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2015年04月05日
第609回「きらきら星はどこで輝く〜第8話 舵を切ったのは〜」
気持ちのいい朝でした。演奏会を終え、空模様はどうだったか忘れてしまったけれど、心模様は清々しい空気で満たされています。修行の日々から解放されて、心も体も軽くなっているというのに、月曜日も、火曜日も、ピアノの蓋を開けていました。まったくピアノを弾かなくなるとまではいかないまでも、数日くらいは休憩してもいいのに、水曜日も木曜日も、ピアノの前に座っています。演奏会の惰性によるものなのか、それとも悔しい気持ちからなのか。でも、あのときほどの苦いものは感じられません。結局、日曜日を過ぎても、僕は、1日たりともピアノから離れることはありませんでした。
「以前、お尋ねした空き状況なのですが・・・」
チケットが取れなかったので追加公演をという声が高まっていた頃、念のため、同じ会場で空いている日程を調べていました。もちろん、やるかどうかはわからないのですが。日曜日を通過してもなお、会場に問い合わせています。また、大変な方の航路へと舵を切ろうとしているのでしょうか。
「これで埋まっていたらやめよう・・・」
もしやるとしたらここかな、という日時がありました。あとは運に任せよう。
「空いていますよ!」
なかなか運に任せてもらえないようです。自分の判断となりました。
「どうしよう・・・」
分岐点に立っていました。やってよかったという気持ちこそ芽生えたものの、第二回なり追加公演なりをするとなると、時間と情熱を要し、それなりの覚悟が必要です。続けるのか、やめるのか。
「きっと、やるんだろうな・・・」
薄々そんな気はしていました。きっと、あいつならやるだろうという感覚。そして、大きく舵を切るまで時間はかかりませんでした。思った通り、彼は、荒波のなかへと突入します。悔しかったからでも、チケットを取れなかった人のためでもありません。
「ここでやめたら、もう、触らなくなってしまうのだろうか」
ピアノから離れてしまう生活を想像したら、なんだか怖くなってしまったのです。演奏会を開かなくても、ピアノに触れていることも可能ですが、やはり人間、怠けてしまうもの。時間とともにピアノに向かう頻度は下がり、ピアノから、心も体も離れてしまう。そんな未来が、怖くなったのです。ピアノを、ピアノを好きだという気持ちを、手放したくない。そんな想いが、舵を切りました。
「この日、決定でお願いします」
予約をしたのは、ピアノと離れたくないという気持ち。不思議なものです。昨年末のコンサートでの悔しさが、今回の日曜日につながり、そこで膨らんだピアノへの気持ちが、さらにどこかへと転がってゆく。非常に申し訳ないのですが、僕はいつだって自分のため。追加公演の期待に応えるような、やさしい人間ではないのです。ピアノに対する気持ちを手放さないために。大切なものをしっかりと掴んでいられるように。フーマンは、もうしばらく、羊たちにピアノを聴かせるようです。
2015年04月05日 09:40
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