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2020年11月24日

第855回「はじめてのエゴサーチ」

 

 無事に発売日を迎え、サイン会&トークイベントも無事に?終了しました。SNSでもお伝えしましたが、発売日に重版が決まり、その2日後のトークイベントで東野さんからさらなる増刷の報せを受けました。しかも会場には、たくさんの報道陣が集まり、こんなに無数のフラッシュを浴びたのはいつぶりでしょうか。本当に感謝なのですが、一体、何があったのでしょうか。これまでと肌で感じるものが違います。ちなみに、「虫酸」は特定の方に向けたものではなく、そういった風潮に対するものなので、あしからず。東野さんとはライン交換もできました。

 会場でも話しましたが、この発売を機に、私の日常に新たな彩りが加わりました。書籍に対する反応をツイッターで検索する、いわゆる「エゴサーチ」。これまでは嫌な気分になりたくないのでしてこなかったのですが、ここへ来て、自分をさらけ出した文章をどのように受け止めているのだろうか、気にならずにいられなかったのです。もちろん、心に矢が突き刺さっても構わないという覚悟を持って。するとどうでしょう。そこにあったのは、傷つくどころか、無数の温かい言葉。私のことを受け入れてくれるものばかり。びっくりしました。今までエゴサーチをしなくても目にしてしまうものは氷柱のようにとてもひんやりしたものだったのに。牙を剥くものが全然見当たらないのです。本当に、何があったのでしょうか。潮目の変化を感じずには入られません。

 以前からいらしたのかもしれませんが、「隠れトランプ」ならぬ「隠れふかわファン」。しかし、過激な方々ではなく、穏やかな方ばかり。この本で内面をさらけ出した途端に、周囲の反応が、私を取り巻く世界が、変わってしまったかのようです。逆じゃなくてよかったですが。私と同様に、「足並みがそろわない」人が多いということなのかわかりませんが、「世の中の足並みがそろわない」という言葉が、私とこれまで繋がらなかった人たちとを結んでくれている気がします。ほんと、このタイトル、素晴らしいですね!ね!(あとがき読んでください)。

 それからというもの、すっかりエゴサーチするのが楽しくなり、夜、焼酎を飲みながら、みんなのつぶやきを肴にしています。酸いもあまいも、最高の肴。書籍に限らず、私のことを呟いている人を見かけては、嬉しくて話しかけてしまいます。本当はこういう人間なのです。ずっと強がってきたのでしょう。内面を見せずにきたのでしょう。

 温かい言葉も冷たい言葉も、私を育ててくれたもの。デビュー当時からずっと順風満帆だったら、今日の私も、この本も、なかったのでしょう。いつまで続くのかわかりませんが、しばらく「サーチ」し、やがて「エゴサ」と略す日が訪れるのだと思います。

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2020年11月15日

第854回「今日の私はあなたのおかげ」

 

 ついに届きました。やっと、手にしました。「世の中と足並みがそろわない」。カタチになるっていいですね。デジタルもいいですが、やっぱり紙!思わず顔を埋めて匂いを嗅ぎたくなります。それにしても、素敵な装丁。今回は、クラシックの楽譜のようにしてくださいと、こちらからお願いしました。中身は文字だらけですが、私にとって文章は言葉で紡ぐメロディー。その意を汲んで、デザイナーさんがこしらえてくれました。「足並み」のあたりが少しずれているところもいいですね。気になる箇所を発見するのが怖くて中はまだ見ていませんが、外から眺めながら焼酎を飲んでいます。ちなみに、なぜこのタイトルになったかは、読んでのお楽しみということで。

 そして今回、少人数ではありますが、出版記念サイン&トークイベントを開催することになりました。しかも、スペシャルゲストは東野幸治さん。今や日本一のMCと言っても過言ではないくらい才能のあるお方。相手がどんなに大物であれ、巧みな技術で心地よい音色を引き出すマエストロ。最近は共演のイメージがないので意外かもしれませんが、かつて「笑っていいとも!」水曜日でお世話になり、東海テレビのレギュラー番組のほか、仕事以外でもライブに一緒に行ったり、何度も焼肉をご馳走になったり。事務所の垣根を超えて、とても可愛がってもらいました。

 デビュー後、バラエティー番組においてどう立ち回っていいかわからない私に、役割を与えてくれました。そういう意味では「恩人」という表現がしっくりきます。間違いなく、「ふかわりょう」を支えた橋脚の一つ。それから久しくお会いしていなかったので、忙しいにもかかわらず駆けつけてくださることは本当にありがたいです。

