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2013年01月27日

第517回「ORDINARY MORNING」




 





 





焦げたパンの匂い。





やかんを揺らす蒸気の音。





やがてコーヒーの香りに満たされて





光と湯気が重なっている。





 





窓の外の牧草地帯。





草を食んでいるマシュマロたち。





寝そべっている羊たちを起こそうと、





飛び跳ねている黒い犬。





 





今日も青空が広がっている。





 





ゆっくりと流れる穏やかな午後。





ゆったり流れる退屈な午後。





羊たちを連れて





海辺の道を散歩すれば





たどりつく、太陽があたためていた場所。





 





風に誘われてやってきた





雲たちを映す池と、





宝石をばらまかれた、





海の煌めき。





 





どんな音がきこえるだろう。





 





ゆっくりと太陽は沈み





空が赤く染まってゆく時間。





遠くの教会の鐘が揺れたら





色は空へと集まって、





犬のように真っ黒な夜のはじまり。





 





星たちが顔をだして





ときにはオーロラが現れるだろう。





光があふれだすだろう。





そして朝は訪れるだろう。





だれもしらない





海辺の家で。





 





やがて訪れるいつもの朝は、





いつもと同じようで





どこか違う。





小さな違いに気づくのだろう。





その輝きに、気づくのだろう。





 





だれもしらない





海辺の家で。










12:41 | コメント (0)

2013年01月19日

第516回「それで風邪ひいたわけではないですが」




 自分でも驚きました。人生わからないとはいうものの、まさか自分の人生にこんな出会いが待っていたなんて。





「最高じゃないか…」





空を独り占めとはこのことでしょう。とてつもない解放感。何度も通ったことがあるのに、いままでとは一味もふた味も違う高速道路。僕は、天井のない車に乗っていました。





 オープンカー。この響きはどこか架空のもの、フィクションの世界のもののような認識がありました。もちろん、走っているのを見かけたことは何度もありますが、自分とは関係のないものだと思っていました。それなのにいまこうして、ダウンを着こみ、冬の高速道路を走らせている。いったいなにがあったのでしょう。





「どうしても愛せないんだ…」





恋人との別れ話ではありません。ご存じの方も多いかと思いますが、僕は、フォルクスワーゲンのニュービートルという、黄色の車に乗っていました。かれこれ10年以上、走行距離にして20万キロ。こうなると、なにかあるたびに数十人の諭吉氏が羽ばたいていきます。いままでどうにかやってきたものの、さすがに次回の車検は厳しそう。それに、次なにかあれば、その修理費で別の車が買えてしまうかもしれません。





「これにしよう…」





僕は新しいモデル、「ザ・ビートル」の発売を待ちました。こんなことは何年ぶりでしょう。ドラクエの発売日を待っていた小学生以来かもしれません。新車を購入したときの高揚感はあの匂いととも忘れられません。しかし、僕を待っていたのは意外な現実でした。いざ、目の前にしてみれば、契約する気満々だった僕の体にどこかすっきりしないものがありました。どうも気持ちがついてきません。どことなくスポーティーな雰囲気になってしまった新型のビートルを、どうしても好きになれなかったのです。そして僕はこの胸中を、この客は買うだろうと見込んでいたスタッフに明かしました。





「さぁ、ふりだしだ…」





一旦、フォルクスワーゲンという枠組みを取り払い、すべての車種から選ぶことにしました。トヨタ、日産、ホンダ、マツダ。部屋探しのように、これいいなと思っても、どこか気に入らないところがあるもの。もう、これじゃ決められない!とさじを投げかけた僕の目に、一台の車が目に留まりました。





「うそだろ…」





しかし、この胸の高鳴りを無視できません。僕は間違いなくこのカタチにときめいていました。ニュービートル・カブリオレ。ある意味見て見ぬふりをしてきたこの車に、ぐいぐいと引き寄せられています。恋のように。もうほかの車は見えなくなっていました。





それは、簡単にいうと、いまのっている黄色の車の屋根が開閉可能な幌になる、ということです。このタイプはもう、中古でしか存在していません。走行距離や年式などを加味して最終的に訪れた中古車センターで目の前にしたその姿は、僕の体内のもやもやをすべて吹き飛ばしてくれました。もう迷いはありません。言い訳するわけではありませんが、オープンカーというものに嫌悪感を抱く人は少なくないと思います。僕もそうでした。そんな僕がこんなにもときめいてしまったのは、あまりにキュートだったから。閉じているときのキュートさが100%なら、オープン時は120%。ベージュの外装にベージュの内装。これが20代だったら違う配色に目が留まっていたかもしれません。





「これは帰れないな…」





ちょっとだけと、ためしに走るつもりでしたがあまりに心地よく晴れた空に引き返すことができません。ベージュのオープンカーは海沿いの道を走っていました。



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第515回「Life is music」




他人の人生を気にしている暇があったら、





自分の人生に目を向けたほうがいい。





 





他人の人生に口出ししている暇があったら、





自分の人生と向き合ったほうがいい。





 





比べた時点で負けだから。





比べた時点でもう勝利はないから。





 





幸福は比較して得るものでも、





だれかの尺度で決められるものでもない。





 





比較して得た幸福なんて、





あっという間に消えるから。





他人の人生にかまっているほど





不毛なことはないから。





 





みな、それぞれの人生を歩めばいい。





みな、それぞれの音楽を奏でればいい。





 





自分は楽器だと思えばいい。





 





悲しみも、憎しみも、





喜びも、悔しさも、





 





すべて音なんだ。





 





 





Life is music.





 





 





人生は音楽だ。





 





人生は音楽だ。





 





ベートーベンのシンフォニーのように、





はやいときもあれば、ゆっくりなときもある。





激しい時も、穏やかなときもある。





 





人生は音楽だ。





 





楽しいことも、辛いことも、





すべてあなたの音楽だから。





すべて美しいものだから。





 





地球から離れたら、





どんな音が聴こえるだろう。





みんなのシンフォニーが





聴こえるだろう。





 





 



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