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2017年07月28日

第714回「夏の力」

 

 自分で自分を褒めてあげたい、そう思いました。

 人生において、最も気が重くなるイベントの一つ、免許の更新のハガキが届いたのは7月に入ってからのこと。なんとなく、そろそろかなと思っていたので驚くことはありませんでしたが、やはり憂鬱になりました。

 なぜこれほどまでに重くなるかといえば、もともとこういった手続きが激しく苦手な上に、早起きして出発しても結局やたらと並ばされ、顔を指され、出来あがってみれば指名手配写真。ひたすら憂鬱な時間を味わいます。さらに、違反者講習として2時間の授業を受けなければならず、違反するのが悪いわけですし、なければ早く帰れるのですが、それがなかったところで気分が軽くなるわけでもありません。一連の行程を想像すると、ますます足が遠のいてしまうのですが、今回、ハガキが届いてから早々に、更新を済ませてしまったのです。

 誕生日が8月19日なので、手続きは9月19日までの2ヶ月間。こういうとき人は、追い込まれないと腰を持ち上げられず、締め切り力をテコにしてどうにか向かうことができるものです。にもかかわらず僕は、あと2ヶ月の猶予があるにもかかわらず、任務を遂行したのです。夏休みの宿題だって、ここまで早く仕上げたことはありません。早めに終わらせようと思っても、なんだかんだ追い込まれないとできないものです。痛みを感じてからではなく、何もないのに歯医者に通うような、大人の余裕さえ感じられました。

 そして驚いたのが、前回の更新日。パッと目に入った日付が3年前の7月22日。今回だけでなく、3年前も早々に済ませていたのです。自分のことながら、にわかに信じられませんでした。

 では今回、そして3年前も、締め切り力を使わずにどんな力を利用して更新したのか。それは「夏の力」と言えるでしょう。

 夏生まれだからか、なんだかんだ素敵な夏を過ごしたいという思いは未だにあります。海に行かなくても、花火を見なくても、素敵な夏にしたい。夏を満喫したい。だから、余計な荷物を持っていたくなかったのです。余計な荷物とはまさに、「更新行かなくちゃ」。こんな荷物を心に抱えて、夏を過ごしたくなかったのです。そんな夏に対する思いが僕を、ハガキが来てから間もない段階で、二俣川へ向かわせたのです。

 当日は、8時半から受付なのに、8時前に到着していました。夏休みもあって、やはり混雑していましたが、それでも夏のために、どうにか切り抜けました。

「これで、素敵な夏にできる」

 とても清々しい気分でした。荷物が軽くなった勢いで献血までしそうな男を、太陽が照らしていました。

 

 

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2017年07月21日

第713回「ビバ!ジム・ジャームッシュ」

いいのかな、言っちゃっていいのかな。いいよね?鉄は熱いうちに打て、感想は熱いうちに書けっていうからね。書いちゃいますよ?こんな素晴らしい作品を見て、黙ってろっていう方がおかしいのですから。
公開前の映画の試写会だったり、コメントの依頼が時折やってくるのですが、なかなか魔法にかからない偏屈街道まっしぐらの男の心を揺さぶるのはなかなか困難で、あまり好みでなくとも仕事ですからそれなりのコメントをしなくてはならないものの、それでも嘘をつけなかったり、裏切りたくないとか、葛藤の末にメールを送信する事がよくあるのですが、今回は、この「熱さ」を送信しました。
揺さぶられるどころか、ぶっ倒れそうになりました。完全にノックアウト。とにかく素晴らしい、最高の作品でした。あぁ、見てよかった。依頼してくれた配給会社の方、ありがとう。きっと僕なら好きになってくれるだろうという憶測があったかもしれませんが、狙い的中。完全降伏。もはや、「今日まで生きてきてよかった」とさえ感じてしまいました。っていうか、まだ起き上がれません。映画館だったらスタッフに連れ出されていたかもしれません。映画って、やっぱりこうでなくっちゃ。
これまで彼の作品の全てを見てきたわけではありませんが、もはや信者といっても過言ではないくらいその世界観が好きです。信者だからそう言うのでしょう?確かに、中には世界観だけかなと思われるものもありますが、今回はやばいです。大変です。完全にフカデミー賞最優秀作品賞にノミネート!最終力候補となっております。アカデミー賞受賞作品がフカデミー賞を受賞するとは限らないわけで、むしろアカデミーに裏切られた方や、サブカル好き、単館映画好きにはこのフカデミー賞の方が信憑性あるかと思います。
そして、助演男優賞はもちろん、永瀬正敏さん。あの雰囲気は、日本人だからとか、贔屓目ではなく、素晴らしかった。彼を起用する意図がわかりました。
とにかく、ジム・ジャームッシュファンなら絶対に裏切らない。もしも裏切っている点があるとしたら、大衆向けに少しわかりやすくなっていることくらい。だから、これまで食わず嫌いだった人や、一度味見したら口に合わなかった、なんて人にもお勧めできます。デヴィッド・リンチ亡き今、僕のような人間を満足させる、数少ない映画監督のひとり。もしも僕がジム・ジャームッシュの友人ならこういうでしょう。
「今回の作品も最高だったよ、ジム。こんな素晴らしい作品を創る君が友達で本当に光栄さ。たとえ人生のどん底にいても、この作品がすくい上げてくれる気がするよ。よく訪れたあのバーで、今度乾杯しようじゃないか。」
永瀬さん演じる男があの場所で放った、あの言葉。英語ではなんて言ったのだろう。映画「パターソン」日本での公開は8月下旬とのこと。ありがとう、ジム・ジャームッシュ。ビバ!ジム・ジャームッシュ。

