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2015年12月06日
第638回「シリーズ WHAT’S DJ? 第4話 選ぶこと」
つなぐ大切さの前に、しなくてはならないことがあります。それは、選ぶことの大切さの話です。
「作曲家がデザイナーなら、DJはスタイリストのようなもの」
DJを説明する際に、このように例えると、納得してもらえることがあります。あくまで服を作るのはデザイナーだけど、組み合わせたりコーディネートするのはスタイリストの役割。彼らは服を作っているわけではないですが、その存在はとても重要です。僕がテレビに出る際に着る服を用意してくれるのですが、スタイリストがいないといつも同じ服になってしまいます。一回ならまだしも、毎回自力で選ぶとなると、容易なことではないし、それに、センスが問われます。服は作らずとも、無限にある服のなかから服を選んでコーディネートする作業は、ひとつのスタイルを構築するわけで、それは服を作ることと同じくらい重要なこと。そのあたりが、DJと非常によく似ています。
最近は、両方やってしまうDJが増えてきていますし、世界的に有名なDJのほとんどは、作った曲で名を馳せて、DJプレイで世界を飛び回る、という流れになっています。だからDJというと、「人の曲ばかりかけてるくせにアーティストぶりやがって」と、いわゆる人の褌で相撲をとっている印象を抱かれがちですが、実は、自前の褌で相撲をとっているDJも多いのです。もちろん僕も、自前の褌。デザイナーであり、スタイリストでもある。どちらが優れているということではなく、あくまでスタンスの違いなのですが、DJといっても人の曲をかけているばかりではないというのは知っておいてもいいでしょう。なんせ、ビルボードのトップ40などを見れば一目瞭然。ヒットチャートに並ぶのはDJの名前ばかり。それだけ、ダンスミュージックが世界で求められていることの裏返しでもありますが、もはや、ヒットソングをDJが作っている構図ができています。
だからといって、人の褌で相撲をとっているDJの肩身が狭いかというと、そうではありません。人の褌であっても、立派なアーティストなのです。
最近では、定額制サービスの音楽配信が日本でも見かけるようになりました。一ヶ月数百円で数万曲の楽曲を聴き放題。といえば、聞こえはいいですが、実際何万曲もあったところで大して聴きません。なぜなら、曲がありすぎて、何を聞いていいかわからないのです。そこで求められるのが、プレイリスト作成者という存在。いわゆる、くくりすと。
カフェコンピやダンスコンピ、ジャズコンピからクラシック。無限にある楽曲から、ニーズにあった楽曲を選ぶこと。このような、キュレーターの存在は、情報過多な時代にとても重宝されるのです。ニーズに合うというよりも、くくることで新たなニーズが生まれる。数万曲聴き放題という満足感にも価値はありますが、やはり活用できてこそその真価が発揮されるというもの。膨大な量の楽曲が放置されたままではもったいない。どんな世界でもそうです。専門でないユーザーたちは、どうしたらいいかわからない。ネットが普及してからはとくに、選ぶ人、くくりすとの存在感が高まっているのです。
あまたあるダンスミュージックから自分でセレクトしてダンスフロアに届けることももちろんくくりすと。立派なアーティストなのです。音楽のスタイリスト。だから、曲の選び方に個性やセンスが現れます。同じ1時間でも大きく違いが出るのです。もちろん、フロアの状況に応じて流れを変えたりもしますが、選ぶことにDJ作業のスタートがあるといってもいいでしょう。では、選んだら次はなにをするのか。次回は、順番のお話をしましょう。
2015年12月06日 18:43
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