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2017年04月15日

第692回「テレビはエアコン」

「すみません、エアコンはどちらにありますか?」
「はい、こちらですけど」
「いや、僕が探しているのは、このエアコンではなくて…」
「…はい」
「社会のエアコンです」
「社会の?」
「はい、世の中の空気を調節するエアコンです」
 こんなお客さんがいたら店員さんも困惑どころか、この忙しい時になんなんだ、といった感じでしょう。
「テレビは、エアコンである」
 テレビのなかで生活して二十余年。いま、特に感じること。選択肢が増え、その存在感や意義がかつてと異なっている昨今、テレビの役割のひとつがこの「エアコン」としての機能なのです。
「テレビがエアコン?」
「そんなこと言ったって、どこから冷たい風がでるのさ。どこから暖かい風がでるのさ」
 風こそ出ませんが、世の中の空気を快適に調節する役割を担っています。
 たとえば、ある事象に対してコメンテーターの発した内容に、「よくぞ言ってくれた!」と、膝を打つことがあります。視聴者の気持ちがスカッとしたそのとき、テレビから、心地よい風が流れているのです。逆に、ネットでは騒がれているのにテレビで扱わないと、視聴者の不満はたまり、ストレスになる。そのとき、お茶の間の空気は滞留し、澱みが生じているのです。溜飲を下げるも上げるも、テレビ次第。世の中で氾濫する、情報という空気を快適にコントロールする機能を、テレビは持っているのです。
 この情報自体は主に、スマホから発生ことが多いでしょう。それで世の中の空気が滞留しているのをテレビが整える。どう受け止めていいかわからない事象を解説したり、ときには権力に抗ったり。「コントロール」というと誤解が生じてしまうかもしれませんが、もちろんそこに「操作」があってはなりません。あくまで情報を整理し、流していく。お茶の間のもやもやした空気を打破する。これが、いま、そしてこれからのテレビが担う重要な役割になるのです。 
 かつてテレビは、時代を映す窓として脚光を浴びましたが、これからは、それだけで輝くのは困難でしょう。スポーツ、娯楽、エンターテイメント、そういった要素も大切ですが、強く求められるのは、世の中に滞留する情報という空気の澱みをなくすこと。そうすることで、多くの人々の心のもやもやを解消し、社会が快適になるのです。そういう意味で、「テレビはエアコン」ということ、逆にいえば、その機能を失ったとき、テレビは片隅に追いやられてしまうでしょう。

2017年04月15日 12:45

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