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2017年12月01日

第728回「クラシックの友」

 

「そんな訳ないでしょ」

 警戒センサーが作動しました。いくら歴史があるとはいえ、さすがにそれは今回の企画を通すため。いわゆる企画書映えのための人選。テレビ番組の企画書でもよくある話。調子のいいことを言って、誘惑する。だから、その言葉を鵜呑みにしてはいけないと思いつつも、せっかくいただいた有難いお話、過度の期待をせずに受けることにしました。

 

「初回のゲスト、決まったそうです」

「結局、誰になったのかな?」

その返答に思わず声が漏れました。

 企画書映えのためだと思っていたゲスト案が現実になる。どれだけ信頼の厚い出版社なのでしょう。やはり歴史を重んじている国。他にも挙げられていた名前も、あながち企画書映えのためだけではない気がしてきました。

 

「わたくし、通り沿いに立っておりますので」

 ベージュのビートルが坂を登っています。たまたまなのか、そういうタイプの方が集まるのか、編集担当の方はとても上品な男性。それにしても、ものすごい人で賑わっている商店街。あまり足を運ぶ機会がなかったのですが、時間帯によって一方通行の向きが変わるのも、一説によれば、田中角栄氏の意向によるものだとか。坂を登ったところに、その出版社はありました。

「すごい人ですね」

「マネージャーさん、大丈夫ですか?」

 今日を楽しみにしていた彼は、インフルエンザで自宅待機となりました。

 

 開戦直前の1941年に「音楽之友」創刊、現在の「音楽之友社」となりました。昨年、75周年を迎えたわけですが、時代を越えて愛されているのも、クラシック愛好家たちから信頼を得ているからでしょう。そんな素晴らしい雑誌の中で、対談企画のような連載コーナーが始まることになりました。その名も「クラシックの友」。その初回のお相手となったのが、小泉純一郎元総理でした。

 

 首相は首相でも、一世を風靡した首相。政治家というよりも国民的スターというイメージさえあります。芸能界で長年活動していても、そうそうお会いできる方ではありません。大きなソファーが二つ並んだ静かな会議室で、元総理の到着を待つことにしました。

 

「それでは迎えに言ってきます」

 担当者が会議室を出ました。僕とカメラマンさんと二人。心拍数が上がります。ほどなくして、気配のようなものを感じました。

 

「ここでいいの?」

 担当の方と入れ違うように会議室に現れたのは、紛れもなく小泉元総理でした。

2017年12月01日 13:55

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