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2019年05月10日
第789回「とんぶりの旅⑥」
ホテルを出ると小雨が地面を濡らしている程度だったのですが、高速道路で北上しているうちに、左右の山々が白く染まってきました。2日前に通った道とは思えないくらい、往路と復路は別世界。いまは真冬のような雪景色が車窓を流れます。特に、白神山地のあたりは標高が高く、吸い込まれそうなほど幻想的な銀世界が広がっていました。
「どうにかたどり着けそうだ…」
秋田市を出発して2時間ほど。大館の文字が出てきました。雪がぱらぱらと地面に消えていきます。途中、静かな湖のほとりなどに立ち寄ったりしながら、大館駅に向かいます。
駅前には秋田犬が何頭もいました。お地蔵様に笠をつけるように、秋田犬たちにとんぶりをかぶせてあげます。すぐ横に秋田犬会館があり、真っ白いふわふわした大きな秋田犬のアコちゃんにもかぶってもらいました。
その斜め向かいには、鶏めしで有名な花膳があります。車内で鶏めし弁当の紐を解く朝。こちらは人気の駅弁として数々の賞を受賞し、今では全国展開しているほど。朝ごはんを終えると、駅を離れて市内巡り。車は、度々橋を渡ります。穏やかな川が流れる町、大館。雪で白く染まる河川敷を見つけては、レンズを向けてしまいます。
「あれ?こんなところに!」
初日にランチで伺った道の駅比内の一角に、とんぶり兄妹を見つけました。お店の方が描いてくれたポップ。地元で愛されるキャラクターになってほしいものです。
「ソフトクリームありますか?」
ツイッターで、ここのソフトクリームが絶品だということを教えてもらい、伺ってみました。すると手渡されたのは、黄色のアイス。卵をふんだんに使っているのでしょう。とても濃厚で、どこか懐かしい味。優しい甘みのソフトクリームでした。お店の方々にCDを渡し、とんぶりかぶって撮影タイム。
「おすすめの温泉ありますか?」
初日に到着した時から、あちこちで温泉の看板を見かけていました。誘惑を振り払いながら、最終日に入ろうと決意していたものの、たくさんあってどこに行けばいいか迷ってしまいます。せっかくだから秘境気分を味わいたい、そんな自分の好みを伝えると、お店の方が山深い温泉を教えてくれました。
「行ってみるか」
車で3、40分とのことですが、ここよりもさらに山中なので、雪が激しく降っているかもしれないとのこと。しかし、山間の白濁の温泉がものすごく引力を振り払うことはできません。
「大丈夫かな…」
お店の方の言ったとおり、雪が激しくなってきました。大粒の雪がハラハラと、時折横殴りで視界を覆います。このまま進むと、青森。深い山々を真っ白く染めた神々しい景色が続きます。
「ここかな?」
看板の案内通りに曲がれば、完全に雪に覆われた道。スタッドレスを信じるしかありません。噛みしめるようにゆっくり雪道を進むと、目の前に大きな木造家屋が現れました。日景温泉に到着です。
「はぁ、最高…」
乳白色の湯に体が沈んでいきます。頭の上で雪が溶け、ため息漏れる、極上の露天風呂。ここまできた甲斐がありました。これも、とんぶりが誘ってくれた場所。こんな素敵な景色、素敵な温泉に浸れるなんて。長旅の疲れも吹き飛びます。
「いい湯だった」
すっかり体に硫黄の匂いが染み付いています。ここでもう一泊できたらと妄想でいっぱいになりますが、今日帰らなければなりません。
「最高の温泉でした!」
道の駅に戻って、お店の方々に報告。そして、最後の食事をとることにしました。
「しめたんぽで行くか」
2泊3日のとんぶりの旅。しめの食事は、きりたんぽに比内地鶏、そしてとんぶりの山かけ。顔を覆う湯気。窓の向こうの雪が激しくなってきました。果たして飛行機は飛ぶのでしょうか。
「これくらいは普通だからね」
数センチの雪でニュースになる東京の人間からすると不安にならずにはいられない量ですが、ここでは普通の状態。心配いらないとのこと。
「ごちそうさまでした」
穏やかな川を渡りながら空港に向かいます。山々や田畑に降る雪。どうしても、車を降りてしまいます。レンタカーを戻し、空港で出発を待つ間にも、いろんな方が声をかけてくださいました。とんぶりを始め、食べ物も温泉も景色も最高でしたが、何より地元の方々がとてもあたたかく迎えてくださったことが心に残りました。本当に来てよかった。果たして、次はいつ来られるのでしょう。大使を乗せた飛行機は、雪の空を飛んでいきました。
2019年05月10日 22:29
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