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2017年07月14日

第712回「シリーズ・日常を支えるもの〜和菓子屋〜」

 

 ここへきて、和菓子屋さんに通う機会が増えました。有名なお店というわけではなく、商店街にひっそりと佇む和菓子屋さん。そもそも和菓子屋さんなんて、商店街にあってもなくっても、己の人生には関係のないものだと思っていました。しかし、最近になって、その意識が変わってきました。なくては困るとまでは言いませんが、妙に和菓子熱が高まってきたのか、日常生活に潤いを与える、重要な存在になっています。

 お団子、どら焼き、水羊羹。くずきり、きんつば、いちご大福。日本を代表する甘味、和菓子。子供の頃はそれらの魅力に気づくことができず、スナック菓子やおかきのような、塩気の強いものばかり食べていました。お団子も、醤油やみたらしは好きでも、それ以上甘いゾーンには手を出しませんでした。和菓子好きの小学生というのも珍しいかもしれないですが、餡に対する苦手意識が強かったのです。高校生の頃、満員電車に揺られながら、扉横の水羊羹の広告をずっと見つめていましたが、それでも、食べたいとは思いませんでした。

 あれから月日が流れ、スナック菓子ばかり食べていた子供も大人になると、和菓子を口にする頻度が高まり、ついに、海苔のお団子が野党になる日が訪れました。先日も、昼の生放送でアナウンサーが紹介した「井村屋の夏ギフト」に完全に心が奪われてしまいました。それくらい、2017年。僕の中で、和菓子ブームが来ているのです。

 それに拍車をかけるように、近所の商店街に新しく和菓子屋さんがオープンしました。発見した時の心の高鳴り。自分にとって必要な存在であることを再認識できました。さっそく足を運んで見れば、ショーケースの中に並んだ色とりどりの和菓子たち。形もサイズも可愛らしく、まるでお花畑にいるような気分になります。見ているだけで楽しい。和風のコーヒーカップと、丸みを帯びた和菓子と。和菓子屋さんこそ、イートイン・コーナーを設置して欲しいものです。

 商店街にはすでに数軒和菓子屋さんがあったのですが、どこも店先に貼られた、流れるような筆の文字が風鈴のようにとても涼しげで、「冷やし中華始めました」とはまた違った、季節を感じられます。

 実際、近所に和菓子屋さんがあるととても便利な側面もあります。差し入れを買わなきゃという時に、パッと買いに行けて、あれこれ悩まなくて済むので、精神的負担になりません。さっそく、ポイントカードを作ってしまいました。行きつけの喫茶店のように、行きつけの和菓子屋さんがあることが、大人になった気がして嬉しくもなります。そんな和菓子屋さんの存在が、現在の日常生活に潤いを与えてくれているのです。

 