 今回、書籍のプロモーションにより、たくさんの方とお会いする機会ができました。初めてお会いする方、久しぶりに会う方。そういえば先日、鶴瓶師匠の番組「巷の噺」に伺ったのですが、私がデビュー当時出演していた「来来圏」という番組のスタッフが多数いらして、あの頃の景色と重なりました。もう25年も前になります。小学校の同窓会のようでした。鶴瓶師匠も、デビュー当時からお世話になり、食事にも連れて行ってもらったり、鶴瓶噺にも伺いました。師匠の何気ない仕草が今でも脳裏に焼き付いています。偉大な方を間近に接する機会がいかに貴重な時間であるかは、年を重ねるとともに強く感じます。

 いつか、今日までのお礼を伝えたいと思っていたので、先輩後輩にかかわらず、たくさんの感謝を伝える機会や場所ができて本当によかったと思います。それぞれのペースでそれぞれの道を歩むんでいるのだけど、ふと横を見たら、その一瞬だけ、一列に並んでいるような。本来なら、結婚披露宴がその機会になるので、この本は、引き出物なのかもしれません。

 久しぶりに作ったカタチになるものは、カタチにならない大切なものを実感させてくれました。発売までもうすぐ。指で読んで欲しいです。「風とマシュマロの国」との相性も良さそうなので、ぜひ隣に並べてあげてください。きっと、共鳴すると思います。

 

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2020年11月08日

第853回「配信版ロケットマンショー」

 

 すっかり秋も深まり、夕方のニュースでも綺麗な紅葉が映し出されるようになりました、皆様いかがお過ごしでしょうか。私の部屋で流れる音も、ボサノバからジャズへと移行し、秋の夜長にしっとりとしたジャズが似合うのはどうしてなのか、珈琲も格段に美味しく感じます。

 さて、タイトルにもありますように、遂に「配信版」をやるようになりました。劇場版第一回が2016531日。続く第二回が令和初日の201951日。そして第三回の劇場版を今年の51日に予定し、会場も押さえていました。しかし、なかなか収束しない状況に、一旦811日に延期。なおも続くコロナ禍に、満席にしても大丈夫な時期まで待とう、今年は諦めよう、そう思っていた矢先、ある男からメールが届きました。

「配信版やりませんか?」

 感動しました。いまだかつてそんなことがあったでしょうか。彼の口から、私の背中を押すような、そんな言葉がいきなり飛んできたのです。これはやらないわけにいかない。まだエアコンから冷たい空気が出ている時期でした。

 配信版ということで、パソコンやスマホで視聴することになります。会場にお客さんは入りません。ラジオブースから劇場に場所を移し、今度は動画配信。いっそ音声だけの生配信でもいいかと思ったのですが、それだとラジオと同じになってしまうので、一回この形でやってみようということになりました。なので、「見えるラジオ」がイメージに近いかもしれません。

 今回も劇場版のようにチケット制になりますが、席に限りがあるわけではないので、焦らなくて大丈夫です。販売開始前にそわそわしたり、ぴったりにかける必要もありません。また、3日間アーカイブが残るので、万が一オンタイムで視聴できなくても、お好きな時間で視聴できます。また、「#配信版ロケットマンショー」でツイートしていただければ、客席こそないものの、お望みであればtwitter上でお客さん同士の共有ができるかもしれません。

 内容に関してはこれまでと同様、私が日頃感じている些細なことを平松氏に聞いてもらうだけ。会場にお客さんがいないので、より、ラジオ感が増すのではないかと思います。

 初めての配信版なので、いろいろと不具合もあるかとは思いますが、それも合わせて楽しんでもらえたら幸いです。ロケットマンショーが終了して6年。ロケショーを聴いていた人も、そうでない人も、いろいろあった2020年。2時間ほどになると思いますが、おじさん二人がファミレスで話しているのをわざわざお金を払って観てください。

「配信版ロケットマンショー」

出演 ふかわりょう、平松政俊

2020123日(木)20:00

チケットは、118日(日)12:00〜販売開始となります。

12623:59までアーカイブ視聴が可能

 

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2020年11月03日

第852回「ハイウェイを駆け抜けろ!」

 

 さて、先日配信しました「どうにかなりそう-highway mix-」聴いていただけましたでしょうか。ダウンロードしてくれた皆さんも、ありがとうございます。今年は、「どうにかなりそう」な年だったので、その締め括りに作りました。

 2015年のオリジナルはボーカロイドで、2017年にはそのリミックスバージョンを、そして今年はトミタ栞さんをフィーチャリングした4バージョンに加え、夏にはパリスマッチのミズノマリさんによるbeachside mix。配信していないものも含めれば、その数はさらに増え、色とりどりの「どうにかなりそう」が生まれました。tiktokでたくさんの人に踊ってもらい、楽曲の認知度も上がりました。素敵なミュージック・クリップまで作成してもらい、2020年は「どうにかなりそう」に彩られた一年になりました。

 ただ、問題が発生しました。その後の曲作りにおいて、何を作っていても、どこからプローチしても、聞こえてくるのです。「どうにかなりそう」が。フレーズが強すぎて、他のメロディーよりもまず先に出てきてしまうのです。

