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2015年02月08日

第602回「ロータスのビスケットを食べながら」

 この時期になると、続くとか続かないとか、はじまるとか終わるとかの話がちらほら聞こえてくるように、この世界にいる以上、改変の波を回避することはできず、季節の変わり目、とくに年度の変わり目は若干、意識を持って行かれてしまいます。

  気にならないといえば嘘になりますが、だからといって続かないことに対して反発や苛立ちを覚えることもありません。それは年齢的なものなのかもしれませんが、そもそも、なにも保証されていない世界ですし、そんな不安定さに憧れていたわけですから。すべてが終わったとしても、それはそれとして、新たな世界のはじまりとなるだろう、なんていまだに独身だから言えるのでしょうか。いずれにしても、自分に嘘をついてまでしがみつきたくないと心に決めたのも今は昔。一生とか永遠を目標にすると、ろくなことはないのです。

 だからといって、このラジオ番組が4年目に突入することに感情が芽生えないかといえば、もちろんそういうことではなく、まさしく朗報。とても嬉しいのです。終了を知らされた心境は、どこか社会に必要とされていない、まるで捨てられたかのような印象さえ受ける分、継続の知らせは社会的な役割を実感できるもの。しかし、この番組に関しては、単純に続けられて嬉しいという感覚。おいしいカフェに通い続けられる喜び。だから「きらクラ」の終わりは、行きつけのカフェが閉店してしまうような寂しさ。
 幸運にもそれはこの番組に限らず、ほかの番組においてもそう。内容自体に快楽が伴っているから、できることなら続いてほしいけれど、終わるときは、必要とされていないというよりも、行きつけの定食屋がなくなってしまい、じゃぁこれからどこに食べに行けばいいんだという感覚に陥るのでしょう。

 パートナーの遠藤真里さんをはじめ、素晴らしいゲストの方々との出会いは、お金を払って獲得できるものではありません。本当にかけがえのない財産。そしてスタッフのみなさん。随所に感じられる「NHKらしさ」はいまのところまったくストレスになっていないのは、僕が大人になったからでしょうか。優秀なスタッフとの出会いや運も含めて、タレントの力量なのでしょうね。

 そしてなにより、リスナーのみなさん。感性豊かな言葉と素敵な音楽、そして笑い声。とても心地よい音が浮遊する日曜の午後。クラシック好きのみんなが一堂に会す、あの空間がとても好きです。ロータスのビスケットを食べながらコーヒーを飲むひととき。このカフェが3周年を迎えられたことに感謝して。

2015年02月08日 09:43

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