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2017年07月13日

第711回「シリーズ・日常を支えるもの〜梅酒〜」

 風呂上がりにバスタオルを巻いたまま、おしゃれな冷蔵庫からビールを取り出して、「プシュー!」「ぷはー!」美味しそうに飲んでいる姿を、以前、トレンディー・ドラマなどでよく見かけました。そんな、風呂上がりのビールこそ未だに習慣になっていませんが、日常的にお酒を飲むリズムが近頃できつつあります。  ここ数年、クラブ・イベントの前にメンバーで集まって飲む機会が増えたのですが、僕はいつも梅酒を注文していました。梅酒とはいえ、飲みやすいからと調子に乗って飲み続けると、結構フラフラになってしまいます。DJメンバーで集まることよりも、梅酒が飲めることが嬉しくて集まっているのではと思うくらい、毎回梅酒を楽しみにしていました。 「家では飲まないの?」  正直、目から鱗でした。そう言われて気付いたのです。梅酒は家でも飲むことができる。時々自分でも驚くくらい抜けていると実感するのはこういう時。梅酒はお店で飲むものという意識が、盲目にさせていました。そうして僕は、スーパーのお酒コーナーに向かいました。  20年ほど前にもありました。カシス・ウーロンをお店でよく頼んでいたのですが、やろうと思えば家でも作れることに気づくと、瓶のカシス・リキュールが家にやってきました。ただ、どうしても家で飲むカシス・ウーロンは、お店で飲むそれとは違ったため、次第にフェード・アウトしていったのに対し、梅酒はお店で飲もうが、家で飲もうが、差異がありません。次第に、別の銘柄にもチャレンジしてみたり、地方を訪れた際には、ワイン愛好家のように、地元の梅酒を購入する楽しみまでできました。  水で割るもよし、ロックでもよし。中でも冷たい緑茶割りが最近のお気に入り。たくさんの氷の入った透明のグラスに、クリアな梅酒が注がれて。梅酒を片手に好きな音と戯れる、至福のとき。 「自分で作らないの?」  これは、まだ言われていませんが、そういえば、実家や祖母の家で梅酒を作っていました。台所の下の戸棚に大きな瓶が二つ。梅干しの瓶と、梅酒の瓶が並んでいたと思います。あの時実家にあった梅酒を、今飲んでみたいものです。 「そうか、自分でも作れるのか…」  時間をかけて仕込んだ自家製梅酒ならきっと、他にはない味わいが生まれるでしょう。いつかチャレンジしてみたいと思います。

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2017年07月05日

第710回「祝!3000回」

 塵も積もれば山となる。雨だれ岩をも穿つ。千里の道も一歩から。小さなことからコツコツと。表現は様々ですが、真実は一つ。まさに、5時に夢中!はそれを体現していると実感しました。

 僕は途中からですし、3000回のうちどれくらいを担当したかもわかりませんが、効率化が美徳とされている昨今、時間をかけてコツコツ築いてきた結果が現在だと思います。時代という風が、追い風になっているのか、向かい風になっているのかわかりませんが、しっかりと根を張り、地道に続けてきたことで、多くの方々に愛される存在になったのではないでしょうか。

 普通のテレビ局に当たり前に備わっているものが揃っていない。人も、設備も、お金も、いろんなものが、足りていない。この番組の出発地点はそこでした。全てが足りていない。だからこそ、この番組には、キー局とは違う魅力が生まれました。そして、その魅力に気づいていくれる人たちがいました。低予算で作ればなんでもうまくいくわけではありません。足りない世界の中で、何事も笑いに変えてしまうプロデューサーの存在。彼の、度量の大きさと人柄が、足りない世界を全てプラスに変えてくれました。そこに、力を貸そうという人たちが集まって来ました。出演者、スタッフ、視聴者、たくさんのエネルギーが結集して、3000回という地点にたどり着きました。

 「お客様は神様」という言葉が最近では間違った使われ方もされているようですが、やはり、目の前にはいなくとも、視聴者は「お客様」。これだけ選択肢の多い中で、わざわざテレビの前に来てくれる、そんなありがたいことはありません。あの席に座っていて、これほど視聴者の愛情を感じられる番組はなかなかありません。また、カウントダウンウィークでは、群馬や栃木、京都や神戸と中継をつないで、全国ネットとは言えませんが、かつての「夢列島」を彷彿とさせる熱量を感じました。

 筏のようなものから、それなりの船舶になったかもしれません。番組立ち上げ当初から支えている者、途中から参加している者。テレビ業界というのは、時代の波を乗り越えるために、それなりに大きくなることや、変化が求められます。ずっと同じ形で維持し続けるのは困難なのです。番組の味が変われば、拒絶反応を起こしてしまう人もいるでしょう。そりゃそうです。お袋の味が変わったら誰もが喉をつまらせます。一方で、新しい味になったことで、入りやすくなった人もいるでしょう。ただ、この番組に関して言えば、一見さんお断りではありませんが、今まで支えてきてくれた方々を一番に考えている気がします。少なくとも、裏切るようなことはしたくない。そんな想いを、カウントダウンウィークで感じました。

 ほっといてもテレビの前に来てくれていた時代は昔。テレビ以外の選択肢が増えた今、毎日楽しみにしてくれている方々には本当に頭が下がります。視聴者あっての番組。3000回という歴史的な瞬間にたち会えたこと、みなさんに祝福してもらえることに感謝して、これからも大川号の乗組員として、大海原を進んでいきたいと思います。

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