなってしまうのは非常に悲しいですが、こうして何度か訪れることができたことに感謝しています。

 またいつか、このような場所が生まれ、集うことができる日を心待ちにしていたいと思います。今までご覧になってくれた皆さん、ありがとうございました。

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2018年11月22日

第769回「愛はAIに勝るのか」

 

 もしかしたらネットニュースをご覧になった方もいるかもしれませんが、なんとあの恋愛ドキュメント番組「私のAIする王子様」のシーズン2が始まりました。これまで「あいのり」や、「テラスハウス」、古くは「ねるとん」など、様々な恋愛番組がありましたが、この番組の特徴は、なんといってもAI。まさに、今の時代ならでは要素が盛り込まれています。

 若い男女がともに数日間生活をすることで、恋愛感情が芽生えるもの。それだけでも見応え十分ですが、この番組はAIが参加します。といっても、グループに加わるのではなく、AIがデータに基づいてジャッジするのです。だから、自分の意中の人がいても、AIから見たら相性がいいとは限りません。どちらを信じるかは人それぞれですが、そこで脱落する人も出てきたりするのです。ここからは実際に見て楽しんでほしいところですが、このAIの信憑性はなかなか興味深いものがあります。

 というのも、人間の判断をあてにしていいのか、ということ。経験に即していますが、私情や雑念に邪魔され、それが正しい道に誘ってくれるとは限らないのです。例えば、選挙にしたって、国民による投票よりも、AIに決めてもらった方がもしかしたらいい結果を生む可能性だってあります。エンターテイメントにおいても、しがらみのないAIに依存する度合いは今後増えるでしょう。

 男女の相性に戻りますが、一目惚れで恋愛に発展して、燃えるような恋をしても、数年後には見えなかった部分が浮き彫りになり、二人の関係は破綻するかもしれません。価値観の違いに惹かれ、価値観の相違で別れる。トキメキなんて、脳の誤作動に過ぎないのです。もちろん、誤作動がいけないのではなく、誤作動こそ人間の醍醐味。しかし、「AIなんてくだらない」と聞く耳を持たないのはもったいないのです。

 以前どこかでお話ししたかもしれませんが、やがて人類はAIに取って代わられる日が来るでしょう。そしてAIに、「人間は不要だ」と切り捨てられる日が来るかもしれません。敵は、味方のフリをしてやってくるのです。 

 人間は愛情をエネルギーにして生きるもの。AIは、データを燃料にして生きています。果たして、愛はAIに勝るのか。「私のAIする王子様」。シーズン1を観ていなくても、全く問題ありません。毎週木曜24時配信ですので、ぜひご覧ください。

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2018年11月15日

第768回「魔法のロープ」

 

 先日の紅白鍋合戦、ご参加いただきありがとうございました。天気が良すぎて、むしろ暑いくらいでしたが、本当に素晴らしい一日になりました。

 場所取りスタッフのおかげで、広々としたゆとりのある会場。いつものように2チームに分かれて具材メンバーを取り合っていきます。これによって味の方向性が決まるから、お互い真剣な眼差し。シーフードで行くか、カレーでいくか。うまくいったり、いかなかったり。二つの大きな鍋を囲む、紅白鍋合戦。ほわほわと湯気が青空に昇ってゆく午後。予定通り2回戦を終えたところで、奇跡は起きました。

「じゃぁ、そろそろやりますか」

 お腹も満たされ、太陽が少し傾いてきたところで、ちょっと体を動かしたくなってきました。今回も縄跳びの長縄を持ってきています。二人の長縄ガールズに託し、僕はイスに座って観戦。そして、一本の縄が張られた時です。

「え?もう?」

 どこから来たのか、長縄ガールズが警備員らしき人に話しかけられています。たちまち暗雲が立ち込める河川敷。案の定、ここじゃダメだから、もしやるなら駐車場の方でやりなさいとのこと。駐車場の方が危ないのに。腑に落ちないものの、逆らうわけにもいきません。今回は長縄なしかと諦めかけたその時、男は立ち上がりました。

「じゃぁ、加賀谷くん、そっち持って」

 僕は持ってきた縄をしまい、代わりに魔法の縄を取り出しました。

「え?あ、はい」

 そして僕が大きく腕を振り回すと、彼の腕もつられるように動き出します。

「もしかして…」

 周囲がざわざわし始めました。そうです、エアです。エア長縄跳びが始まりました。するとどうでしょう。見えない縄にタイミングを合わせて、一人二人と、間に入ってきました。

「見える!縄が、見えるぞ!」

 あっという間に10人ほどが腕の動きに合わせて跳んでいましす。こんなことが起こるとは。周囲から掛け声が聞こえてきます。

「1、2、3、4…」

 魔法の縄なので、誰も引っかかることはありません。子供も大人も、腕の動きや、呼吸に合わせて跳びます。タイミングもバラバラだったりしますが、それでも、縄が見えてくる。側から見たらきっと、普通の長縄に見えていたことでしょう。

「終了〜!!」

 クラッカーの音が空に吸い込まれていきます。すっかり汗をかいていました。これなら、いつでもどこでもできる。魔法の縄のおかげで、もう注意される心配はありません。もはや発明といってもいいかもしれません。今までの蓄積があったからこそ生まれた、魔法のロープ。次回からはもう、普通の長縄はいらないかもしれません。

 

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2018年11月08日

第767回「編集後記」

 

