« 第777回「アイルランドへのチケット」 | TOP | 第780回「とんぶりの唄ができるまで」 »

2019年02月15日

第778回「カメラを向けるな!」

 

 不適切動画が連日マスコミで取り上げられています。株価が下がったり、イメージダウンに繋がったり、企業の損失は多大なるもの。たかがバイトのいたずらとはいえ、笑い事では済まされません。しかも、これだけ社会現象として話題になっているのに相変わらず後を絶たないのは、もちろんSNSを理解していない、いわゆるネット・リテラシーの欠落も否めませんが、ひとつ気になるのは、ほとんどの者が、「笑わそうとしている」ことです。

 バイト先でのいたずらは昔から少なからずありました。それをSNSに上げるかどうかの違いもありますが、SNSの有無より、「カメラの有無」です。

 芸人さんでもあります。カメラを向けられた途端に、暴走してしまう。私も若かりし頃はありました。「笑い」のために、自分でも考えつかないような行動をとってしまう。「笑い」を欲するのは芸人さんだけではありません。カメラを向けられたら誰だって、無茶をしてしまう。バイト先だろうが教室だろうが、いきなりレンズを向けられれば「え?何?何かしなくては!」という暴走スイッチが入る。これが、昨今、不適切動画が後を絶たない理由の一つ。カメラを向ける者が一切お咎め無しということでもないでしょうが、レンズを向けた側にも少なからず責任はあるでしょう。しかし、映像には残らず、笑い声のみががはいるだけ。

 「笑わせたい」これは悪い感情ではありませんが、その想いが強すぎて、客観的な判断ができなくなってしまう。「笑わせてみて」というレンズの無言の圧力と、「笑わせなくては!」という勝手な思い込み。結果、二人に訪れる、笑えない事態。ネットという大海原で溺れる始末。一回の過ちで人生を棒に振ってしまうかもしれません。カメラを向けなければよかったのに。どこか、銃社会に似たものを感じます。

 ネット社会というのは、「教習所なき車社会」であることは何度も言及してきました。しかし、免許を持っていても事故を起こしてしまうほど、ネット社会は常に危険と隣り合わせ。ちょっとハンドルを切り誤ったらたちまち大炎上。ましてや若い世代は単なるコミュニケーション・ツールとして使用しているので、それが世界に繋がっているという認識が薄く、事故を起こしやすい。

 企業も、バイトに依存しすぎていた責任も多分にあると思います。安価な労働契約では、このようなリスクも伴うということを学んだでしょう。敵は味方に存在する。今後は、危機管理に一層コストがかかるかもしれません。

 こういったことを背景にして、今日もカメラは向けられる。カメラを向けること、銃口を向けること。人にカメラを向けないで。

2019年02月15日 08:11

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.happynote.jp/blog_sys/mt-tb.cgi/283

コメント

コメントしてください

名前・メールアドレス・コメントの入力は必須です。




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)