 リミックスやアレンジにおいては、この症状は悪いことではなく、大事なことでもあるのですが、このままだと一生「どうにかなりそう」のアレンジを作り続けることになってしまいます。かつても、ファミリーマートの入店音(私的には、小学生の時に通っていた塾のチャイム)を用いて、様々なバージョンを作りましたが、やろうと思えばいくらでもできてしまうのです。

 なので、一旦「どうにかなりそう」にケリをつけなければと、最後というわけではないですが、自分の声で節目にしようと思ったのです。

 いざ完成してみれば、これまでリリースしてきた楽曲とかなり曲調が異なる「highway mix」。クラブ・ミュージックではなく、いわゆるソフトロックなバンドサウンド。ギターポップ。やはり、渋谷系でしょう。かつて「渋谷系三昧」も担当したこともありましたが、私の世代は大きく影響を受けています。定義はわかりませんが、イントロから「渋谷系」を彷彿とさせる音を意識し、自分なりのイメージでマイクの前に立ちました。新たに録ったものなので、厳密にいうとリミックスではなく、セルフ・カヴァーになります。

 配信後、Apple musicのプレイリストに選ばれたという一報が入りました。しかも、あいみょんから始まる「IYASHI TRACKS」の3曲目。こういった経験は初めてですが、テンションが上がりました。昔でいう、J-WAVEでオンエアされました!みたいなことでしょう。DJ KAORIさんのミックスアルバムに入った!「SPIN OUT」に入った!みたいな。多くの人の耳に触れる機会が増えることもさることながら、自分の好きな音だけで作った音楽が、客観的な尺度で選ばれたことがとても嬉しくて。

 疾走感あふれるギター・ポップサウンド。「highway mix」は、まさにハイウェイを駆け抜けるような気分になれる一曲。布団から出られない朝にもオススメです。ミュージック・クリップも近日中に公開しようと思っているので、楽しみにしていてくださいね。

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2020年11月02日

第851回「足並みがそろわない?」

 

 ついに解禁となりました。木曜日の「5時に夢中!」のエンディングでお伝えしたとおり、来月1117日にエッセイ集「世の中と足並みがそろわない」を出版することになりました。書籍は「風とマシュマロの国」以来なので、8年ぶりとなります。

「本を書きませんか?」

 そんな話をいただいたのが1月末のこと。出版社の方と銀座で会食。激しい雨の中、タクシーで帰ったのを覚えています。

 連載をまとめたものではなく、全編書き下ろし。目安としては、4000字のエッセイを20編。果たして、できるだろうか。文章を書くのは好きだけど、普段の「週刊ふかわ」以上に、内容に厚みが求められます。具体的にいつまでという期限はないものの、ダラダラしていても進まないので、月に1本提出くらいのイメージで始まりました。もちろん、出版化が約束されている訳ではありません。あくまで、内容次第。

「とりあえず、書き続けてみよう」

 たくさん作ったら、いくつか引っ掛かるものがあるかもしれない。まずは、フランス・ナントに向かう飛行機の中でパソコンとにらめっこが始まりました。

「なかなかいいじゃない」

 褒められて気を良くしたのに加え、大きく背中を押してくれたものがありました。新型コロナによる、緊急事態宣言。ステイホームは、文章と向き合う時間となり、書く時間を授かるようでした。月に1本どころか、週に1本になり、宣言が解除される前に、原稿は20編まで到達しました。

「これを本にしましょう」

 書籍化が正式に決まりました。その後さらに2編加えて、22編。結果的に、提出したもの全てが採用されました。ただ、何度もお伝えしているように、物作りは8合目からが大変で、「ご報告」をした木曜日前日まで、文章の精査は続きました。その日の気分で「てにをは」も変わってくるので、どこかで踏ん切りを付けなければなりません。

「では、これでよろしくお願いします!」

  最終チェックを終え、自らの手を離れていく感覚。大変なことばかりだけど、その時その時は「楽しい」なんて思っていないのだけど、毎日頭を悩ませていた時間から解放されるのは、嬉しいような、さみしいような。ただ、現在は、我が子の誕生を待つような気分でもあります。

「世の中と足並みがそろわない」

 タイトルから想像できる部分もありますが、決して昨今の「生きづらさ」に同調するものでも、励ますものでもありません。私が日頃感じている、単なるエッセイに過ぎず、ちょっと歪な日常を綴っています。

 改めて、ものづくりの楽しさを実感した2020年。音楽を作ることも、文章を綴ることも、私にとっては似ている部分が多く、どちらも痛みを伴うもの。しかし、それはやがて喜びに変わると信じています。状況が状況なので、サイン会のようなものはできるかわかりませんが、記念になるようなことができればと思います。Amazonのページを見てニヤニヤしてしまうほど、とても上品で、可愛らしい装丁。ぜひ、手にとって、じっくり味わっていただきたいと思います。

 

 

 

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