 先日開催された、FM横浜「だめラジオ」の公開収録の中で登場した、「SHIN-YOKO WALKER」。地元ということで好き勝手言ってしまいましたが、公開収録とは言え、まさか本当に電波に乗ってしまうとは思わなかったので、言い訳を兼ねて、編集後記を設けることにしました。

 横浜も大きいので、横浜出身の方でも新横浜に精通しているとは限らないのですが、僕の実家はそこから車で15分くらい。庭とはいかないまでも、幼少の頃から馴染みの深い場所になります。

 新横浜駅の開業は1964年。新幹線「ひかり」の停車駅となりました。もちろん、まだ「のぞみ」はなく、冷凍みかんや、ペットボトルとは違うプラスチック容器に入ったお茶がスタンダードな時代。小学生だった1980年前後でさえ、駅の周辺に目立ったものはなく、むしろ空き地が多かったので、自転車でよく野球をしに向かったものです。特大ホームランだとホームに届いてしまうような距離。それから今日に至る間に、駅を起点として発展する様を見てきました。

 1989年に横浜アリーナ、1992年に丸くて背の高いプリンスホテルが誕生すると、「新横浜らしさ」ができてきました。ここから「のぞみ」が停車するようになりますが、当初は、新横浜に停まらない「のぞみ」も多かったので、ちゃんと調べないと通過してしまう状況でした。続いて、1994年にラー博、1998年の日産スタジアムへと続きます。日産スタジアムなんて、昨日のような印象ですが、もう20年も経っているのです。

 そんな中、もっとも新横浜の景色を変えたのはやはり、キュービック・プラザでしょう。2008年に開業した駅の商業施設。ホテルとグルメと、ショッピング。まぁとても便利です。地下には、ハマのスプラッシュマウンテンまであるのですから。しかし、これによって失われたものもありました。それは、駅のホームの明かりです。

 環状2号線から望む、駅のホームの明かりがとても好きだったのです。駅独特の、蛍光灯が連なる白い明かり。夜遅くに通ると、なぜか心が温まりました。いまではキュービック・プラザが壁になってしまい、完全に隠れています。そんな風に思っている人が他にいたかわかりませんが、それだけがちょっと寂しい部分です。

 今でも新幹線に乗る際は、余程のことがない限り新横浜。半蔵門から向かう際も、東京駅ではなく、極力新横浜まで行きます。東京駅は人が多すぎて心が荒れるのに対し、新横浜は多少人が多くても心が和むのは、昔から馴染みがあるからでしょう。北側と南側で人格が違う駅は少なくないですが、これほど顕著に現れている場所は珍しいかもしれません。南側には蛇行する川のように延びる道沿いに美味しいお店もあります。日曜日の駅は確かに人が多すぎてカオスですが、南側に行けば、穏やかな時間が流れています。

 子供の頃から見てきた街、新横浜。これからも、たくさん足を運ぶことでしょう。ラー博にも久しぶりに行きたくなりました。編集後記にかえて。

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2018年11月02日

第766回「パンプキンのため息」

 

 2018年秋。僕は、空を飛んでいました。

 さて、今年のハロウィン、いかがでしたでしょうか。イベントに参加された方、混乱の街をテレビで見て「けしからん」と思った方、それぞれいると思います。僕もDJをしていなかったら現在のような印象を抱いていたかわかりませんが、とても楽しいハロウィンでした。

 センター街での混乱は確かに目に余るものでもありましたし、商店街の皆さんや、関係のない立場の人たちにとっては、甚だ迷惑千万だったであろうとお察しします。ただ、あれだけ「渋谷」を世界にプロモーションしているわけですし、個人的には石田ひかりさんの「あたしゃ」を聞けただけでも、決して「百害あって一利なし」ではなかったと感じます。

 「最近の若者は」的な話は昔からありますが、もはや中年真っ盛りの今、あの騒ぎに対して眉間にしわを寄せる大人にならなくてよかったと思っています。

 今年は、軽トラックをひっくり返す映像が度々使用されたことで、ネガティヴな側面ばかりがフィーチャーされました。あの映像は、無関係な市民の車が巻き添いを食ったような印象を与えますが、軽トラはむしろハロウィンを楽しんでいた立場。理由がどうであれ、ひっくり返すのは度を超えていますが、それを伝えているかどうかで大きく印象は異なります。

 「そもそもハロウィンとはこういうものではない」という論調は、あなた今更何を言っているんですか、と言いたくなります。クリスマス、バレンタイン、次はイースター。本来の意味が薄まり、ビジネスチャンスに転換するのはむしろ大人たちで、日本独自のアレンジに仕上げるのは我が国のお家芸。それを文化と呼べるかは別として、そういう国民性なのです。

「あれの何が楽しいの?」

「あいつらはただ騒ぎたいだけ」

 こういう論調を振りかざす大人は、私には軽トラの上ではしゃぐ若者よりもみっともなく見えます。ただ騒ぎたいだけじゃいけないの?楽しさをみんなが理解する必要あるの?一番きついのは、「最近の若者は、遊び方が下手」というフレーズ。この後に、「うちらの頃は」という謎の自慢が続くのですが、こういうことを平気で言えてしまう大人にならなくて本当によかった。

 そんな想いを胸に抱き、僕は、飛び込みました。お客さんたちの海へと飛び込みました。海へと飛び込んだ僕の体は、宙を舞い、空を飛んでいるような感覚でした。1031日。京都のクラブは平日にも関わらず、熱い空間になりました。楽しい夜を、ありがとう。

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